第27話 街と買い物とオヤジ
朝食を食べた後、ベルに依頼を受けるかどうかを確認すると…
「フィリアちゃんがいくならもちろん行く!」
ということなので、ひとまず街で必要な物を購入することに。
「じゃあ「じゃあ私が案内するわね!」
レビン…さんの言葉をリーナが遮った。行きたかったのかな?
「あんたは仕事があるでしょ?サボろうとしない!」
「へいへい」
どうやらサボりたかっただけらしい。さて、朝食も食べ終わったことだし、早速行くとしますか!
屋敷から出て歩くこと数分、両側にお店が立ち並ぶ商店街のような所に来た。
「必要な物があればいってね?私が買ってあげるから」
という言質も頂いたことだし、遠慮なく買い物しよう。
…とはいえ、なにを買えばいいのだろうか?
「何が必要?」
「そうね…念の為の非常食に、盗賊なんかを縛るためのロープ、解体とかに使えるナイフ、休憩する時に使う敷物やテント、薬草なんかを掘るためのスコップ、結界石、皮袋、予備の武器…」
なかなか買うものが多いね…1つずつ見ていこう。
まず非常食だね。
「非常食だったらこの店だけど…正直言って美味しくないのよね」
まぁ予想はしてた。非常食って言うくらいだからね。でも、私はアイテムボックスがあるから、調味料や調理道具、食材があれば料理ができる。自炊はずっとしてたから腕に自信があるんだよね。
「だったら、普通の食材は?」
「普通の食材はこっちだけど…まさか、収納魔法使えるの?」
あ、そういえばそういうことにしておけって言われてたっけ?
「うん」
「そう、でも時間はゆっくりとはいえ進むから、非常食は用意しておいた方がいいわよ?」
うーん…多分一生食べることの無いものになりそうだけど、カモフラージュのためだと思えばいいよね。てことで、とりあえず非常食と普通の食材、調味料、調理道具を購入し、アイテムボックスへ。
「後で帰ったらちゃんと整理しときなさいよ?」
「はーい」
収納魔法は私のアイテムボックスのように中に入っている物を確認することが出来ない。だから中に入っているものを忘れると、全部取り出さないと分からなくなるのだ。まぁ、私には関係ないけどね。
「次は…ロープとかのハンター用品ね。こっちの店が安くて品質がいいわ」
さすがこの街に住んでるだけあるよね。私も覚えて置かないとね。
「このロープと敷物、テント、結界石、スコップ…あー、あなた達は魔法使えるのよね?」
「うん」
「私はフィリアちゃんほどじゃないけど」
ベルはあれからかなり努力していて、魔力量も増えてた。使える魔法も中級なら扱えるくらいになった。相性としては水と風、光がいいみたい。
…そういえば最近ステータス確認してないな…ちょっと見るの怖いかも。
「治癒魔法は?」
「私は使えるけど…」
「私は"ヒール"しか使えません…」
ヒールは初級の治癒魔法で、それでも使えるのは凄いことなんだけどね。ただ、かすり傷や止血くらいが精一杯かな。
「だとしたらベルちゃんのためにポーションとかはいるかもね」
「ポーション?」
「怪我を治すための薬よ。飲んでも、傷口にかけても効果があるわ。あとは魔力を回復するためのポーションとかあるけど…」
「あるけど?」
なに?
「…すっごく苦いの」
あー…どれくらい苦いのか分かんないけど、表情を見る限りかなり苦いと予想できる。私は魔力切れになることはほぼないと思うけど、ベルが心配だね。魔力が切れてしまうと全身に力が入らなくなってしまう。戦いの場でそれは"死"を意味する。
「…念の為買っておく」
「そうね、準備しておくだけでもね」
その後ポーションをそれぞれ5本ずつ購入し、店を出た。
「次はナイフとかの武器ね…あそこの店主は気難しいのよね…」
どうやら頑固オヤジの店らしい。そんな店ほどいいものがあると思うのはラノベの読みすぎだろうか?
