第25話 冒険者ギルド
屋敷から歩くこと数分。ついに冒険者ギルドに着いた。見た目は二階建ての大きい集会所みたいなかんじ。
中に入ると、カウンターと紙が貼られているボード、それに酒場みたいなのがあった。
受付の人は私たちを見るなり、驚いた顔をして、大急ぎで2階に上がって行った。なにかあったのかな?
しばらくすると階段からおじいちゃんが降りてきた。よく親戚とかに居そうな白髪の孫に甘い優しいおじいちゃんみたいな人だ。
「カトリーナ様、今日はどういったご要件で?」
へー。結構丁寧な言葉遣いするんだね。
「わざわざギルマスがでてこなくても良かったのに」
うん!?ギルマス!?ギルドマスターのこと?え、それってギルドの1番上の人じゃないの?
「いえいえ、これくらい当然です。さ、ここではなんですから待合室に…」
なんか話しかける隙がなくてそのまま案内されてしまった。案内されたのは10畳くらいの比較的広めな部屋で、真ん中にテーブルとソファーがあるだけのシンプルな部屋だった。
「で、どういったご要件で?」
「この子たちがハンターに興味をもったから、ハンターについて説明してあげてくれる?」
「こんなちいさな子どもにですか?」
…否定はしない。
「小さくても実力はあるし、それにまだなるって決めた訳じゃないからね?」
「あ…すいません。はい、かしこまりました。おい!」
「はい」
ギルマスが外に叫ぶとさっき急いでいた受付嬢が入ってきた。
「ハンター登録の説明資料を持ってきてくれ」
「はい、分かりました」
そう言って部屋を出ていくと、ほんの数分で帰ってきた。
「こちらです」
「ありがとう」
なんか紙みたいなのをギルマスに渡したら、すぐに部屋を出ていった。
「じゃ、説明するぞ」
口調が変わってるけど多分子ども相手だからだと思う。
説明された内容を簡単にまとめると…
ハンターランクは10段階あり、高い方から順番にSSS、SSS、A、B、C、D、E、F、Gランクとなっており、最初はGからで、受けられる依頼はランクが上がるほど増えていき、報酬が上がる分危険度が増すそう。例外があったりもするが、基本は1ランクずつ上がっていく。上がるためには依頼を受けなきゃならないけど、ただ受けるだけではなく、その依頼の達成度、かかった時間、他のハンターと仲良く出来るかなども評価の基準になり、評価が一定量溜まった場合ギルドから報告を受ける。その後、自分のランクの1つ上のランクが必要な依頼を受け、見事達成したら、ランクが1つ上がるのだとか。
「自分のランクの1つ上の依頼は報告がないと受けられないんですか?」
「いや、報告がなくても受けることは可能だ。だが、それでランクが上がるかどうかはわからないし、第一危険過ぎる。そんなリスクを犯すくらいなら、ギルドからの報告を待った方がいいってことで、受けるやつはほぼいない」
なるほど。たしかに身の丈にあった依頼を選ぶというのはハンターとして必要な力だしね。
「まぁ、それは高ランクの場合の話だ。Gランクとかは雑用の依頼ばかりだから、腕に覚えがあるやつらはFランクの簡単な討伐依頼を受けたりしてる。ただ、その場合受付嬢がそのハンターを鑑定して、受けても大丈夫か確認することになっている」
確かにそれで若い人たちが亡くなってしまったら悲しすぎるものね。
「説明は大体以上だ。他に質問はあるか?」
「とりあえず、大丈夫です」
「ほんとに手紙にあった通り頭がいいのね…」
なんかリーナがそんなこと言ってるけど、普通じゃない?
「で、どうする?登録するか?」
うーん…まだ両親とかから許可取ってないし、また今度かな?
