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第111話 アッシュの特訓パート2

 アッシュが走っている間、暇なので色々と魔法で妨害をさせてもらった。


「ちょっ!?危ねぇ!?」

「大丈夫。死にはしない」

「大丈夫じゃねぇ!」


 うるさいなぁ。ちゃんと死なないように加減してるんだよ?

 ……怪我しないとは言ってない。まぁ死なない限り魔法で治せるんだから大丈夫…うん。


「ほらほらー」

「うわっ!?」


 先を丸めたアイスニードルをアッシュに向けて放つ。

 ……刺さらないとはいえ、当たったらかなり痛いけどね。


「いてっ!」


 案の定当たったらしい。


「大丈夫。打撲までしかいかない」

「それのどこが大丈夫なんだ?!」

「大丈夫大丈夫。ほら、足止まってるよ」


 止まっているアッシュの後ろから、追いかけるように魔法を放つ。


「うぇ!?」


 慌ててアッシュが走り出す。うん。最初からこうすれば良かった。


「フィ、フィリア…?」


 おっと。いつの間にかマリアが戻ってきていた。

 その顔が妙に引き攣っているのは気のせいだ、うん。


「なーに?」

「……はぁ」


 何故にため息?


「……程々にしときなさいよ?」

「分かってる。嫌になられたら困るからね。絶妙なバランスでやるよ」


 そう言うとさらにマリアの顔が引き攣ったような…?

 え、おかしいこと言ったかな?やる気が無くならないよう、飴と鞭をバランス良く使い分けるってことなんだけど…。


「はぁ……というか地味にアッシュを追いかけてる魔法って難しいわよね?」


 私は目を逸らした。


「そ、そんなことない、よ?」

「じゃあ目を見て言いなさい」

「うっ!」

「やっぱりね……ここだからいいものの、あまり人に見せないようにしなさいよ?付きまとわれたくなかったら、ね」

「……はーい」


 マリアが言う付きまとってくる相手というのは……貴族のことだろう。大きく見れば国かもしれない。

 今の私の表向きの立場はかなり曖昧だ。だからこそ、汚い手口で取り込まれかねない。え、なんでそんなことされるかって?


 ………私の血筋が欲しいだけだろう。なんの根拠もないけれど、魔力が多い人から産まれる子供は魔力が多くなるとか考えてるからね。

 ほんと、考えるだけで反吐が出る。人を、道具としてしか見ていないということだからね…。


「フィリア?」

「あ…ううん。なんでもないよ」

「まだ何も言ってないけど……まぁいいわ。それより、アッシュが死にそうだからもう止めてあげて?」


 うん?死にそうって……うん。死にそうだ。比喩じゃないよ。物理的に。


「ご、ごめん!」


 私はアッシュを追尾していた魔法……正確には、火の玉を霧散させた。

 考え事をしていて制御が甘くなったのか、アッシュの後ろギリギリまで迫ってたからね……ガチの火だるまになるところだったよ……。


「はぁ、はぁ、はぁ……し、死ぬかと思った…」


 人って案外死ぬって言っている内は大丈夫とか言うけど…今回は本当に死んでたかもね。


「ごめんね?ちょっと制御が甘くなっちゃった」

「なっちゃったで済ませられないと思うわよ…?」

「う、うん…本当にごめんなさい」


 私はアッシュに土下座する勢いで謝った。

 だって、今のアッシュのステータスでは、私の魔法で簡単にやられちゃうから、ね…。追尾していた火の玉は普通に威力あるやつだったし。


「とりあえず、ご飯できたから食べましょう」


 言われてから空を見上げる。太陽が高い。真上だ。


「うん。アッシュもいくよ」

「ま、まってくれ…う、動けない…」


 まったく……。

 私は動けないアッシュを横抱きにする。所謂お姫様抱っこってやつだ。


「ちょっ!?」

「暴れない。大人しくする」


 子供とはいえかなり重いので、ちゃっかり身体強化して持ち上げている。


「動けないんでしょ?」

「……おう」


 なんかアッシュの顔が心なしか赤くなっている。走って熱いからかな?

 とりあえず大人しくなったので、そのままアッシュを家へと運んだ。







「美味しい!」

「ありがとうございます」


 ぺこりとレミナが座りながらお辞儀をする。今日のお昼はレミナが作ってくれたみたいだ。

 昨日の晩は、実を言うと食べてない。食欲より睡魔が勝ったのだ。なので久しぶりのレミナのご飯だったりする。

 ……まぁ、()()()ご飯ではないのだけれど。


「アッシュはどう?」


 マリアが確かめるようにアッシュに尋ねる。


「うん?普通に美味しいよ」


 マリアの尋ね方を不思議そうにしながらも、アッシュは美味しいと口にする。バレて、ない?


「でも……」

「でも?」

「……ちょっと苦い?かな」


 ビクッ!とアッシュ以外の体が強ばった。しかし、そのことにアッシュが気づいた様子はない。ほ…。


「ま、まぁ苦いのは野菜のせいかしらね」

「そ、そうだね…アッシュ、体調はどう?」

「体調?ちょっと疲れてるけど、普通、かなぁ」


 その反応にほっと胸を撫で下ろす。


「とりあえずこれ食べたらアッシュは寝て」

「え!?」


 いきなりの話題転換に動揺するアッシュ。


「疲れてるでしょ?」

「いや、そうだけど…」

「じゃあ寝て。さすがに午後もあれと同じことやったらアッシュが壊れる」


 まぁ壊れてもいいなら話は別だけど……と付け足すと、アッシュがぶんぶんと頭を縦に振った。そ、それは肯定?え、アッシュ自分が壊れていいの?もしかして、M?


「寝ます!」


 あぁうん……そっちね。



 ………残念だなんて思ってないよ。ホントだよ。







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