その店は商店街から外れた所にひっそりと建っていた。
ドアをくぐるとふわんと何かに触れる感覚がした。
「結界?」
ボソッと呟いた私はその言葉の意味を理解した。結界には色々種類がある。魔法を防ぐもの、物理を防ぐもの、またはその両方を防ぐもの、平衡感覚を狂わせ迷わせるもの…そして、認めたものだけを通すもの。
「まさかこの結界に気づくとはね…」
どうやらリーナは知っていたらしい。これは恐らく店主の"選別"だろう。
「ハッハッハ!まさか俺の店にこんなちっこいのがはいれたとはな」
大きな笑い声とともに店の奥から店主が出てきた。身長が低く、髭を生やしているおじいさんだ。もしかして…
「ドワーフ?」
「ハッハッハ!その通りだよ、お嬢ちゃん」
ドワーフは初めて見た。イメージ通りだとつい笑ってしまう。
「で?俺になんの用なんだ?」
「あ…えっと、解体に使えるナイフが欲しいの。あと、革鎧と弓と矢」
「ハッハッハ!ちょっと待っとれ」
笑いながら店の奥に消えていった。
「フィリアちゃん?なんで弓だけ?フィリアちゃんのは?」
ベルがそんなことを聞いてきた。てゆうか入れたのね。
「うん?別に私は要らないからだよ?」
いたって単純な理由だ。だって私の剣はオリハルコンで出来ているのだから。
「そういえばあなたの剣はオリハルコンだったわね…でも、入学試験では難癖をつけてくるやつもいるから、普通の鉄の剣も必要だとおもうわよ?」
あー確かに…うん?入学試験?
「入学試験に剣あるの?」
「あーそっか、フィリアちゃんは魔法が使えるから別にいいわね。入学試験は剣と魔法どちらかを選んでするのよ」
へー。まぁ確かに魔法を使えない人は圧倒的に不利になるから、当然と言えば当然か。
「ハッハッハ!ほれ、これでいいか?」
いつの間にか戻ってきていたらしい。カウンターの上には頼んだものが置かれている。鑑定をかけてみても、とてもいいものだと分かる。
「へー。いいものだね」
「ハッハッハ!嬢ちゃんいい目をしてるな。ほれ、これも持ってけ」
そう言ってカウンターの下から剣を取り出した。
「え?」
「こいつは俺が作った渾身の逸品だ。並の剣よりよっぽどいいぞ」
そう言われたので、鑑定してみる。
鋼鉄の剣:伝説の職人マルコムが打った渾身の逸品。並の鋼鉄の剣の3倍の耐久性と切れ味を持つ。
お、おう…あんた、伝説だったのね。でもこれはかなりいいものだ。
「いいの?」
「ハッハッハ!いいってことよ。俺もこの剣を渡せるやつに会えて満足だ」
多分ずっと待ってたんだろうね。この剣に相応しい人が来るのを。
「ありがとう、お代は?」
「ハッハッハ!流石にタダとはいかねぇが…そうだな、金貨10枚ってところだな」
「え?!」
ありあえない!私が鑑定しただけでも金貨50枚はくだらないものだ。
「ハッハッハ!安すぎるって思うか?」
「う、うん…大丈夫なの?」
「ハッハッハ!大丈夫だ。その代わり、この店を贔屓にしてくれたらそれでいいさ」
もちろんそうさせてもらう。ここほどいい武器屋はそうそう無いと思うもの。
「まったく…あんたがそんなに機嫌がいいなんてね」
「ハッハッハ!なに、少しばかり気になっただけさ」
「どうだか…はい、金貨10枚」
「確かに。それじゃ、また来てくれよな」
「「うん!」」
私たちは店を後にした。
「さて、いよいよ冒険者ギルドで依頼を見るわよ」
「うん!」
「はい!」
私たちは冒険者ギルドに向かって歩きだした。