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第127話 朝の一幕

 次の日。パチリと目が覚めた。

 眠気はない。だが、起きれない。


「んふぅ……」

「……はぁ」


 何故起きれないのか。それはキャサリンが私の体に抱きついているからだ。まるで私のことを抱き枕だと思っているかのように、抱きしめてくる。かなり力強い。そのせいで起きれない。


「おーい。キャサリーン。起きろー」

「うぅ……あと、あとちょっと…くぅ」

「……はぁ」


 このやり取りの繰り返しである。何回目だったかもう忘れたよ。

 とりあえずキャサリンを起こすのは諦めて、キャサリン自身が起きるまでもう一眠りしようと思い、目を閉じようとすると、ガチャりと部屋の扉が開いた。


「あらあら。仲良いわね」


 部屋へと入ってきたのは、マリアだった。私とキャサリンの状態をみて、そんなことを呟いて笑みを浮かべた。


「仲がいいのは認めるけど、今は起きて欲しい」

「まぁ貴族の子供はそう朝早くに起きないでしょうしね。仕方ないわよ」

「うぅ…ほら、キャサリン起きてよ」

「あとちょっとぉ…」

「はぁ…」

「ふふふ。キャサリンちゃん、そろそろ起きないと朝ごはん食べれないわよ?」

「はっ!それはダメですわ!」


 なんでそれで起きる!?いや有難いけど?!


「起きたわね」

「あっ!マママリア様!?お、お見苦しいところを…」

「そんな畏まらなくていいでしょう。おはよう」

「はいっ!おはようございますっ!」


 うん、いい返事だ。いい返事なんだけどさぁ……


「……キャサリン、私のこと忘れてない?」

「……あっ」


 おい絶対忘れてただろ!?


「お、おはようございます…?」

「おはよう……」

「ふふふ。そんな不貞腐れなくてもいいでしょう?」

「……不貞腐れてなんか、ないもん」

「嘘おっしゃい」


 マリアが近付いてきて、いつの間にかふくれっ面になっていた私の頬をつついた。ぷすぅと間の抜けた音を立てて、頬が萎む。むぅ……精神安定の魔法までかけられた。そこまでしなくていいよ……それにアンクルの効果で効かないし。


「ほら、朝ごはんよ」

「…はぁい」

「はいっ!」


 キャサリン、マリアと共に下へと降りる。そこにロビンとアッシュの姿無かった。居たのは朝ごはんの準備をするレミナだけ。


「アッシュとパパは?」

「アッシュとロビンは今外で剣の素振りでもしてるんじゃないかしら」


 窓から覗くと、確かに2人揃って素振りしていた。……そしてこうして見ると、アッシュの剣を振るときの癖は、ロビンの癖から来てるってことがよく分かる。多分ロビンに教わっていた影響かな。

 ただ、大人と子供。体格がまるで違うので、アッシュの癖をそのままにしておくのは危ない。だから現在その癖を治してる最中だったりする。だいぶマシにはなったけど、まだまだ残ってるので、時間がかかりそうだ。


「おはようございます」

「おはよう、レミナ」

「「おはよう」ですわ」


 朝の挨拶を交わして席に座り、今日の朝ごはんの、サンドイッチを食べる。うん、やっぱり美味しい。しかも昔より美味しくなっている気がする。レミナも頑張っているんだね。


「美味しいですわ!」

「ありがとうございます」


 ぺこりとレミナがお辞儀する。舌が肥えているはずのキャサリンを唸らせるんだから、レミナの料理のすごさがよく分かる。


「終わったぁ!」


 ドカドカとアッシュとロビンが入ってきた。運動して暑くなったのか上半身裸で、軽く汗をかいているようで、すこしテカテカしている。


「はわわっ」


 そんな姿をみて、キャサリンが顔を手で覆っていた。隙間から覗くと、顔が茹でダコのように赤くなっていた。ふむ。そこまで異性に対しての免疫がないとみた。


「お風呂いってきなさい」

「おう!いくぞ、アッシュ!」

「分かった!」


 元気一杯といった様子で、2人がお風呂へと向かった。元気なのはいいことなんだけれど、ちょっとうるさいのよねぇ……それはキャサリンも思ったのか、少し顔を顰めていた。


「大丈夫?大体あの人たちはあんな感じだから」

「いえっ!平気です!」

「そう?」

「そ、それよりも今更だったのですが……あの、おふたりと、わたくしが入ったお風呂って……」

「あぁ、同じよ?」

「あうぅ……」


 プシュウという効果音が聞こえそうな感じでキャサリンが顔を赤くした。そ、そこまで気にする?


「そんなに嫌だった?」

「あ、その……すいません。異性と関わるのは家族以外で初めてなのですわ…」

「そう。まぁ、無理に慣れろとは言わないわ。人それぞれだもの。だからそんな申し訳なさそうな顔をしないで、ね?」

「……はい」


 とりあえずは大丈夫そう、かな。


「キャサリンはいつまでいるつもりなの?」

「いつまででしょうか……?」


 ちょいちょい。なんで疑問なんだ。


「あ、いえ。私が帰りたくない訳では無いのです。帰りたいのですよ?もちろん。ただ、その……」


 キャサリンが必死に弁明したと思ったら、言葉を濁した。


「なに?」

「……現在修羅場というか夫婦喧嘩というか痴話喧嘩真っ只中といいますか……そのせいで屋敷に帰りずらいのですわ。言わば……わたくし、家出ですの」


 お、おう……何があった?




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