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第131話 嫌な予感は三度目ある

 市場を後にし、馬車は進む。


「そう言えば」


 マリアが突然口を開いた。


「フィリア、あなたハンターランクいくつ?」

「えっと……」


 そう言えばどれくらいだっただろうか?最近あまり行けてなかったからなぁ……

 アイテムボックスに仕舞っていたギルドカードを取り出してみる。


「Cだね」

「あら。案外いってなかったのね」

「……待って。どれくらいだと思ってたの?」

「うーん。Sくらいかなぁって」

「……一般的にSランクがどれくらいいるのか、知ってる?」


 一般的に、Sランクは国に5人もいればいい方だ。それだけSランクという存在の数は少ない。


「もちろん知っているけれどね。あなたほどなら、いけるんじゃないかって」

「…期待してくれるのは嬉しいけど、私だってそう暇じゃなくてね」


 本当に忙しかった。……特に()()が。それがなかったなら、Aとかくらいにはなってたと思うよ。


「じゃあ今暇よね?」


 ものすごくいい笑顔で聞いてくる。い、嫌な予感しかしない……


「ひ、暇だね」

「よし。じゃあキャサリンちゃん。行き先をギルドに」

「分かりました」


 やっぱり行きますよねぇ?!


「…私の承認は?」

「あら、ただの私の王都観光よ?承認いる?」

「………」


 ………もう何も言うまい。








 と、言う訳で。到着しました、冒険者ギルド。


「で、どうするの?」

「そうねぇ。まずは……」


 そう言いながらマリアが冒険者ギルドへと足を踏み入れる。すると今さっきまで外まで聞こえるほどの騒ぎ声がしていたのに、ピタリと止んだ。

 ……またしても嫌な予感しかしない。


「(お、おい。あれ、いや、あの人は……)」

「(ああ。違いない)」


 私の耳がそんな声を拾う。いやもうその先を聞かなくても誰について話してるのかわかるんだけどさ……。


「(マリア様だ)」


 ですよねぇー。知ってた。やっぱり顔は知られているのか。それだけ有名人だってことを再認識したよ。

 ……あれ、ちょっと待って。そこに私がいるってかなり不味いんじゃあ……


「フィリア?どうしたの?」


 マリアが私の名前を呼ぶ。

 ……すると当然、周りが騒がしくなる。


「(おいおいっ!マリア様から呼ばれるって、あの子何もんだ!?)」

「(俺知ってるぞ。確か最近は来なかったが、小さいのに優秀なハンターだ)」


 おお。優秀って言って貰えるのはうれしいなー。


「フィリア?」

「………行くよ」


 これ以上ここにいたくないので、さっさとマリアの元へ。


「…で?」

「これなんてどうかなぁって思うんだけど」


 マリアが立っていたのは、依頼ボードの前。そこに貼られていた1枚の依頼書を指さした。


「…私にこれをやれと?」

「あら不服?」


 マリアが指さした依頼書。そこに書かれていたのは……ロックゴーレムの討伐依頼。

 ロックゴーレムというのは、岩石でできた2〜3メートルほどの背丈のロボットのような魔物。危険度としてはそこまで。なぜならロックゴーレムは体が重く、動きが遅いから。

 でも、危険度と難易度は比例しない。

 ロックゴーレムは体が岩石だ。つまり、硬い。そのため倒すための攻撃手段が限られる。だから倒すためにはそれなりの準備と実力が必要。上級者と中級者の実力の差が分かれる依頼。


「……はぁ。やればいいんでしょ、やれば」

「投げやりね」

「……今のギルドを見て何も思わないの?」


 マリアがギルド内を見渡す。そこでようやく注目を集めていることに気づいたようだ。


「あらあら。なるほど。……ふふっ」


 怪しげにマリアが微笑む。本日三度目の嫌な予感が……


「うわっ!?」


 いきなりマリアが私に抱きついてきた。ちょっ!苦しいっ!


「ふふふっ。可愛いでしょ」


 ギルドにいる人全員に聞かせるようにマリアがそう言う。


「くる、しいってっ!」


 マリアの腕から何とか抜け出す。


「はぁはぁ…」


 息を整えていると、ヒソヒソ話が聞こえてきた。


「(お、おい。あんなに仲良さげって、一体なんでだっ!?)」

「(お、俺が知るかよっ?!)」


 ……私はマリアのことを恨めしげに睨む。だが、マリアは何処吹く風という表情だ。


「……これ受けてくる。これ以上余計なことしないで」

「あら、ただのスキンシップよ?」

「またやったらギルドぶっ飛ばすよ」


 そう言うとマリアの顔が引き攣った。まぁ、やろうと思えば出来ちゃうからね……勿論やらないけどねっ!?


 依頼ボードから依頼書を取り、カウンターへと向かう。


「おや。随分と久しぶりじゃないか」


 カウンターにいたのは、最初の時も対応してくれた、チェルシーさんだった。ほんといつもいるねこの人……


「久しぶり。これお願い」

「はいよ」


 挨拶もそこそこにギルドカードと依頼書を渡す。

 チェルシーさんは機械へとギルドカードを差し込んで何かしらの操作をした後、返してくれた。


「受付完了だよ。にしてもマリア様と知り合いだったのかい?」


 知り合いどころか実の家族だけどね。


「まぁ、ね」


 曖昧に微笑んでおく。


「そうかい。まぁ、深くは聞かないさ。気を付けるんだよ」

「うん。ありがと」


 最後に笑顔を見せてから、私はマリアの元へと戻った。


「いこ」

「はいはい。まったく、照れ屋さんなんだから」

「………」


 私は何も言わずにそそくさとキャサリンとベルが待つ馬車へと戻った。

 ………なんで嫌な予感ほど当たるんだろうね。ほんと。




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