第29話 入学試験
ハンター登録をしてから3日がたち、いよいよ入学試験の日です。
「頑張りなさいよー!」
「もちろん!」
「はい!」
目指すはアルバート学園。それは王都の真ん中にあるでっかい城から少し離れた所にある。まぁ、いわゆる身分が高い人も来ますよーってとこ。だから入口は2つあって、平民用と貴族用だ。私たちは平民なので、平民用の入口に向かう。ここから王都を回っている乗り合い馬車に乗って、揺られること30分ほど。やっと着いた。
その学園はなんというか…豪華。あのアメリカの頭脳とか言われてる大学くらいでかい。いったいなにがあるんだか…。
「はーい。受験生はこちらで名前を書いて下さーい!」
大人の女の人がそう叫んでいた。そこにいって、置かれていた紙に自分の名前だけ書く。
「書けた人はこっちでーす」
呼ばれた所に向かうとクジが用意されていた。
「順番にクジを引いて、このボードを見て、クジに書いてある番号の所にいって下さーい!」
なるほど。クラス分けをするみたい。だとするとベルと別れる可能性があるね。
「ねーねー、フィリアちゃんは何番?」
「私は…7番だね」
7番は…あ、教室の最前列らしい。
「あーそっか、私は50番だから違うね」
と言っても隣の教室だけどね。
「お互い頑張ろ?」
「うん!」
ベルと別れ、係の人に付いていって、教室に入った。どうやら、40人ほどが入る教室で、前世の大学の講義で使われてそうな感じ。
「今から試験を始めます。時間は3時間です。筆記具は持参した物。または机の上にある物。どちらを使っても構いません。では今から問題を配ります」
平民が全員筆記具を用意出来るほど裕福じゃないからだね。レビンさんは身分で差別するのが大っ嫌いな人だと、リーナから聞いたしね。
「では始めてください」
そう言われて裏を向けてあった紙を表にした。書いてある内容は至って簡単。
「え…」
思わず声が出ちゃうほどヤバかった。だって、足し算引き算掛け算割り算の計算問題しかないんだもの。ものの10分で解き終わってしまった。次の紙は地理。この大陸の名前や王都の名前。これは事前にリーナから聞いているから、一瞬だった。
…ただ、最後がヤバかった。
○次の呪文の内、『ファイヤーボール』の呪文を答えよ。
・□□□□□
・■■■■■
・△△△△△
・◇◆◇▲◇
…知るかーーーー!分かるわけない。そもそも言葉じゃない?!これどうしよ?
…ズルしよう。私は検索を使った。まぁ簡単。というよりこの試験の答え全て出てきた。何故に?
さて、どうしよ?ものの30分で終わっちゃった。なにもすることがないのでぼ〜〜っとしていたら
「君、大丈夫かい?」
と、試験官らしき人に聞かれた。
「はい、もう全部終わりましたから」
「そうか、でも見直しはしておきなよ?」
そう言われてもねぇ?答え何故か全部見れたしね。とにかく怪しまれないように見直す振りをした。暇だ。
「そこまで!」
…は!思わず寝てしまっていたみたい。さっきの試験官が解答用紙を回収していった。
「次は実技試験です。闘技場に移動しますので、着いてきてください」
そう言われたので、後ろをぞろぞろ着いていく。
10分ほどで、コロッ○オみたいなとこに着いた。学園にこんなのあるの?!
「ここで実技試験を行います。まず、魔法の実地試験をしますので、受ける人はこちらへ来てください」
私はこっちなので、呼ばれた方へ。途中男の子が顔を赤くしていたけど、何故?魅了は抑えてるけど…
「ではここからあの的に向かって好きな魔法を打ってください。結界が張ってあるので、どんな魔法でも構いません」
ふふふっ、言質はとったよ。まぁ初級しか使うなってリーナから言われてるけどね。それと、『トリガーワード』を言うことも。
トリガーワードは、『ファイヤーボール』といったその魔法の名前みたいなの。詠唱をしても、これがなかったら発動しないんだって。で、このトリガーワードだけを言って魔法を発動させるのが、『単略詠唱』っていうやつ。私は『無詠唱』があるから、このトリガーワードも要らないけど、目立たないためにだって。『単略詠唱』も少ないんだけどね。
「■■■■ウォーターボール!」
言葉でもないなにかを紡いで魔法を発動させる。だから魔法を使うときはまず呪文の詠唱から練習するんだって。
さっきの人のやつは的まで届かなかった。ちなみに的まで大体10メートルくらいかな。
「うん、いいね。次」
あれでいいらしい。
「ふーん…こんなものですのね」
口調からして貴族かな?入口は分かれてるけど、ここは一緒なんだよね。
「みせてあげますわ…ファイヤーランス!」
おお!単略詠唱だね。威力も中々。真っ直ぐ的まで飛んでいって、爆発した。
ドォォォーーーン!!
「おお、いいね。次」
…この人それくらいしか言わないんじゃない?でも的も丈夫だね。多分あれにも結界が張ってあるね。よし、私の番。
「うーん…」
なんの魔法にしよう?
「…まぁこれでいいか、エアバレット」
これは風魔法。名前の通り風の弾丸だ。弾丸というには少々大きいが、それが的に真っ直ぐ向かう。
ドッカァァァーーン!!
…やりすぎた?どうやら的をぶち抜いてしまったらしい。
「お、おお…き、君もい、いい、ね」
そんな無理しなくてもいいのに。
「ごめんなさい…」
的壊しちゃったしね。
「あ、ああ。大丈夫だ。的は替えがあるからね」
良かった。私のせいで試験が続けられないかと思った。
「君の試験はこれで終わりだから、もう帰っていいよ」
なんか厄介払いされた気がせんでもないけど、このままここにいてもなにもすることないしね。お言葉に甘えさせて貰おう。
「分かりました。さようなら」
「あ、ああ」
私は足早に闘技場を去り、学園を後にした。
…その後レビンは闘技場の修理代に頭をかかえることになるが、当の本人は知る由もない。