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第18話 弟とLv

 特訓を始めてから早1年。私たちは6歳になった。学校に行くまであと1年だ。


「今日は実践訓練として、狩りをしましょうか」

「「はーい」」


 マリアが膨らんだお腹を擦りながらそう言ってきた。決して太っているわけではない。


「どっちの子が生まれるかたのしみだね!」

「ふふふっ。そうね」


 そう、新しく子供が出来たのだ。これで私は今世でもお姉ちゃんとなる訳だ。そして、今世は弟だ。どうして分かったのかというと、透視と未来視で見たのだ。その時、


「あ、男の子だ」


 と思わず声に出してしまって、私が透視を持っていることがバレてしまった。だから、私が迷惑事に絡まれるのを防ぐために、性別がわかっているのに分かってないふりをしている。まぁ、魅了眼がばれるよりましだね。


「でも、何を狩るの?」


 この辺りは勇者であるロビンが定期的に狩りをしているため、魔物があまり居ないのだ。


「そうね…ホーンボアとかかしら?」

「ホーンボアですか?!」


 うん?ベルがなんか驚いてるけどなんでだろ?


「確かにホーンボアはCクラスの生物だけど、魔物ではないから大丈夫よ」

「Cクラス?」


 それってどれくらい強いんだろ?


「ええ、例えるならゴブリンくらいね」


 なーんだ。そんなくらいか。


「でも、攻撃はオークくらいあるわよ」

「「え!?」」


 それって結構強いんじゃね?


「ただ、真っ直ぐにしか突っ込んでこないから、避けるのは楽よ」


 …猪突猛進?まさにイノシシだな。


「とにかく、これを倒せればあなた達の努力は無駄じゃなかったってわかるでしょ?それに、いいLv上げにもなるしね」


 恐らく最後に言ったのが本当の目的だな。確かにLvを上げるにはそういうことをしないといけない。上げておけば絡まれても安心だしね。


「じゃあ森に移動するわよ」

「「はーい」」


 歩くこと数分、村外れの森にやってきた。


「ここのどこかにホーンボアがいるはずよ。ただ、ほかの動物もいるから、警戒を怠ったらだめよ?」

「「はーい」」


 なるほど。警戒と察知を養うのね。ただ、この森結構広いんですけど?


「あの、この森の中を探すのは時間がかかると思うんですけど…」


 ベルもそうおもうよね。私が本気をだしたら多分この森の生物全て分かるだろうけど…


「見つからないならその時はその時よ。別に今日中に倒さないといけない訳じゃないんだから」


 あ、そうか。別に期限がある訳じゃないんだ。


「だからこれはホーンボアと戦うための前哨戦だと思えばいいわ」

「分かりました!」


 確かにLv上げをしてない状態で挑むのは危険だよね。


「よし!いこ!フィリアちゃん!」

「あ、待って!」


 全く、その元気はどこからくるのか…


 しばらく歩くと、索敵に引っかかった。


「何か、いる?」

「え?!そうなの?」


 草むらから覗くとそこには角の生えたうさぎが三体ほどいた。


「ホーンラビットね。ちょうどいい相手だわ」

「じゃあまず私が矢を打つね」


 ベルの弓の腕はこの1年でだいぶあがっている。30メートル先の的を射抜けるほどだ。


 ベルが弓を引き、矢を放つ。その矢はホーンラビットの頭に吸い込まれるようにして当たった。


「よし!」

「次はフィリアよ!」

「分かった!」


 私は魔法を行使する。剣の腕についてはロビンから指導を受けているため、別に使っても問題はないのだが、今は使える剣を持っていない(ことになっている)ので、魔法を使うことにしたのだ。


 私はアースニードルを使った。土属性の比較的簡単な魔法だ。すると2体のホーンラビットの下の地面から棘が生えて、体を貫いた。


「…まさか実戦でここまで正確に使えるとはね…」


 ありゃ?やらかしたか?


「凄い!フィリアちゃん凄いね!」

「ええ、本当に。2人ともステータスを確認してみて?ベルちゃんは元からLvがあったからまだ上がってないかもしれないけれど、フィリアは上がってるんじゃないかしら?」


 言われた通りLvを確認してみる。

 …すると、上がっていなかった。


「…上がってない」

「え?変ね…フィリア、鑑定は持ってる?」


 ここはちゃんと答えておこう。


「うん」

「じゃあ、自分のステータスプレートのLvのとこを鑑定してみて?」

「どうして?」

「そうすると、次のLvまでどれくらい経験値が必要なのかがわかるのよ」


 へー。私は自分のLvを鑑定してみる。すると、


 Lv.1:次のLvまでの必要経験値残り:985560ポイント


 は!?何この必要経験値は?あ、説明に続きがある。


 種族が多く混ざっているため、全ての種族において、1Lvupに必要な経験値量の平均になっている。


 …まさかこんなとこで弊害がでるとはね。


「どうだった?」


 うーん…これは正直に言った方が後々楽かもね。


「…あと985560ポイントだって」

「え!?どうしてそんなことになってるのかしら…個人差はあるけど、普通最初は大体100ポイントくらいなんだけど…なにか説明があった?」


 これを言うと私の種族について話さないといけなくなるから、言えないね。


「ううん。なにも」

「そう…」


 うまく誤魔化せたかな?


