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第32話 ベル救出大作戦

「カトリーナ様!!」


 そう声が聞こえた方を向くと、あの執事の人が叫びながら走ってきていた。


「あら、セバスチャンじゃない。どうしたの?」


 あ、名前セバスチャンなのか…まんまじゃんと思ったのは内緒。


「実は先程ベル様について連絡が…」


 え?!ベル?


「どうしたの?」

「ベル様を誘拐したと…」

「「え?!」」


 どういうこと?!ベルが誘拐されるなんて…確かに帰ってくるのが遅いなとは思ってたけど…


「何故?」


 そう、そこだ。誘拐するにしてもベルはどこにでも居そうな女の子だし…悪口じゃないよ?


「それが…この屋敷を出入りしているところを見られていたらしく…」

「なるほどね…」

「え?何がなるほどなの?」


 ベルが誘拐されたのと、この屋敷を出入りしてたのがなぜ繋がるの?


「私が英雄だっていうのは言ったわよね?」

「うん」


 だいぶビックリしたけどね。


「それでね?私たちの財産、もしくは私たちの『力』が欲しい輩がいるのよ」

「あ…」


 そういう事か…つまりこの屋敷に出入りしているベルを人質にして、リーナに何かさせるつもりな訳か。そうなると今回ベルを誘拐した理由はリーナが言ったうちのどっちかな?


「それで?犯人からはなにかあったの?」

「……返して欲しくば、白金貨100枚用意しろと…」

「「白金貨100枚?!」」


 いくらなんでもそれはやり過ぎだ。白金貨っていうのは金貨の次に高い硬貨だ。大体金貨1枚が日本円で1万円くらい。金貨10枚で白金貨1枚だから、100枚だと大体1000万円くらい。この世界の月収はよくて金貨2枚〜3枚だから、尚更だ。


「また随分と吹っかけてきたわね…」


 あ、この世界でもその表現あるんだ。


「どうするの?」

「お金を渡したからといってベルちゃんが無事に返ってくるとは限らないからね…」


 そう。渡したからといってベルを返してくれるか分からない。口封じのために殺される可能性だってある。


「ひとまずレビンに連絡を。フィリアちゃんは屋敷で待っててくれる?」

「…うん」


 とりあえず今はリーナの言うことを聞いておこう。私は自分の部屋に戻った。


「さて、と…本当はあまり出しゃばらないほうがいいんだけど…」


 本来なら、ね…でも、ベルはただの友達じゃない。私の、大切な最初の友達なんだよ!


