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第117話 聖剣

 目を覚ましたのは、日を跨いでからだった。


「あら、起きたのね」


 ちょうど起きたタイミングで、部屋にマリアが入ってきた。


「調子はどう?」

「うん。もう大丈夫だよ」


 そうは言っても心配なのか、マリアが私の額に手を当てる。


「本当に熱はないみたいね」

「だからそう言ったでしょう……私って信用ない?」

「ちゃんと信じてるわよ?ただ、フィリアは自分の体調が悪かったとしてもそれを隠そうとするから」


 うっ!それは、まぁ、確かにそうかも……心配かけたくないっていう想いが、ね。


「食欲は?ある?」

「うん。お腹空いた」

「それじゃあ下でなにか食べましょうか」


 着替えて下へ。


「あ、おはようございます。フィリア様」

「おはよう、レミナ」


 朝の挨拶もそこそこに、マリアが用意してくれたサンドイッチを食べる。昨日はほとんど食べてなかったから、より美味しく感じる……。


「美味しい?」

「うん」

「そう。良かったわ」


 マリアが嬉しそうに微笑んだ。


「それより、パパはまだなの?」

「あぁ……今ね、連絡来たんだけど……」

「来たんだけど…?」

「……素材が必要らしくてね。取りに行ってるみたいだから、まだ時間かかりそうだって」

「素材って……聖剣の?」

「ええ。かなり特殊な素材でね。手に入れるには時間がかかるそうよ」

「そっかぁー…聖結晶か」


 気になったので読心眼を使ってみた。聖結晶と呼ばれる素材が必要らしい。


「……言葉濁した意味ないじゃないの」

「濁すような素材なの?」

「まぁそうでも無いのだけれど……待って。なんで分かったの?」


 私はマリアから目を逸らした。


(なんで分かったのかなぁ?)


 心の中でも問いかけられる。ていうかそうやってる時点で気づいてるよね!?


「……心読んだ」

「やっぱり……というか、読めるのね」

「うん。ステータスで優っている場合のみだけどね」

「そもそもフィリアのステータスに勝てる存在なんているのかしら…」


 それは思うよ……。エルザくらい?


 ーかもねー。お姉ちゃんその世界で一応最強クラスだからー


 やっぱりそうかぁ……。


「それはスキル?」

「えっと…祝福(ギフト)にあたるのかな。読心眼っていうものだよ」

「読心眼…眼っていうことは、目?」

「そう。多分こっちかな」


 私は金色の瞳を指さす。


「なるほどね……そんな力まで持ってたのね」

「まぁそこまで使ってないよ」


 そもそも日常でも、戦闘でも使いにくい。自分の思考が邪魔されるから。


「まぁアッシュの特訓のときにはむっちゃ使ってるけど」

「……道理でたまにアッシュを蹴ってたのね」


 あらやだ。見られてた。って、当たり前か。裏庭ここの窓から見えるし。


「だっていたいけな女の子のことをバケモノとか(心の中で)言ったんだよ?」


 誰だって蹴ると思う。私は悪くない。


『そもそも蹴るという発想がどうかと思うよ…』


 あれ?そうかな?


「いたいけな女の子……」

「なぁに?ママ、なにか文句ある?」

「……いや、何も無いわよ」


 そうかそうか。私は何も()()()()()。マリアが(どこが?)と思っていたなんて、全く()()()()()


「アッシュは?」

「今日も外で素振りしてるわ」

「じゃあ行ってくるね」

「……程々にしときなさいよ?」

「……善処します」


 まぁ死ななきゃ安いさ。うん。


『殺しそうな自覚はあったんだ……』


 ……黙秘します。


 ーーーーーーー


 俺だってフィリアと一緒に帰りたかった…が、そうも言ってられない。世界樹のダンジョンに挑む為にも、万全の装備が必要だからな。とりあえず折れてしまった聖剣を直して、予備の武器も調達しなきゃな。


「という訳で頼むわ」

「久しぶりに来たと思ったら無茶言いよる」


 口ではそういうが、やる気満々なのが見てわかる。

 俺が折れちまった聖剣を持ち込んだのは、ひっそりと佇む小さな工房。そこに伝説の職人がいるなんて普通は夢にも思わないだろうな。


「こりゃまた酷くやったな。何を切ったんだぁ?」

「竜だよ。切ったというより、それで攻撃を防いだ反動で折れちまった」

「そうかい。まぁ直せはするんだが……」

「が?」

「手持ちだけだと、素材が足んねぇな」

「なにが足りないんだ?」

「魔鋼と…聖結晶だな」


 魔鋼は魔力が馴染んだ鋼のことだ。これは俺が前から持ち歩いていて魔力が馴染んでいる鋼の剣から取れるから、問題はない。なので残るは聖結晶なんだが……


「……難しいな」

「だろうな。魔鋼だけでも十分だから、それだけで作るか?」

「いや。やっぱり聖剣でないとな」


 聖結晶が使われてない剣は聖剣ではない。勇者が最も使いやすい武器は聖剣だからな。称号の効果とでも言うべきか……まぁとにかく、聖剣でないとダメな訳だ。


「わがままだな…そう言えば前作った剣はどうした?」

「剣?……あぁ、あれか。俺の子供にプレゼントしたぞ!」

「……は?」


 む。なにかおかしいところがあったか?


「いやまて、子供って何歳だ?確か今7歳くれぇじゃなかったか?」


 あぁ、なるほど。アッシュのことを言ってるんだな。


「お前さんなら話してもいいか……実はもう1人子供が……娘がいるんだ」

「娘だぁ?つまりその娘に渡したってぇのか?」

「ああ」

「馬鹿かお前。普通使いこなせないだろ?」

「いや、流石は俺の娘だ。しっかり使いこなしてるぞ」

「……恐ろしいな。まるであの嬢ちゃんみたいだ」

「ん?ここに子供が来たのか?」

「ああ。ちっさい子供だったがな。リーナと共に来たぞ」


 小さい……リーナと共に……


「……その女の子って、緑色の髪だったか?」

「緑だったな」

「…左右の瞳の色が違ってたか?」

「違ってたな……まさか」

「あぁ、俺の娘で間違いない」


 まさかフィリアが来てたとは思わなかったな……いや、リーナが案内したのか。それならここを見つけたことも納得できる。


「……お前の娘バケモンかよ」

「む。可愛いだろ?」

「可愛い……あぁ、可愛いかもな。見た目は」

「なんだその言い方は」

「……少なくともこの店に初めて来た時、鳥肌が立った。あれは……ほんとに人間か?」

「分からん」


 何せ高位人間(ハイヒューマン)の子供なんて前例ないからな。同じかどうかは分からん。まぁどんな種族でも愛せるがな!


「分からんってヤバいだろ……って、聞いちゃいねぇか。おい!」

「うん?なんだ?」

「はぁ…とりあえず魔鋼はあるんだな?」

「ああ。ほれ」


 魔鋼に変質した剣を手渡す。


「うむ。見事だな。後は聖結晶か」

「まぁ見つけるしかないな…行ってくるよ」

「おう。気ぃつけてな。死んだなんてなったら元も子もねぇからな」

「当たり前だ。じゃあな」


 さてと。フィリアとアッシュに会うためにも、早く終わらせねぇとな!



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