「あ、そうそう。マリアがハンターになりたいのなら別にいいわよっていってたわよ」
まじか!それなら登録しておいて損はないだろうし、登録しておこうかな。
「うーん…じゃあお願いします」
「分かった。それじゃあこれに名前とかを書いてくれ。別に他は書きたくないのなら書かなくていい」
「あ!私も!」
そう言って渡してきたのは名前や攻撃手段などを書くスペースがある小さな紙だった。書くのは羽根ペンでする。
うーん…名前は本名を書くとして、問題はスキルとか攻撃手段だよね。まぁ書かなくていいっていってたし、スキルは放置。攻撃手段は魔法と剣にしとこう。
「書けました」
「うむ…ほう?魔法も剣もできるのか」
え、珍しいの?
「まぁ、剣はあくまで牽制するためですね」
ここはこうして置いた方が楽だろう。
「ふーん…私から見ても隙が一切ないんだけどな…ま、いいか」
またリーナがなんか言ってるけど、そんな隙がないってわかるものなの?
「私もかけました!」
「あ!ちょっと待って!」
私は渡す前にベルの手から紙をひったくった。
「え?!なにするのフィリアちゃん!」
「いいから!ちょっとまって!」
私がなんでこんなことをしたかと言うと、ベルが自分の力の特異性について全然理解してないからだ。
…で、私の不安は見事に当たっていた。ベルは丁寧に、それはもう丁寧に自分の持っているスキル全てを書いていた。
「はぁ…こんなことだと思ったよ…」
「なになに…あーなるほど…フィリア、よくやったわ」
「え?ちょっと2人ともなに話してるんですか!」
「これは後で話しましょ。とりあえず、ベルちゃんはもう1回書いてくれる?」
このままだしてたらかなりやばかった。もっと理解して欲しいものだよ…
「え?…分かりました。ただし!後でちゃんと話してくださいね!」
その後ベルは私とリーナに見張られながら、紙を書き終えた。最初の紙は私がこっそり燃やしておいた。
「よし、これでいいか?」
「……はい」
物凄い不服そうだけどあのままだしてたらやばかったからね?
「じゃあ登録してくるぞ」
そう言って部屋を出ていくと、ほんの数分で帰ってきた。
「このカードに血を1滴垂らしてくれ」
渡してきたのは、シャガルさんが持っていたような金属でできた黒っぽい鉄色のカードだ。
…ここで問題が発生した。多分一緒に渡してきた針だと刺さらないと思う。
「どうしたの?」
リーナから心配された。どうしよ?
「あ、そっか!フィリアちゃん体硬いもんね!」
「「え?」」
断じて体が硬い訳じゃないんだけど…
「どういうこと?」
「んとね、この王都に来るまでに盗賊に襲われて戦ったんだけど、その時フィリアちゃん斬られそうになったの」
「え?!大丈夫なの?」
「うん」
「その時にね、フィリアちゃんの体に剣が当たったと思ったら、剣の方が砕けちゃったの」
「は?!」
…まぁ合ってるけどね。確かにその解釈だったら私の体が硬いっていう結論になるけど…
「ハハハッ!そうか、なら血じゃなくて魔力でもいいぞ」
「「え!?」」
だったら最初からそれで良くない?
「ただ、魔力制御がLv6以上の場合のみだがな」
「どうして?」
「これ自体が魔道具みたいなものだから流す魔力を制御出来ないと砕けちまうんだよ」
あー、そういう事ね。確かにLv6以上は少ないかもね。そうなると血の方が楽で安全だね。
「Lv6あるから大丈夫」
以上とは言わない。
「なら流してくれ」
そう言われて流すとポァーと光って、文字が出てきた。
「うむ、上出来だ」
書かれていたのは名前とランクだった。
「そのカードはギルドカードと言って、街の門を出入りする時の身分証になる。また、ランクによって色分けされていて、上がると色が変わる。今は最低ランクだからアイアンと呼ばれる鉄色だ。Cランクになると銅色、Bだと銀色、Aだと金色、S、SSは虹色、そして最高ランクのSSSは黒色だ」
へー。そういえばシャガルさんのカードは銀色だったね。
「依頼なんかは明日見るとして、今日はもう帰りましょう」
外を見てみるともう既に日は落ちていて、暗くなっていた。
「では外まで送ります」
ギルマスに外まで送られて、私たちは冒険者ギルドを後にした。
次話は9日投稿予定です。