第123話 私は被害者だ!
「うぅ……」
「あら、起きた?」
耳元で聞き覚えのある声が聞こえた。うっすらと目を開けると……
「……リーナ?」
「ええ、そうよ」
なんでリーナがいるんだ…?それよりここは……
天井が目に入るということは寝ている体勢のようなので、ひとまず体を起こす。どうやらベットに寝ていたようだ。
「体調は?」
「あぁ、大丈夫…だが」
「まぁ言いたいことは分かるわよ。ていうか私だって驚いたのよ?」
うん?どういうことだ?
「だっていきなり私の部屋にロビンが転移してくるんだもの。ビックリしたわ」
「そ、そうだったのか……」
色々と思い出してきたぞ。確かドライアドに会って聖結晶を貰ったんだよな。で、強制転移させられたんだったな……
「まぁあの子らしいわね」
「……ドライアドの仕業ってよく分かったな」
「付き合いは長いからね」
それって……いや、聞かないでおこう。リーナの年齢は、な……。
「とりあえず、聖結晶は手に入ったのよね?」
「あぁ……これだ」
俺はマジックバッグから貰った透明な聖結晶を取り出し、リーナに見せる。
「あら……なかなかお目にかかれないサイズね」
「そうか?」
俺は掌の上にある聖結晶をコロコロと転がす。俺は実物を見たことがないから、よく分からんな。
「何か言ってた?」
「そうだな……リーナに来て欲しいって言ってたな」
「それだけ?」
そうだな……確か……
「……あ。フィリアも来てくれとか言ってたな」
「フィリアちゃん?なんで?」
「ああ。俺もなんでか知らん」
なんでフィリアのことをどうしてドライアドが知ってるんだか……いや、確か聞いたことがある。ドライアドは木の妖精だからこそ、全ての植物から見て、聞くことが出来ると。だったら知っていてもおかしくは無いか。
「……あぁ、そういうこと。まったくあの子は……」
「どうした?」
「……ドライアドとフィリアちゃん、どうやら前に知り合ってたみたいなのよ」
「そうなのか?というかどうやって知ったんだ?」
「簡易的な言葉しか伝えられないけれど、ドライアドは植物を介して言葉を伝えることができるのよ」
リーナが指さしたのは部屋の隅にある鉢植え。俺が見るとさわさわと葉が揺れた……気がした。
「で、どうするの?」
「ん?とりあえずマルコムに聖剣を作ってもらうが?」
「違うわよ。フィリアちゃんをどうするの?」
どうする?なぜフィリアがでてくる?
「……ドライアドがフィリアちゃんを呼んだのでしょう?」
「あぁ、確かに言ってたが?」
「……フィリアちゃん、ドライアドに気に入られてるみたいだから、会ったらしばらく帰れないとおもうわよ?」
「……まじか?」
「ええ。私も……5年くらい?」
それは困る!フィリアが5年もいなくなるなんて耐えられるか!
「まぁそっちは任せて。会わないという選択肢は残念ながら選べないのだけれど、かかっても数日で帰させるよう説得しとくわ」
「頼む!」
「え、ええ。任せて」
とりあえずこれで安心か。リーナに任せておけばまず大丈夫だ。早く聖剣を作ってもらって、フィリアに会わないとな!
ーーーーーーー
『ちゃんと渡しといたわよー』
「良かった…」
私は背丈が同じくらいの女の子と会話をする。見た目からは想像できないけど、ドライアドだからかなり長く生きてるのよね……。
『ねえねえ。早く来てよ』
「今は無理だよ。でも、あと少ししたら行くから、ね?」
『うー…出来るだけ早くね!』
そう言って森の奥へと消える。全く……年齢に見合わないほどの子供っぷりよねぇ……。まぁだからこそ、私も気兼ねなく話せる相手なのだけれどね。
「ねぇ、フィリア?」
「なぁにー?」
「……今のってまさか」
「うん、ドライアド」
「……軽くサラッと言うわね。いつ知り合ったのよ」
うぅん……いつと言われると……いつなんだろう。確か……
「……私が森を壊したとき?」
「それって…フィリアの契約獣のフェンリルと戦ったときの?」
「ううん。そっちじゃなくて……」
「……別のとこでも壊してたのね」
うっ!マリアの視線が痛い!
「……私が壊したんじゃないからね!?」
そこは声を大にしていいたい。というか言った。
「じゃあ誰?」
「……ローブ男」
「……自爆?」
「そうそう」
多分その時から目をつけられていたのだと思う。それからしばらくしてから、いきなり来たのよね。あっちから。
「なんで?」
「……怒られた」
「……は?」
そ、そんなアホの子を見るような目で見ないで!
「森を壊すなーって…」
「あぁ…」
……納得されるのも地味に傷付く。まぁ確かに森けっこう壊してたけどさぁ?大体が私のせいじゃない思うのよ。逆に被害者だと思う。
けどそんな言い訳は通用せず、森を治すのを手伝わされた。具体的には、魔法でえぐれてしまった地面を直して、ドライアドがくれた種を植え、雨を降らせた。そこまで大変な作業ではなかったのが、幸いだったかな。
「それを大変じゃないって言えるのが凄いわね…」
「そう?」
「考えてもみなさい。確かに難しい魔法ではないでしょうけれど、範囲は?」
「……街一個ぶんか、2個ぶんくらい?」
「そ、そんなに…」
マリアの顔が引き攣る。え、森の規模としては普通じゃない?
「なに?」
「……いや、そんなに壊してたのねって」
「………………」
……聞かなきゃ良かった。




