第115話 体調の異変
次の日。起きたのはお昼過ぎになってからだった。
だが眠い。
とにかく眠い。
でも寝不足では無い。
何となくだけれど、分かる。けれど原因は分からない。
「ふわぁ……」
「あら、おはよう…いや、もうおはようって時間じゃないわね」
「おはよー。それはもうどーでもいいよー…」
「……どうしたの?」
「眠い」
「眠いって……結構寝てたわよ?」
「眠い…うーん、ダルい?こう、なんて言うのかな…体が休息を求めてる、みたいな?」
上手く言葉で言い表せないけれど、多分そんな感じだろう。
「……熱でもあるの?ちょっとこっち来なさい」
「はーい…」
マリアが私の額に手を当てる。ちょっと気持ちいいかも……
「……ちょっとだけある、かしら?」
「そう?」
「ええ。でもフィリアは魔力量が多いはずだから、これくらいの熱なら自己治癒力で治ると思うんだけど」
「魔力量が多いと病気になりにくいってこと?」
「そうよ。多いほど体に巡る魔力が多くなって、体が活性化されるから、病気になりにくいのよ。それにフィリアは状態異常耐性持ってるでしょう?だから、ほぼ病気にはかからないはずなんだけど……」
ほぇー。魔力多かったらそういうメリットみたいなのがあったんだ。知らなかった。
……ちなみに状態異常耐性じゃなくて、無効なんだけどね。
「……もしかしたら、病気では無いのかも」
「じゃあなに?」
「うーん、分からないわね、そればっかりは」
聖女のマリアでも分からないか……あ、ステータス見れば分かるんじゃ?
名前:フィリア Lv.8
種族:?%#∀(現在:人間族)
職業:女神の使ゝ*
称号:転生者 神を救いし者 女神の友達 女神の使徒 女神の血縁者 世界を救いし者 殺戮の天使 英雄の娘 ゴブリンキラー 無慈悲なる者 混沌のダンジョン攻略者 ゝΣ●エ₩☆
HP:15600 魔力:134400 防御:15100 魔法抵抗:16500 攻撃:16700 魔法攻撃:17400 速さ:21700
スキル:Lv.10 全言語理解 気配隠蔽 気配察知 光学迷彩 魔力操作 魔力制御 弓術 射撃 空歩 全属性魔法 状態異常無効 刀術 受け流し 縮地
Lv.8 挑発 直感 魔力消費軽減 手加減
Lv.5 思考加速 魔力急速回復 威圧 体術 瞑想
Lv.3 指導
Lv.1 Σ%╬▽=◆
祝福:女神の加護 女神の目 女神の歌声 女神の使徒 無詠唱 魔法行使力大幅強化 武器の申し子 検索 世界地図 スナイパー 種族転化 アイテムボックス
状態:%$◇₩∞
…………なんだこれ。
「文字化け……」
「どうしたの?」
「……ステータスの状態ってとこが、文字化けしてるの」
「文字化け……?なんで?」
「分からないよ、そんなこと」
エルザなら知ってるかも?
ー……知ってるよ。だけど、まだ、時期じゃないー
……そう言えば前にそんなこと言ってたね。時期じゃない、か……それは何時なの?
ー……正直分からない。だけど、私は……ー
私は?
ー……いや、やっぱりいいやー
え?ちょっと!?
「……リア、フィリア!?」
「うわぁ!な、何?」
「何じゃないわよ。呼びかけても返事しないんだもの」
「あぁ…ごめん。ちょっとボーッとしてた」
「熱のせい?寝た方がいいんじゃないの?」
「大丈夫。少し眠くてダルいだけだから」
「……普通はそれが少しでもあったら寝るものだけどね」
「いいのいいの。アッシュは?」
「露骨に話逸らしたわね…アッシュなら外。今頃木剣で素振りしてるわ」
マリアの目線を追いかけて窓から外を見る。確かにアッシュが素振りしていた。
「今日も私が教えたらいいのかな…?」
「うーん…昨日のあれ、かなりハードよね。アッシュを休ませてあげて。それに、フィリアも休まなきゃ」
「大丈夫だって。それより、昨日のこと、話そう?」
「はぁ…具合悪くなったらすぐ寝るのよ」
「はーい」
とりあえずマリアの向かいに座る。するとレミナが飲み物と簡単な食事を持ってきてくれた。
「ありがとう、レミナ」
「いえ。食べれますか?」
「うん。食欲はある」
その時点で風邪とかとはちょっと違うよね。まぁ、文字化けしてる時点で全く違うのは明白なんだけどね…。
「食べながら、聞ける?」
「うん。大丈夫」
「じゃあ話すわね」
とりあえずあの男たち全員に奴隷の首輪はつけさせたようで、今は家の地下室にいるらしい。
「地下室なんてあったんだ……」
「まぁ行く機会は無かったからでしょう。続けるわよ」
昨日私が眠った後、マリアはまた森へと入ったそうだ。リーダー格の男を連れてね。
「1番素直だったのよ。さすがフィリアの魅了ね」
「……褒められてる気がしない」
「褒めてるのよ」
「それはそれで素直に喜べない」
魅了したことを褒められてるってことだからね。
「……ていうか、魅了ってそこまで長く効くの?」
私が魅了眼で見なくなった後は、そう長くもたないはずだ。魅了っていうのは、呪いみたいに持続式ではないから。一定時間で消える。
「うーん…まぁ、フィリアの魅了は強力だから、精神に多少なりとも影響を与えたのでしょう。それで長く効いたんだと思うわ」
「……あれ、それだと今も精神がやられてるんじゃ…?」
マリアが露骨に目を逸らした。やっぱりかぁぁ!!
「はぁー…絶対封印だ、魅了」
「まぁそうしたほうが良いでしょうね……って、話が逸れたわね」
リーダー格の男に案内され、森の調査を行った結果、馬車を発見した。
「あれ?昨日は無かったって……」
「……場所間違ってたのよ」
あぁ……うん。何も言うまい。
馬車はあったが、馬はいなかったようだ。馬だけ切り離して逃げたのだろう。
「中を調べたけど、何もなかったわ」
「まぁ運ぶためとかなら、大きめの麻袋とかあるだけで十分だものね」
「……その考えは毎回どこからくるのかしら。まぁ一般的な人攫いは、そういう類いのものを用意するけどね」
「……私はそれを知っているママがおかしいと思う」
「……色々あるのよ」
「昨日言ったよね?後で終わったらそのこと話してくれるって」
「……確かに言ったわね。はぁ…ほんとに聞くの?」
「もちろん。知りたいから」
ジーッとマリアの目を見つめる。もちろん魅了なしだよ?
「……分かったわ。でもその前に結界張ってくれる?あまり聞かれたくはないから」
「もう張ったよ」
「そ、そう……」
伊達に読心眼もってないよ。…まぁ読めるのは表層心理までだけどね。それに過去を遡って読むことは出来ない。だから聞きたい。マリアの口から。
「……じゃあ、話すとしましょうか」
重々しくマリアが口を開いた。