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第105話 村へ帰る

「やだよぉー…」

「大丈夫よフィリア。私も協力するから、ね?」

「うぅー…」


 ただいま絶賛駄々こね中のフィリアでございます。

 なんでこんなに私が駄々をこねているのかというと……学園もないし、ダンジョンも問題なかったし、マルティエナさんの国に行くにはまだ時間がかかるし、ということで、私が生まれ育った村に帰ることになったからである。昨日それを言われたのだ。

 いやまぁむっちゃ久しぶりに帰るんだけどさぁ。帰るってことは必然的にアッシュと会うことになるってことで……


「まだ心の準備がぁ〜…」

「心の準備もなにもないでしょう。実の弟に会うだけでしょう?」

「だけどぉ…」


 私は馬車で帰ると思ったんだ。だからちょっとは心の準備が出来ると思ったんだよ……よくよく考えたら、転移で帰れるじゃんね。一瞬で。

 はぁ………覚悟を決めよう。


「……分かった」

「よろしい。それじゃあ、ベルちゃんを呼んできて?」

「はーい」


 別の部屋で待ってもらっていたベルを呼ぶ。ベルもついでに帰ることになったのだ。でも私が駄々をこねたので、ちょっと待ってもらっていた。いやほんと情けないです……


「ベルー。帰るよー」

「うん。やっと決心したの?」

「うっ!…ごめんね、待たせちゃって」

「いいよ別に。でもなんで帰りたくないの?」

「それは……」


 言えない。

 ベルならいいかなとも思ったりしたけど、それでも、ね。


「…ちょっと色々と」

「ふーん。まぁいいや。早くいこ?」

「うん」


 ベルと一緒にマリアのもとへ。ロビンは後で合流する予定だ。折れてしまった聖剣を直すらしい。……直るのか?あれ。

 まぁ直らなかったら、私が作り直すけど。意外と簡単らしいのよね。


「来たわね。じゃあ帰りましょうか。フィリアは補助してね」

「分かった」


 大した距離ではないけど、できる限り負担を減らすためマリアの補助にまわる。

 ベル、マリアと手を繋ぎ、マリアが転移魔法を発動する。その制御を補助し、魔力消費も抑える。


「じゃあ行くわよ」


 その言葉と共に、グニャリと視界が歪む。相変わらずこの感覚は慣れない…







 そして閉じていた瞼を開くと、とても久しぶりの光景が眼前に広がっていた。


「うわぁー!ほんとに帰ってきちゃった!」


 ベルが驚きを露わにする。確かにベルはテスト勉強とかでなかなか帰れなかったからね。かなり久しぶりだろう。私もだけどね。


「ベルちゃんはここから帰れる?」


 私たちが今いる場所は、村の入口だ。そこまでベルの家は遠くない。


「はい。大丈夫です!」

「そう。じゃあまた」

「またね」

「うん。バイバイ!」


 手を振ってベルが去っていった。


「はぁぁ……」


 そしてベルの姿が見えなくなったところで、私は大きくため息を吐く。


「大丈夫だから」

「……そもそも私に帰ってくるなって言ったのママじゃなかったっけ?」


 そう、確か私の記憶が正しければ、帰ってこないほうがいいって言ったのはマリアだったはずだ。


「さぁ!帰りましょう!」


 あ!誤魔化した!

 マリアに強引に引きずられる形で、私は家へと帰った。










「ただいまー。アッシュ、レミナ」


 家に入るなり、すぐマリアが叫ぶ。そう言えばレミナと会うのも久しぶりだ。


 マリアが叫んでちょっとすると、パタパタと走る音が聞こえた。この気配は……


「お帰りなさいませ……フィリア様!?」


 あぁ。やっぱりレミナだった。


「ただいま、レミナ」

「は、はい。お帰りなさいませ!」


 レミナはとっても嬉しそうだ。やっぱりもうちょっと帰ってきたほうが良かったのかな…


「アッシュは?」

「今は確か……」


 レミナが言う前にドタドタと走る音が聞こえた。この家には今2人しか居ないはずだ。……つまり、


「お母さん!お帰り!」


 満面の笑みで出迎えたのは、アッシュだった。久しぶりに見る姿だけど、少しだけ男の子っぽく体が出来上がってるように見える。


「ただいま、アッシュ。いい子にしてた?」

「うん!ちゃんと勉強してたよ」

「そう、いい子ね」


 マリアに頭を撫でられて、嬉しそうな顔をするアッシュ。私にもいつもこの顔を見せてくれたらいいのに……


「あれ?フィリア様は?」


 レミナが気づいたようだ。私は今光学迷彩で姿を隠している。気配隠蔽も完璧にしているので、たとえマリアでも私を見つけることはできない。


「まったく……」


 マリアが呆れた顔をする。ほんとごめん。でもまだ無理。

 アッシュはレミナの言葉を聞いて顔を顰めた。そ、そこまでか……


「…"あれ"がいるの?」


 あれ呼ばわりですかぁ……悲しいな。


「あれ、が何か分からないけど、フィリアならいるわよ。今はちょっと居ないけど、帰ってきてるわ」


 マリアがちょっと怒ってる。たとえ自分の子供だったとしても、言葉遣いが気に触ったのだろう。

 ……アッシュはそれに気づいていないけど。ちょっと鈍感じゃないかい?


「そう…」

「アッシュ、ちょっと話があるのだけれど、いい?」


 どうやら私がいない状態で、私のことを明かすらしい。

 前までの計画ならば、アッシュが10歳になったころ明かすつもりだったんだけど、7歳でもしっかりしてるし、大丈夫だと判断したらしい。


「なに?」

「ここじゃなくて、座ってゆっくりと話しましょうか。レミナ、お茶を用意してくれる?」

「は、はい…えぇっと、何人分でしょうか?」

()()2人分。レミナも飲みたいのなら、用意していいわよ」

「お気遣いありがとうございます。では」


 レミナがお辞儀をして去っていった。

 そしてマリアはアッシュと共にテーブルへ。私もそのまま隠れてついて行く。

 いよいよかぁ………アッシュは話を聞いて、私の事をどう思うだろうか?






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