第110話 アッシュの特訓
アッシュと一緒に外に出たけれど、正直何をすればいいのやら。
「という訳でステータス見るけどいいね」
「なにがという訳なのかわかんねぇし、返事が了承以外有り得ないみたいな感じなんだが」
「いいね?」
「……あぁ」
なんか不服そうなんだけど、とりあえず了承を貰ったのでステータスを確認する。
名前:アッシュ Lv.13
種族:高位人間
職業:勇者(仮)
称号:勇者になる者
HP:850 魔力:1270 攻撃:980 魔法攻撃:850 防御:850 魔法抵抗:430 速さ:1000
スキル:Lv.5剣術
Lv.3 縮地 雷属性魔法 風属性魔法 火属性魔法 収納魔法 魔力操作 魔力制御 気配隠蔽 気配察知
Lv.1 治癒魔法
祝福:女神の祝福 連戦 指揮 魔法行使力強化 無詠唱
お、おう……私レベルアッシュに負けてるわ…ってそこじゃない。
エルザめ……やっぱりと言うべきか、女神の加護の劣化版があるよ…。
まぁ嬉しいけどね。ちょっと相談くらいして欲しかった。
「……なに?」
私が1人で唸っていたからなのか、アッシュが不安そうな顔で見てきた。
「あぁ。ごめんね。ちょっと考え事してただけだから」
「そう……で、どう?」
「うーん、剣術はレベル高いし、正直ステータス値を上げるってことしか思いつかない」
Lv.5の剣術があれば、そこそこ戦えるからね。
ーそこそこどころか達人の域なんだけど…ー
え、そうなの?てかいつもいきなりだな?
ーだってお姉ちゃん色々と常識外れだし、心配だからー
…私が常識外れなのはまぁ認めるけど、その原因としてはエルザのせいでもあると思うんだけど?
ー………ー
おいこら。黙りするな。ていうかなんで脳内に直接話しかけてるのに、無言が表現できるんだ…。
ーま、まぁそこは、ね?とりあえずガンバ!ー
あ、逃げた!
「はぁ……」
「?」
私がいきなりため息をついたから、アッシュが不思議そうにしている。
「なんでもないよ。とりあえず走り込みしてて」
「……分かった。どこまで?」
「うーん……あ」
私は土魔法でトラックを描くように棒を立てる。
「うわっ!」
「この棒の外側を走って。そうだなぁ……ひとまず5周」
「5周ってかなり……」
「はい、走る」
「いてっ!だから蹴るな!」
アッシュが渋々走り出したのをみて、私は後ろへと振り返った。
「ママ」
「……バレてたのね」
気配隠蔽をかけているのは分かったけど、私から隠れることはできない。ちなみにアッシュは気づいてない。気配隠蔽は短時間なら姿が消えたように錯覚させることができるからね。
「たまたまだよ」
「たまたまって……まぁいいわ。それで、私に話しかけたってことは、何かあるの?」
「うん。ちょっとね」
私はマリアにあるものを用意するように頼んだ。
「……なんで知ってるのよ」
「たまたまだよ」
「あのねぇ。たまたまっていう言い訳、2度は通じないのよ?」
「……たまたまだよ」
そう言うしかない。だってマリアの収納を覗いたなんて言える訳ないもの……
「………はぁ。分かったわ」
結局追求するのは諦めてくれたようだ。良かった良かった…。
「お願いね」
「やるけどね…もしなにかあった時はなんとかしてよ?」
「分かってるよ」
マリアに頼んだのはかなり危険なことだ。まぁ、アッシュが危なくなるなんて、私がいたら万に1つもないだろうけどね。
「はぁはぁ……終わった、よ…」
マリアが準備に向かう為この場を離れたタイミングで、息を切らしてアッシュが戻ってきた。これくらいでへばるなんて今のシリルよりも体力ないよ?
ーそれはお姉ちゃんが……いや、なんでもないー
エルザの言葉は無視する。私は悪くない。うん、悪くない。
………シリルが毎日死にかけてたけど、気のせいだ。
「はいじゃあ次は……」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ…すこし、休憩…」
「させない」
バッサリと切り捨てる。人間追い詰められたほうが案外伸びるんだから。
(お、鬼だ……)
あ、そういう表現こっちにもあるのね。
「鬼で結構」
「またっ!」
「はい。簡単に読めるから変なこと考えないようにね」
(早まったかも……)
だから読めると……
「じゃあ木剣で打ち合おうか」
「……分かったよ」
素直でよろしい。
私はアッシュに木剣を手渡して、しばらく打ち合う。アッシュの癖を見るためだ。
うーん……しばらく打ち合って分かったけど、アッシュは右ばかりを攻める癖があるみたい。それを指摘すると初めて気がついたみたいだから、癖で間違いないだろう。
「癖はそう簡単に治らないよね…」
「なん、で、そん、なに、余裕なんだ、よ!」
アッシュが振り下ろしてきた木剣を受け流す。体力が無いのもあるだろうけど、なんというか、戦略がないよね。ただ振ってるだけ。多分、自分の力に振り回されているんだろう。
「そうなるとやっぱりステータス値を上げないとね」
「はぁはぁはぁ……」
「……だらしない」
(ば、バケモンだ…)
そんなことを心に思ったようなので、地面に寝転がったアッシュの横腹を蹴った。一応手加減はして、ね。
「いてぇ…」
「バケモンとか考えるからだよ。はい。少し休んだらまた走る!」
「うげぇ…」
渋々アッシュがまた走り出した。さて。後でマリアに用意してもらったものを使うかな。




