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第122話 深層部到達

 とりあえずドロップアイテムを回収する。スモールデススパイダーのドロップアイテムは足や目。甲羅などだったが……マザーデススパイダーだけは違った。


「またか……」


 フォレストモンキーを倒したときにもあった、何かの種。なにか特殊なものなのだろうか……ひとまず回収しておくか。

 そして全てのドロップアイテムを回収した後、周りに結界石を置き、軽く睡眠をとることにした。


『ふふふっ』

『面白い人』

『これなら……ふふっ』





 んー……ん?なにか聞こえた気がしたが……まぁいいか。とりあえず起きて……


「……なんでだ?」


 目を覚ますと目の前にあるのは……なんと階段。いやなんでだ??俺寝たの確か森の中だったよな?


「……まぁ、罠ということもなくはないが、ひとまず行ってみるか」


 とりあえず結界石を回収し、階段を降りていく。



 …………長ぇ。もともとここまで階段は長くないはずなんだがな……階段の長ささえも変異したか?


「お。終わりか?」


 階段が終わり、平坦な道に変わる。だが、トンネルのようになっていて、まだ次の階層という訳では無いようだ。ほんといつ着くんだ……


「……って思ったそばからか」


 トンネルのような通路が終わり、大きな部屋のような場所へと出る。


「ここは……ゲートキーパーの部屋、か?」


 森林エリアのゲートキーパーがいるのは確か35階層だったよな……ってことは、俺は34階層にいたってことか?


「まぁ、いいか。手っ取り早く倒しちまおう」


 そう思って剣を構えたんだが……魔物がでてこねぇ。いや、よく見たらそもそも真ん中にあるはずの魔法陣すらない。


「どういうことだ……?」


 ここは確かにゲートキーパーの部屋だ。だが、本来あるはずのゲートキーパーが現れる為の魔法陣がない。

 俺はひとまず剣を出したまま、部屋を回ってみることにした。


「……なんだこれ」


 すると壁に小さな3つの穴を見つけた。横に並んでおり、真ん中の穴が1番深そうだ。両隣りの穴は、そこまで深くない。


「まさか…」


 俺はマジックバックから、リーナから借りた小さな鍵を取り出し、真ん中の穴へと差し込んだ。……ピッタリだ。だが、ここからどうすればいい?鍵を回そうにも、なにかが邪魔して動かない。なにか、条件があるのか?


「……ちょっと待て。この穴の形。どっかで……あっ!」


 そうだ。ドロップアイテムであった、種の形にそっくりだ。だが、そんなことは偶然じゃ……いや。まずは試してみよう。

 マジックバックから2個の種を取り出し、それぞれ形が合う方の穴へと入れる。いや、凄く浅いから、はめ込むと言ったほうがいいかもしれない。そして結果は………はまった。これ以上ないほどピッタリと。


「ふぅ…」


 俺はもう一度、鍵を回す。すると、先程の回らなかったのが嘘のように滑らかに回った。そして、ガチャリと外れる音がする。


「開いたのか……?」


 俺は鍵から手を離す。すると、地面に光り輝く魔法陣が描かれ始めた。


「なっ!?」


 俺は思わずその場から逃げようとするが、上手く体が動かない。そして魔法陣が完成し、これまでに無いほど強く光り輝いた瞬間。俺は、意識を失った。





「うぅ…………こ、こは?」


 次に目を覚ました時、俺はあの寝る前の森にいた。


「やっぱり…夢か…」


 一瞬そう思ったが、周りにあるはずの結界石が見当たらない。かなり頑丈なやつだから、破られて砕けたなんてことはないだろう。それに寝る時に使っていたブランケットも無くなっていた。


「……いや、違うな。ここは、あの森じゃない」


 頬をつねるが、夢ではない。マジックバックを確認したが、無くなったと思っていた全ての物がしまわれていた。そして……2つの種と鍵が無くなっていた。つまり、あれは夢などでない。現実だったのだろう。


