第96話 転魂前その2 (レティ視点2)
「大丈夫! 一緒にお父さんを助けてこのループの謎を解明しよう!
だから一緒に旅に出ようよ!!」
レティを助けた紗良がそう言って手をとってくれた時、自然と涙がこぼれた。
紗良はレティを助けると、なぜ死なせてくれなかったと八つ当たりして泣くレティを慰めてくれた。そして、黙ってレティの話を聞いてくれて、ループしているという説明をすんなり受け入れて、一緒に旅に出ようと誘ってくれたのだ。
その姿が、どこか異世界の少女を彷彿とさせた。
あの子もどんなに冷たくしても、八つ当たりしても優しくて、一緒に解決しようと励まし助けてくれた。
だから差し伸べてくれた彼女の手をとった。
今世こそは、マリエッテに縛られず、父を救い、幸せに生きようと。
そしてこの負の連鎖に立ち向かおうと。
学園を正式にやめて、紗良と合流し旅にでる予定だった。
けれど―――。
「この女が毒をもったのです!!!!」
第三王妃の従者の一人がレティを指さした。
学園をやめるために最後にでた貴族の舞踏会で、レティは固まった。
レティが渡したワインを飲んだ第三王妃が血を吐いて倒れたのだ。
皆が見守る中、レティが渡したワインを飲んだ第三王妃が血を吐いて倒れた。
誰がどう見てもレティが殺したとしか見えない状況で舞踏会の会場の視線が一斉にレティに集まる。
「ワインをあの令嬢に渡す前に鑑定したワインには毒はありませんでした!鑑定人が二人鑑定したので間違いありません!!!」
給仕の言葉に衛兵たちが一斉にレティを取り囲んだ。
固まったまま、倒れた王妃から視線をマリエッテに映すと彼女は冷たい目でレティの事を見ていた。
(――ああ、やっぱり彼女からは逃れられないのですね)
マリエッテから逃れ国境の関所を通るための証明書をもらうために、レティは第三王妃側に寝返った。マリエッテの取り巻きのひとりを自分側に寝返らせたと広めるため、そしてその忠誠の証として舞踏会で第三王妃に付き従った。
その一環として渡したワインに毒がもられていたのだ。
おそらく、マリエッテが何らかの形で給仕からレティが第三王妃にワインを渡すまでの間に毒を仕込んだのだろう。
結局、ループしても私は逆らえない。
勇気を振り絞って、マリエッテのそばを離れ、敵対する第三王妃側についたはずだったのに、それをマリエッテに逆に利用されてしまった。
彼女は自分の考えなどとっくに見通していたのかもしれない。彼女は策士だ逆らえない。
このまま第三王妃を殺した罪でレティは父とともにまた裁かれ殺される――。
王族に逆らったのだ。
領地の父もただではすまないだろう。
(私が彼女に逆らおうとするなんて愚かな事。敵うはずなんてなかったのに……)
倒れた王妃とレティを取り囲む衛兵とで混乱する現場をレティはただ他人事のように見ていた。結局何も変わらない、罪状がかわり死期がはやまっただけにすぎない。
「さぁ、同行願おうか!!レティシャ・エル・センテンシア!!」
衛兵の一人がレティを取り押さえようとした瞬間。
「お待ちください!!彼女は犯人ではありません!!!!」
会場内に男性の声が響き渡る。
そしてレティを拘束しようとした衛兵を遮って、まるでレティを守るかのように長い黒髪の貴族が割って入った。
「……え?」
思いがけない展開にレティが思わず自分を守った男性貴族の顔を見つめると、彼はウィンクして微笑んだ。
その笑顔が、黒髪の異世界人紗良と重なる。
――もしかして紗良?――
レティが呆然と彼を見つめると、彼は衛兵にくるりと向き直り
「彼女は毒を盛った犯人ではありません」
そう言って黒髪の貴族は会場に響き渡るように大きな声で叫んだ。
「な、何を言ってるんだ貴様は!!どうみてもその少女しか犯人はいないだろう!?」
衛兵が黒髪の貴族に手を伸ばすが彼は簡単に払いのけて、笑みを浮かべた。
「あなたこそ何を言っているのですか?現場が雄弁に語っているではありませんか。
毒を盛った犯人は別にいると。いまそれを証明してみせましょう!!!」
そう言って微笑む貴族の男性の笑みは、顔立ちは全然違うはずなのに「マリエッテにざまぁしてあげるから!!」と力強く微笑んで慰めてくれた紗良が浮かべた笑顔そのままだった。
レティ視点終了です!
紗良視点はざまぁパート中心(´・ω・`)ざまぁ♪ざまぁ♪
その前にメリルさん(最初にゲーム世界に召喚されたとき紗良を保護してくれた人(ゲームではヒロインを保護する激強魔法使い))視点ですー!!
書籍の書影発表時、書籍の詳細と更新再開いたしますー!!
お付き合いいただけると嬉しいですっ
宜しくお願いいたします!!











