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転移から王城を出るまで

 気がつくと僕は見知らぬ広い場所に横たわっていた。

 眠った覚えもないし、意識が途切れた記憶もない。

 それでも他に表現する言葉が見つからなかった。


 周りには甲冑姿が十数人、そして玉座らしき場所に

 王らしき人。

 冠に長い髭、厚手の赤いマントに豪奢な杖。

 うん、王様に間違いない。

 そして王の横に立つのは、宰相とか軍師の類だろうか?

 まさしくマンガでみたテンプレ、魔王を倒せとか言われるのだろうか。少し気分が高揚してくる。


 そんなことを考えていると、話しかけられた。

「お主がこの世界の救世主となるものか?」

 ややしわがれているもののよく通る、精悍な印象も残す威厳のある声だ。

 やはりそのパターンか。

 しかし高校生が救世主とかどう考えてもありえない。

 言葉に詰まっていると、王は話を続けた。

「余はこのリーブラル王国国王、ニルス・ゼフィール・リーブラルである。お主を異世界から呼び出させたものだ。」


「早速本題に入るが、お主には魔王を倒してもらいたい。その理由というのが、我が国と魔族は現在戦争……であって…………になる故……………………領土の…………」

 テンプレ過ぎる展開に心が冷めていく。

 しかしこの王、話が長い。軽く30分は喋っているのに終わりそうにない。

「………………の為魔王を討伐して貰いたいのだ!何か分からぬことはあるか?」

 しまった、大半聞いてなかったぞ、魔族と戦争してるから魔王を倒せって事しか覚えてない。

 まぁどうせ内容もテンプレだろう。

「では、ご質問させていただきます。

  この国は現在魔族と戦争中であり、魔族がこの国を脅かした。

  死傷者も多数出ており、国力の低下が著しい為魔王を倒したい。

  しかしこの国には魔王に対抗できる戦力がないので私を呼び出した。

  で、間違いないでしょうか?」

 そう聞くと、王は頷き

「うむ、相違ない。」

 と、さも当然のようにに述べた。

 三行で説明できるじゃないか、時間を返せ。

「ではもうひとつお伺い致します。

  何故魔王を倒すのでしょうか?」

 王様は心底呆れた顔を隠しもせず、こちらを見据えて話す。

「境界等の小競り合いで勝利しても、次が来るからだ。我が軍の疲弊も少ないものでは無いだろう。だからお主には諸悪の根源である魔王を討ってもらいたいのだ。褒美は思いのままぞ?」

 言質が取れた。

「ありがとうございます。では王様、少し私の話をしても良ろしいでしょうか?」

「ほぉ……良かろう、話してみよ。」

 あっさりと許可が出た。

「ではお話します。

  私は生まれてから今までの十余年、裕福ではありませんが貧することなく、不自由のない暮らしをしてきました。

  特に賢いという事もありませんが十年以上の期間の教育も受けさせて貰っています。

  私の生まれた国は法治国家の為、治安が良く、命が危機にさらされることなどは稀であり、皆が自分にはそんなことは起きないと信じております。

  しかし私はある日突然誘拐されてしまいます。

  さらわれた先は見知らぬ土地、どうやら常識も違う。

  十年間受けた教育が役に立たなくなる上に知り合いもおらず不自由な身の上になりました。

  しかも犯人は私に命をかけた危険な仕事をしろと言うのです。」

 ここまで話して喉が張り付く感覚がする。

 周りの甲冑姿もざわついているようだ。

 王は先程までの呆れた顔ではなく鋭くこちらを睨み、甲冑姿を右手を上げて鎮め、低い声をより一層声を低くして言った。

「何が言いたい。」

 威圧的なその声に心臓が早鐘を打つ。

 声が振るえないよう一言一言を意識して続きを話す。

「王様、この犯人は私の平和な生活を脅かしました。

  私は誰を討てば良いのでしょう?」

 最後まで聞き終わると王は隣に立つ男に耳打ちをし、その男は立ち去った。

 数分の後、男はローブのような物をまとった男女を三人連れて戻り、鼻にかかった声で言い放つ。

「この者たちがそなたをこちらに呼び出した宮廷魔術師である。

  故にこの者たちを斬首とする。

  そなたもそれで満足であろう。」

 ローブの男女が慌てふためく。

 先程言質を取られたというのに王も宰相も気づかないのだろうか。

「いいえ王様、話が違います。」

 王は理解出来ぬと言った顔でこちらを見ている。

「ではなんとする」

 返答を待つ王に最後の言葉を紡ぐ。

 もしかしたら最期かもしれない。

「王様は先程、小競り合いで勝利しても次が来るだけだと仰いました。その為諸悪の根源である魔王を討てと。

  そして最初にこうも言いました。余がお主を異世界から呼び出させた、と」

 言い終わると

 王、宰相、甲冑姿、ローブの男女までもが静まり返った。


 一分、一時間、もしかしたら一瞬だったのかもしれない。

 最初に声を上げたのは宰相だった。

「ーーぶ、ぶ、無礼であるぞ!王が許していたから礼儀作法には何も言わなかったが、言うに事欠いてそなたは我が王の首を差し出せというのか!それも、あの忌々しい魔王などと同列に扱うような発言、許容できぬぞ!その者を捕らえよ!さらし首にしてくれるわ!」

 周りの甲冑姿が僕を取り囲んだ。

 その時

「良い!」

 王が最小よりも大きな声を上げた。

「し、しかし」

 納得の行かない様子の宰相

「余が良いと言っておるのだ、黙らぬか!」

 王の一喝に宰相は小さくなり、甲冑姿は王に向き直り跪く。

「この老骨の首で良いのならいくらでも差し出そうーー。と言いたいところだが、余はこの国の王であり、国と民を守る義務がある。この首をやるわけにはいかん。

  しかし、お主の言うことも間違ってはおらぬ。

  元の場所に戻してやることは出来ぬが、この国ではお主の自由を王家が保証しよう。」

 そう言うと王は玉座を立ち、僕の前まで歩み寄り頭を下げ、

「お主にはすまぬ事をした。」

 そう言うと玉座に戻った。

 宰相は何かブツブツ言っている。

 さしずめ、王が頭を下げるなどと!みたいな事だろう。


 そうして僕は王から晴れて自由を貰い、幾ばくかの生活費を渡され見送られた。

 自由って、ほっぽり出して終わりってこと……ないよね?

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