『あら、起きた?』

「っ!」


 いきなり声が聞こえ、思わずバッと戦闘態勢をとる。


『ふふふっ。ごめんごめん』

「誰だ!どこにいる!」


 耳を澄ますが、どこから聞こえているのか分からない。……いや、違うな。()()()()()()()聞こえている。だから場所が分からない。


『そろそろ見せようかな』


 そんな言葉が聞こえると同時に、木漏れ日がある形をなしていく。そして一段と光が強く輝いた次の瞬間。その場には、可愛らしい小さな女の子が立っていた。


『ふぅ。現れるのも疲れるな』


 そんなことを呟きながら、目線を俺の方へと向ける。


「お前は……誰だ?」

『知らないの?あぁ、面白がって言ってないのね、絶対。全く……』

「おい」

『あ、ごめんなさい。私はね、ドライアドよ』


 ドライアド……確か、木の妖精?だったか。しかし俺がこの目で見るのは初めてだ。そもそもなかなかお目にかかれない存在のばすだ。


「本当、なのか?」

『嘘ついてどうするのよ』

「いやまぁそれはそうだが……なんでだ?」


 そう。そこだ。なんで俺の前にでてきた?


『え?それも知らないの?』


 なんで知らないんだみたいな目で見られるが、知らん!


「あぁ、なんでだ?」

『あなたが求めてるものを渡すためだけど…』


 俺が求めているもの……?あれか。フィリアとアッシュの俺に対する愛か。


『盛大に勘違いしてるみたいだわ……』

「ん?違うのか?」

『……何のためにここにきたの?』

「そりゃもちろん聖結晶を手に入れるため……」


 ……まて。ということは?


『やっと分かった?その聖結晶を渡すためよ』

「いやなんで持ってるんだ?」

『それも知らないの?聖結晶は私の涙よ?』


 ………知らなかった。ドライアドの涙だったなんて。


『まぁとりあえず、はい、手出して』


 言われた通り手を出すと、ドライアドが手を重ねる。すると手にコロリと石が転がる感触が伝わってきた。


『はい。これが目的のものでしょ?』


 ドライアドが手をどけると、俺の掌に透明な石が転がっているのが目に入る。確かに聖結晶だ……


「……ありがとう。だが、そんなに簡単に渡していいものなのか?」

『いいえ?そうでもないわよ?』

「だったらなんで……」

『えっと、まずそのマジックバック』


 ドライアドが、俺が肩にかけているマジックバックを指さす。


「これ?」

『そう。それは私が渡したものだから』

「渡した…?リーナに?」

『うん。それでそれを持っているってことは、まず悪い人じゃないから』

「いや、盗られたりとか」

『無理だよ。私か、私が直接渡した人が許可しない限り、他人は使えないんだから』


 そ、そんな代物だったのか……。


『あと、試験ね』

「試験?」

『そう、試験。あなたがさっきまでいた場所。あれは、裏なんだ。で…』

「そうだったのか!?」


 思わずドライアドの説明を遮るように声を上げてしまった…だが、当然だろう。裏だったなんて思ってもみなかったのだから。


『だから構造が違ってたでしょ?』


 なるほど……だから前より広く感じたりした訳だ。


「だが、試験ってなんだ?」

『だーかーらー、森を大切にしてくれるか、だよ』

「森?大切?」

『そう。あそこで1本も無駄に木を傷付けていないでしょう?もし傷付けてたら、試験は不合格。強制的に外にだす』


 こ、怖ぇぇ……ていうかあの感じていた視線はドライアドのものだったのか。


『という訳で、あなたは合格したから、渡したの』

「だが、俺がリーナから聞くとか…」

『それは盟約があるから無理。試験については話せないんだよ』

「そうなのか……」

『はい、これでおしまい!じゃあね!あっ、リーナと、それからあなたの子供、女の子のほうね。今度来れるなら来るように言っといて!バイバイ!』

「えっ!あ、お、おいっ!」


 思わずドライアドの肩を掴もうとするが、その手は空をきり、俺はそのまま光に飲まれて意識を失った。












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