「…あ、エルザも大切な友達だからね?」


 なんか物凄い視線を感じたから、一応言っておく。言った途端視線がなくなった。絶対見てたな…。


「さて、犯人には後悔してもらわないとね」


 私は手早く黒色の服に着替える。この服は私が隠密をする時に使うかなってこの前買っておいたものだ。光学迷彩あるけどね。


 着替えると、私は窓からでて、屋根に登った。


「『サーチ』」


 探すのはベル。


「……いた」


 私が本気を出せばこの広い王都全体すら把握することができる。その分情報処理がとんでもない事になるからほんの一瞬だけどね。


 ベルの反応があったのはスラム街の一角。この王都にもスラム街は存在していて、そのうちのひとつだ。


「お金に困ってやったってところかな…」


 とはいえ、私の友達に手を出したんだ。相応の罰は受けてもらわないとね。


 私は気配隠蔽を発動し、身体強化と空歩でその場所まで一気に移動する。時刻的にはもう深夜だ。見られる心配はない。てか光学迷彩してるから昼間でも見つからないけどね。



「……着いた」


 ものの1分で到着した。スラム街の建物はどれもいつ崩れるか分からないような状態だった。明かりはほとんどなく、衛生状態も悪いみたい。


「ベルがいる所は…あそこか」


 ベルの反応があるのはスラム街のなかでも比較的ましな建物だった。


「ふーん…大人が5人くらいか…」


 恐らく犯人と思われる数だ。実際入口には男が1人立っている。多分見張りだろう。


「窓から侵入するっていう手段もあるけど…」


 どうせなら真正面から侵入してやりましょうかね。


 私は屋根伝いにその建物まで向かうと、音も立てずに地面に着地した。そして見張りの男を後ろから手刀で気絶させる。


「うーん…縛っておいたほうがいいか」


 今回、私は犯人を殺すつもりはない。そもそも殺せるか分かんないけど、どうしてもやらなきゃならなくなったときは、覚悟を決めるつもりでいる。


 私はロープで男の手と足を縛り、猿轡をしておく。魔法が使えないとは限らないからね。


「どうせなら光学迷彩解除しておくかな?」


 見つかった瞬間ベルを人質に取られる可能性はあるけど、そこはもう対策済み。ベルの体を覆うように結界を張ってある。対物理、対魔法用の結界だ。


「おじゃましまーす。ドロボウでーす」


 思わずそんなことを言いながら、私は建物の中に入った。建物自体は二階建てなんだけど、ベルは地下にいるみたい。2階に2人、地下に2人いる。


「とりあえず、2階から片付けようかな」


 地下にいって、仲間を呼ばれたらたまらないからね。


 私は気配を消して階段をのぼる。どうやら2人は仮眠をとっているらしい。


「不用心だねぇ…」


 2人は別々の部屋で寝ているようなので、一方の部屋に向かった。扉には鍵なんて掛かってなかった。


「おじゃましま〜す…」


 そこには、仮眠というにはぐっすり眠った男がいた。私は魔法でさらに深い眠りにつかせた。


「あと1人…」


 私は男を縛ると、もう一方の男の方へ向かった。こちらは扉に鍵がかけてあった。しかも魔法で。


「ま、解除できるけどね」


 私はトラップがないか確認して、いとも簡単にロックを解除した。


「おじゃましま〜す…」


 こっちもぐっすり眠っていらっしゃる。同じように魔法をかけて、縛り上げた。


「それにしてもお粗末すぎない?」


 あまりにもお粗末すぎる。ベルがリーナの屋敷を出入りしていたから誘拐したのだから、それなりの警備とか、強さを持った人がいると思ったんだけど、ステータスはいま襲った3人とも平均的だった。見張りも1人だけ。


「それほど自信があるということ?」


 最後の2人が手練の可能性もある。私はより1層気合いを入れた。


「地下室に行くには…」


 階段があるはずなんだけど、それらしきものはない。


「こればっかりはサーチでも…………あったわ」


 見つからないと思ったけどサーチが優秀すぎる。反応があったのはなんの変哲もない壁だった。


「どんでん返し?」


 なにそれ忍者?と思ったけど、どうやら魔法で扉が隠蔽されているだけらしい。


「結構高度な隠蔽だよ?これ…」


 私は隠蔽を解除し、現れた扉を開けた。そこには地下に続く階段があった。


「行きますか…」


 私は階段を降りた。明かり的には所々に魔道具が設置されていて、明るい。


「不釣り合いだな…」


 魔道具は使うためには魔石が必要なもので、一般家庭でも、中々使わない。


 階段を最後まで降りると、そこには重そうな鉄扉があった。透視で覗こうとすると抵抗されるみたい。まぁゴリ押しで見れたけど。


 そこには椅子に座って寝ているベルの姿と、2人のローブ姿の男がいた。


「あのローブどっかで…」


 あ、あのスタンピードのときにいたやつが着ていたものと同じだ!まだ生き残りがいたのか。ベルの下の床には、その時の魔法陣とは違う魔法陣があった。


「一体何を…」


 私は扉を少し開けて、声を聞こうとした。すると微かに男たちの声が聞こえた。


「あ…は、なん…こんな…としてほ…いんだ?」

「さぁな。でも…たち…目的が同じ…から…都合…いだろ?」


 途切れ途切れだが、ここでなにかしようとしているのは間違いないみたいだ。こいつらの目的は分からんが、どうやら同じ目的があるやつがいるみたい。


 …そんなのさせないけどね。


 私は扉を蹴飛ばして、中に入る。


「…っ!何者だ!」

「名乗る名前は無い!」


 いってみたかったんだよね〜これ。


「くっ!まぁ子供1人だ。殺っちまうぞ!」


 そう言って詠唱を始めた。


「ファイヤーボール!」

「ウォーターボール!」


 …バカなの?この2人。そんな反対の魔法使ったら…


 プシューー


 ほら、消火完了。


「くそっ!なにをした!」


 いやなんもしてないんだけど。


「■■■■ アイスニードル!」


 氷には炎だよねー。私は無詠唱でファイヤーボールを使って相殺した。


「チッ!無詠唱か!」

「○○○○…」


 お、なんか魔法使おうとしてるけど、そうはいかないよ。


魔法破壊(マジックブレイク)


 これはこの前リーナに教えてもらった魔法。魔法に込められている魔力を分散させることで、魔法を破壊する魔法だ。


 パリンッ!


 ガラスが割れるような音がして、魔法が破壊された。


「なっ!」

「茶番はここまでにしよ?悪夢(ダークネス)


 私はトリガーワードをわざと言った。この魔法は相手を眠らせて悪夢を見させる魔法だ。


「うわぁぁぁ!」

「た、助けてくれぇえ!」


 …うるさいのが欠点だけど。


 私はベルの元へ行った。ロープで縛られていたが、無傷だった。


「ベル、ベル!」


 私はベルの肩を揺すって起こそうとした。


「うぅぅん…あれ?フィリアちゃん?」

「良かった…」

「どうしたの?そんな服着て」

「ちょっとね…さぁリーナが心配してるから、帰ろ?」

「え、うん」


 私たちは手を繋いで家の外にでた。もう既に日は登り始めていた。


「ベル、ちょっとごめんね」

「え…」


 私はベルを魔法で眠らせて抱えると、光学迷彩を発動した。このスキル、触れている間なら、触れている相手にも一緒の効果を発揮するんだよね。私はそのまま空歩で空まで駆け上がると、一直線に屋敷まで帰った。







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