「…フィリアのLvを上げるのは大変そうだけど、上がらないって訳じゃないんだから、気長にやりましょう」

「うん」


 でもこれはある意味ありがたかったかも。だって経験値が祝福(ギフト)のせいで、かなり貰えちゃうんだから、そのままだったら、Lvがすぐにカンストしちゃうもんね。でも、最高はどのくらいなんだろ?


「Lvの最高ってどのくらいなの?」

「さぁ?そこまで到達した人が居ないから、分からないのよね」


 まぁ、そりゃそうか。そんなホイホイカンストしたら大変だわ。


「あ!あっちにも何かいますよ?」


 そうこうしているうちに、新しい獲物をベルが見つけたらしい。


「ベルちゃん、たとえ見つけたからと言って大声を出すのはだめよ?それと、1人で突っ込むこともね?」

「あ…ごめんなさい」

「分かればいいのよ」


 ベルのその落ち着きのなさはこの場では命取りになる可能性があるからね。


「さて、次は…コボルト?何故かしら?」


 コボルトは二足歩行の犬みたいな魔物だ。

 確かに村外れとはいえ、ここまで近くに魔物がいるのは変だ。


「でも、放置するわけにはいかないわね…よし!2人ともいい経験だわ。倒してみなさい」

「「はい!」」


 さて、どうやって倒そうか?コボルトは全部で五体。近接があまり出来ないベルの元に来させないためにも、私が前にでる必要があるね。


「じゃあ私が前で牽制するから、ベルは弓で狙ってくれる?」

「え?!それじゃあフィリアちゃんが危険だよ?」

「大丈夫。近接もだいぶできるし、試してみたいこともあるから」


 試してみたいこと、それは魔法で剣を作るということだ。アイテムボックスから見たことの無い剣(刀)がでてくるのを見るよりはマシだと思う。


「…分かった。気をつけてね?」

「もちろん」


 私は軽く気配隠蔽を使いながら少しづつ近づく。そして、位置に着いたらベルがまず一体に向けて矢を放つ。


 ヒュ!スパン!


 見事に頭に突き刺さり、一撃で仕留めてしまった。


「だいぶ上手くなったな…」


 そんなことを吹きながら私はコボルト達がベルを見つける前に前にでる


 グワァァァ!


 吠えながらコボルトが突進してくる。私はそれをかわすとその隙に魔法を放つ。


「パラライズショック!」


 例えるならスタンガンみたいな魔法だ。違うのは気絶させるのではなく、痺れさせることだ。


 キャン!


 …可愛い声出しやがって。私は痺れている一体を放置し、残り三体と対峙する。


 ヒュ!スパン!


 また一体が頭を撃ち抜かれて死んだ。相変わらず凄い命中率だ。


「さて、実験に付き合ってもらおうか」


 私はコボルトにそういうと、魔法を構築する。イメージはゲームとかでよくある両刃のバスターソードと言われる大剣だ。使う属性は氷と土だ。氷と微量の鉄なんかが混ざり合い、鋭く切り裂くイメージで魔法を構築する。


 ビキビキ!ピキーン!


 空気が凍りつき、目の前にイメージ通りの剣が現れる。

 私はそれを持つと、横薙に振るった。重さは大して重くないが、まるでバターを切るかのように切り裂いた。


「おお!やばいな、これ」


 2体のコボルトが横並びだったので、2体同時に切り裂いた。

 2体は一瞬何が起きたのか理解することなく、上下に体が分かれ、絶命した。


 パキーン!


「ありゃ?」


 どうやら2体がギリギリだったらしい。刀身はおろか全体が砕け散った。


「耐久は低め、か。でも、実験は成功だね」


 私は残っていた痺れているコボルトに持っていた短剣でトドメを刺すと2人のもとへ戻った。


「すごいよ、フィリアちゃん!」

「ええ。でも、あんな魔法どこで?」


 まぁ、来るよね、その質問。


「何となく?魔法で剣が出来たらいいなーって思ってやったら出来た」


 ここは無自覚っぽい感じで誤魔化しとこう。


「何となくで魔法をつくったの?!…はぁ、フィリアも自分のしている事に自覚を持ちなさいよ…」

「…ごめんなさい」


 上手い具合に勘違いしてくれたみたいでよかったよ。


「さぁ、もう日も沈んじゃうからコボルトの死体を片付けて帰りましょう」

「「はーい」」


 魔法で穴を作り、その中にコボルトを放り込み、火をつけて燃やし、火が消えた後、穴を埋めた。そして私たちは森をでて村に向かった。帰る途中にベルと分かれ、日が沈んだころ、家に着いた。


「あーお腹すいたー」

「ふふふっ。確かに夢中になっててご飯のことすっかり忘れてたわね」


 私はガッツリと晩御飯を食べてお風呂に入るとすぐに眠気が襲ってきたので、自分の部屋に行き、ベットに入ると、死んだように眠りについた。



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