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第107話 え、気づいてなかったの私だけ?

「まったく…あの子はなんで気づかないのよ」


 アッシュがフィリアを異性としてみている、ということには気づいていた。

 だからこそ、アッシュはフィリアが養子であり、実の姉ではないことを何度も強調していたのよねぇ……


「フィリア様、何をしようとしているんです?」

「あれは…多分模擬戦ね」


 フィリアがなんでそんな行動にでたのか、それは多分、アッシュが自分を姉と認められないのは、実力をみてないからだ…みたいなとこね。

 はぁ……あの脳筋的思考回路はロビンそっくりね。


「だ、大丈夫なんですか?いくらフィリア様が年上といっても、アッシュ様は男の子ですよ?それに身長もそこまで変わらないみたいですし…」


 あー、うん。身長はねぇ…。でも、フィリアはもう既に私やロビンよりも強いはず。だから、心配はないんだけど……


「心配はないわ。それよりアッシュよ…」

「あぁ……フィリア様を異性として見てしまっていた以上、これからの関係がどうなるか…」


 それが問題なのよ…失恋とはまた違うものね…


「あ、始まるみたいですよ」


 ーーーーーーー


「や、やるって…」

「大丈夫だから、ほら構えて」


 渋々と言った様子でアッシュが木剣を拾い、構える。


「そっちからどうぞ」

「……分かった」


 するとアッシュの姿が掻き消え、次の瞬間に目の前に現れた。ふむ。縮地スキルか。


「でも遅いね」

「なっ!?」


 私の胴体を横から狙ったみたいだけど、遅い。重みもない。簡単に受け止められる。こんなもの?


 ーそれはお姉ちゃんだからだよ……アッシュは普通に強いよ?ー


 あ、そうなの。

 とりあえず木剣を押し返す。


「くっ!」


 するとアッシュが少し後ろへ跳んで間合いを取る。動きはいいね。次は私!


 ーーーーーーー


「凄いですね…アッシュ様の剣をああも簡単に…」


 まぁ当然よね。アッシュの剣は荒さが目立つ。対してフィリアの剣は正確で、無駄が少ない。それだけで、明確な実力差があるのが分かる。

 しかもこれに魔法が加われば……恐ろしいわね。


「まだこれでフィリアは本気じゃないのよね…」

「えぇ!?」


 確かに驚くわよね…だって勇者の称号を持つアッシュが押されてるんだから。

 でも、アッシュもやられっぱなしではなく、剣を押し返し、なんとかフィリアに間合いを取らせた……いや、あれはフィリアがわざとやったのね。おそらく、アッシュの攻めの動きを見るために。

 その考えは合っていたのか、フィリアはその場から動かなくなった。


 ーーーーーーー


「こないの?」


 目の前で可愛く小首を傾げる女の子。前まで血が繋がってないと思っていて、今日実は本当の姉だと分かった人物。

 今でも信じられない。だって母さんにも、父さんにも似ていない…いや、よく見れば似てるけど、言われなかったら今でも分からなかっただろう。

 ……でも、1回打ち合っただけで、確信できた。


 強い。まったく隙がない。英雄の子どもであるということを、否応なしに認めざるを得ないほどに。


「ねぇ?」

「…っ!」


 足が、竦む。感覚で分かる。勝てっこない。


「……降参、する」

「え?もう?」


 その瞬間、辺りに張り詰めていた空気が霧散した。体が軽くなったと思ったら、意識が薄れて…


 ーーーーーーー


「え、ちょ!?」


 アッシュが降参すると言ってから、バタンと倒れてしまった。

 …最後に魔力を乗せて言葉を発したからかな…?でもそこまで強くないんだけど……


「アッシュ!?」


 後ろからマリアが駆けてきた。とりあえず私もアッシュのもとへ。


「何したの?」

「なにもしてないよ…ちょっと魔力は流したけど」


 威圧的な意味で魔力を少しだけ解放した以外はなにもしてない!…はず!


「ちょっとって……はぁ。それが原因ね」

「えぇ……ほんとにちょっとだよ?」

「あなたのちょっとは当てにならないのよ」


 えぇ……ものすごく不本意なんだけど。


「レミナ。アッシュをお願い。寝かせれば良くなるから」

「分かりました」


 レミナがアッシュをお姫様抱っこして、家へと連れていった。

 私もその後を……ぐえっ。


「逃がさないわよ?」


 私の首根っこをマリアに掴まれた。

 な、なんで!?私今回なにも悪いことしてないよね!?


「別に怒る訳じゃないから。ちょっと話を、ね?」


 怒る訳じゃないって?話ってなによ?!

 私はそのままマリアに引きずられ家に着くまで、戦々恐々としていたのだった……







「……………」


 家でマリアから聞かされた話は、ちょっと信じられなかった。アッシュが、私を異性として見ていたって…?


「なんで?」

「なんでって…血が繋がってないと思っていたからよ」

「いやそっちは分かるんだけど…」


 なんで私なんかを好きになる?


「……まぁ、あなたらしいわね」

「なにが!?」

「なんでもないわよ」


 絶対なんかあるでしょ!


「それより、アッシュのとこでも行ってきなさい」

「えぇ!?」

「えぇじゃない。お姉ちゃんでしょうが」


 いやまぁそうだけどさぁ?いまさっきアッシュが私のことを恋愛対象としていたって聞かされて、会いに行くって…ものすっご〜く気まずいんですけど!?


「アッシュは眠ってるみたいだから大丈夫よ」

「……まぁそれなら」


 という訳でアッシュの部屋へ。


「すー…」


 ベットで気持ちよさそうに眠るアッシュ。怪我とかは…ないかな。

 一応念の為に治癒魔法は掛けておく。


「まさかねぇ……うん?」


 アッシュが私のことを異性として見ていたってことは……姉とは思っていなかったってこと?

 うわぁ…それ結構傷つくなぁ…


「身長欲しい……」


 より一層その願いが強まったのであった…。




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