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第95話 転魂前その1 (レティ視点1)

「大丈夫! 一緒にお父さんを助けてこのループの謎を解明しよう!」


 そう言って手を差し出してくれたのは異世界から来た女性だった。

 なぜか今までのループでは必ず現れ学園に入学してきた異世界の少女クミとは別の女性が今世ではレティの前に現れたのだ。

 黒髪で笑顔が人懐っこい年上の女性紗良。


 50回以上のループ。

 いつもなら断罪直前にループを思い出すのに今度はなぜか魔術学園に入学し、一年たったころ記憶を思い出した。

 今度こそは道を間違えないように、入学してくるはずの異世界の少女と仲良くなろう。そしてマリエッテから彼女を守ろうと誓っていたのに、なぜか異世界の少女が入学してくる歳の入学式に彼女の姿はなかった。


 そう――今世では異世界の少女「クミ」は存在そのものがなくなっていた。


 やはり自分は断罪されるループから逃れられない。

 学園から逃げ出して平民として暮らすことも考えた。けれど貴族令嬢のレティに平民として暮らしていく知識もなく、マリエッテにすがってしまったため、すべてを握られ、他国に逃げるための身分証明書すらない事に気が付く。

 身元を保証するものがなければ、この国からでることは叶わない。

 そして平民として職につくのすら難しいだろう。

 周りに相談しようにも、誰がマリエッテの息のかかったものかすらわからない。

 下手に相談してしまうと、マリエッテの事だレティの邪魔だけではなくレティを助けようとしたものまで貶めようとしてくるだろう。


 彼女は狡猾でいて残忍だ。もうすでにマリエッテの監視下に入ってしまったレティには彼女を欺くのは難しい。


(結局未来を知ったところで私は何もできない)


 ずっと手を差し伸べてくれたマリエッテのことを尊敬していた。

 慈悲深く優しい女性だと勘違いし、崇拝に近い形で彼女のためにつくした。

 マリエッテを慕うレティを彼女が心の底から嫌っていたことも知らないで。


 だからこそ、ループ前に元凶がマリエッテだったと彼女に告げられた時の絶望感は言葉では言い表せない。そしてその事実を知った今でもレティは彼女に逆らう力も術ももたない。


(未来を知ったところで何になるのかしら?)


 マリエッテがレティを嫌悪している限り、どうあがいてもレティの断罪される未来はかえられない。


(結局私には何も出来ないんだ)


 レティはどうしていいのかわからなくて、本来なら授業の時間にふらふらと街中を歩いていた。


(はじめて授業をさぼってしまいました……どうしたらいい?)


 マリエッテに貶められて死ぬくらいなら今ここで自らの手で命を絶ったほうがいいのかもしれない。


 そんな誘惑が頭をかすめる。今自らの手で死ぬことで忌まわしきループから抜け出せる可能性もある。――そうだ、自分が命を絶てばマリエッテもきっと自ら手をくだせなかったことを悔やむだろう。マリエッテにとってはレティ自らが死ぬことなど些細な事にすぎない、自分で手をくだせなかっただけだ。それでも、少しばかり悔しがらせる事はできる。レティにはこれくらいしか反撃の術がない。


 目的もなく歩くと街はずれの橋の上からぼんやりと下を覗き込む。

 かなり下の方に細い線のように水が流れる川が見えた。

 5階建ての学校の校舎の屋上から見る景色よりもさらに高い。


(ここなら死ねる――?)


 乾期のためほとんど水のない川は砂利と草草が生えているだけで飛び降りた場合、地面に衝突して終わりだろう。即死を免れたとしても、どうせ誰も気づかない。


 橋の下をぼんやりと見下ろす。



「レティシャ・エル・センテンシア。国家反逆罪および、第二王子暗殺未遂の罪で貴様を処罰する」


 ゲオルグ王子の言葉が頭に響く。何度も何度も繰り返されたその言葉。

 毅然と反論しようとも、泣いて命乞いをしようとも――結局未来は変わらず断頭台で父と一緒に処刑される。


 少なくとも今レティが死ねば父カルロは助かるかもしれない。


 無実の罪をきせ断頭台で父と一緒に殺したのもレティの絶望する顔を見たかったマリエッテの仕業に違いないのだから。レティが死ねば父カルロの事など、マリエッテは覚えてもいないだろう。そうだ、自分が死ねば父は助かる。


 優しかったころの父の顔を思い浮かべようとするけれど、もう父の顔すら思い出せない事実にレティは苦笑いを浮かべた。

 思い出させるのは断罪され処刑台で何度も殺される痩せこけた父の姿だけ。

 自分はもう幸せだったころの記憶すらない事実に、自然と涙がこぼれた。


 ――もう疲れた――


 すっと橋の柵を乗り越える。


 もし、これが神が憐れんで与えてくれたチャンスだというのなら――次目覚める事がない事を。生きていたいなんて望まない。どうかもう二度とよみがえることなく死なせてください。


 そう願いながら――身を乗り出し体が宙に浮いたその途端。



「何やってるの!??ダメっ!!!!!」


 その言葉とともにレティに抱き着いてきた女性――それが紗良だった。

 彼女は飛び降りたレティをそのまま抱きしめて、自らも地面に落下した。


 レティが気づいたときにはどうしようも出来なくて、死を覚悟した瞬間。


『マジックボックスオープン!!!!』


 彼女の叫びとともに、巨大な穴が地面にぽっかり開き、レティと紗良の身体に結界が張られ、巨大な穴が二人を拒むように突風をはなち体が宙を浮き、地面との衝突するのを免れる。


「……え?」


「よかったー!目論見通り★マジックボックスに入るのを拒まれるとき貼られる結界を利用しちゃえば無敵作戦成功!!」


 宙に浮いたまま、彼女はそう言って笑った。

 それが紗良との出会いだった。


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 コミカライズも二巻まで発売しております!!そちらも何卒何卒よろしくお願いいたします!!


 書籍化にともない逆行前の紗良とレティの出会い編をスタートいたしました!

 まだ紗良視点が全部書ききっていないので書きあがり次第更新していきます><

 何卒よろしくお願いいたしますー!!

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