第102話 戻ってきた"当たり前"
章の高等部を前後編にする予定だったのに……どうしよう。ちょっと長くし過ぎた……
「ふわぁ…」
ふかふかのベットで目が覚める。見慣れた天井が目に入る。
「終わったんだよね…」
私はガバッとベットから飛び起き、一目散にある部屋へと向かった。
「すー…」
「…寝てる」
私が向かった部屋、それはベルの部屋だ。
部屋に入ると、ベルがぐっすりとベットで寝ていた。
ずっと見たかった光景。
「ふふっ。よく眠ってるね」
私はベルの寝顔を見つめる。大丈夫そうだったけど、実は体や精神は疲れていたんだろうね。
しばらく見つめていると、いきなりベルが目をパチッと開けて眠りから覚めた。
「……うん?」
寝起きのベルと目が合う。
「おはよう」
「おはよう……なんでフィリアちゃんがいるの?」
まぁそう思うよね。
「ちょっとベルの寝顔が見たくて」
「えぇ!?ちょ、恥ずかしいからやめてよ!」
バッと恥ずかしそうに布団で顔を隠す。
「ごめんごめん。でも、そろそろ起きないと学園遅れるよ?」
「えぇ!?早く言ってよ!」
バタバタとベルが急いで準備をする。
私?もう出来てるよ。
学園にいくのは、今回の説明をするため。
一応具合が悪ければ後日でもいいらしい。
ちなみにマリア達は既に学園に行っている。今回の騒動をどう説明するか決めるためだ。
「できた!」
「じゃあ食べてから行こっか」
「うん!」
下に降りて朝ごはんを食べ、いつもの乗り合い馬車に乗り込む。
「おえぇー……」
そしていつものように酔う。ほんとなんでだろう…
「大丈夫?」
「……うん」
学園に行ってみると、人はほとんどいなかった。まぁ学園ないもんね。
いつもの教室へと向かう。もちろんベルと。
「おはようですわ!」
教室に入ると、あまり時間は経っていないはずなのに、とても久しぶりに聞いたように感じる声がした。
その声の主はもちろん……キャサリンだ。
「…おはよう」
「おはよう!」
ちょっと目頭が熱くなってしまう。いけないいけない。
「どうしたのですか?フィリアさん」
「……ううん。なんでもないよ」
いつもの席に3人で座る。やっぱりこれがいいね。
当たり前だと思っていて、そんな当たり前なんてほんとは何一つないんだよね。
今回のことでよく分かった。
この一瞬一瞬が、かけがえのないものなんだよね。
「でも不思議ですわ」
「なにが?」
「ベルさんとダンジョンに潜って、いつの間にか眠っていて、目が覚めたら六大英雄の皆さんがいて……」
あー…確かにそうかも。
「それを説明してくれるんじゃない?」
「そうなんでしょうけど……それより!」
ビシッと私を指さすキャサリン。なに?
「なんでフィリアさんは六大英雄の皆さんと居たんです!?」
あぁ、そこね。
「あー…色々あったのよ」
「その色々が知りたいのです!」
そう言われても…
というか教室に人が少ないのにキャサリンが大声出すもんだから、人の目が集まってしまっている。
「それは当たり前じゃない?だってー…」
「ベル、ストップ!」
ベルは私がマリアとロビンの娘とは知らない。でも、養子であることは知ってる。それを言おうとしたんだろう。
確かに表向きは養子だし、言っても問題はないんだけどね……。
でもさ。キャサリンに聞かれるのは……
「なに?なんですの?」
「なんでもないよ」
「もごもご…」
ベルは私から逃げようとするけど、逃げられるわけが無い。
でもそろそろ息苦しいだろうから離してあげる。
「ぷはぁ!はぁはぁ…」
「(キャサリンに言ったら大変そうだから内緒にして)」
「あ…うん、わかった」
何が大変なのかベルも理解したようだ。やれやれ…
「はーい。みんないる?」
リーナが教室に入ってきた。
「集まってもらったのは、あなた達がなんであんな場所にいたかを説明するためよ。体調は大丈夫かしら?」
リーナがみんなを見回す。みんなはとりあえず頷く。大丈夫そうだね。
「なんであんな場所に居たのか、だけど……ダンジョンの異常だったの」
ザワザワと教室が騒がしくなる。
なるほど。嘘ではない。重要な部分を省いているだけでね。
「あそこに捕らわれていて、みんなは行方不明扱いになっていたのよ」
それで納得したような顔をする人が少し。
おそらく帰ってきたら親が心配していて、その理由が分からなかったんだろうね。
「あの、これからどうなるんです?」
「とりあえず学園は休みね。ダンジョン調査と原因の調査が終わってから再開予定ではあるけど……どうなるかは分からないわ」
原因、ねぇ。
「とりあえず今日はここまで。質問は……ないね。じゃあ解散!」
質問…と、いうか、状況を飲み込めてないから質問できないんだよね。
「フィリアさんはなにか知っていますの?」
「うーん?知らない」
おそらくリーナ…いや、六大英雄みんなが何かを隠している。だから知らない。
「あ、フィリアちゃん。ちょっとこっちへ」
「うん?分かった。じゃあまたね」
「分かりましたわ」
「じゃあね」
ベル達と別れ、私はリーナについて行った。
「…あのね、フィリアちゃん」
「なに?」
「……マルティエナを責めないであげてね」
「……」
なんとなく、この後どんな話をするのかわかった気がする。