第94話 おまけ 紗良とルヴァイス様(+ハムちゃん)
「神様、結婚式は身内だけで質素にやるつもりだったんですけど、なんですかこれ!???」
何故かセンテンシア領の広場にずらりと集められた精霊王様達を前に私が悲鳴をあげれば
「任せるもきゅ!!結婚式の演出のために精霊王達を集めたもきゅ!!
紗良の世界も真っ青になるほどのプロ……なんとかで光と闇の演出をしてみせるもきゅー!!」
ふんむーと神様が言う。
どうやらこの精霊王様達は私の結婚式のためにハムちゃん神様に召集されたらしい。
プロなんとかというのはたぶんプロジェクションマッピング?だと思う。
光の映像で演出するあれ。
ハムちゃん神様曰く、私が仮初の日本でうじうじしていたとき、夢の王国やら何やらを満喫していたらしい。……よくわからない萌え信仰はそこからきているのかもしれない。
「全世界に向けて光と闇の演出もきゅー!!
精霊王達の力を借りて世界中各地に紗良とカルロの結婚式を光と闇で中継するもきゅー!!」
神様の言葉に本来なら威厳があるはずの精霊王様達が「は、はぃ」と情けなく声をあげて
「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
と、悲鳴をあげる私。
全世界に向けて結婚式とか何その羞恥プレイ!
精霊王様達の加護を一心に受けて結婚式などしたと世界中に発信したらレティに聖女になってもらった意味がなくなってしまう。私とカルロさんが凄い人に崇めまつられてしまうしっ!何より恥ずかしいから無理。絶対無理。
「無理です!??絶対無理です!!」
「な、なぜもきゅか!?シンデレラは女の子の夢と希望と憧れもきゅ!?」
「女の子って歳じゃないですし!?シンデレラは全国中継関係ないです!!夢と希望じゃないです!!」
「やりたいもきゅー!!キラキラやりたいもきゅー!!」
と、駄々をこねはじめる神様。子どもか君は!
「神様そこまで言うなら、テーマパークを作りましょう!」
「テーマパークもきゅ!?」
「そうです、そして神様がそこの萌えマスコットとして、グッズ販売やらされれば萌普及もできて一石二鳥ですよ!」
「そ、それは素晴らしいもきゅ!?心躍るもきゅ!!」
「で、ではその方向で!」
「任せるもきゅ!精霊王達にはそこで働いてもらって、超豪華なアトラクションを!」
「何故!?」
「精霊王がいなければ誰がアトラクションを動かすもきゅ!?」
「精霊王様達をそんな無駄使いしないでくださいっ!!!!」
私の悲鳴にその場にいた精霊王様達もうんうんっと頷いた。
■□■
『助かった礼を言おう紗良』
虎姿のままのルヴァイス様が私の隣で毛づくろいしながらため息をついた。
結局あの後。
クライムさんやラディウス様を呼び出して、魔道具でアトラクションを作ることになった。魔道具の素材は神様や精霊王様達がとってきてくれるので心置きなく作ってくれと言われたら、クライムさんもラディウス様も目を輝かせていたので、きっと魔道具に詳しい人達を集めて完成させてしまうのだと思う。
若干ハム神様がクライムさんやラディウス様にしていたアトラクションの説明が実際のと異なるのが気になるけれど……。
あとでこっそり確認しておいた方がいいかもしれない。
魔道具でアトラクションをつくるので精霊王様達がスタッフとして働かせられる未来は防げたと思う。神様に近い精霊王様達がテーマパークのスタッフとして働いてるとか威厳も何もあったものじゃない。
『それにしてもお主たちもついに結婚か』
「はい、ルヴァイス様のおかげですね」
『我は何もしておらぬ。お主たちの努力の結果だ。おめでとう。
加護の子(わが子)の結びつきを祝福しよう』
そう言って私になにかキラキラしたものを飛ばしてくれる。
「これは?」
『祝福だ。おまじないレベルだが幸せが続くようにと祈りを込めた。
そなたたちは苦労をしたのだ、それ以上の幸せになれよ』
ルヴァイス様が優しい目で言ってくれるので、私はにっこり微笑み返す。
「はい。カルロさんとなら幸せになれますから安心してください」
『これはまたずいぶんノロケられたものだ』
やれやれとため息をついてルヴァイス様が眼下に広がるセンテンシア領を見つめた。
ここに来るまでの間。
荒神と戦ったり、邪神と戦ったりいろいろあったけれど、なんとかみんなで乗り越えてこれた。もう世界をループさせる存在はどこにもない。
ここからの未来は、もう誰にも予測できなくて、自分達の行動がそのまま未来になる。
だからこそ希望が広がっているし、幸せになれるようにみんなで努力しないといけない。
何度もループをして辛い思いをしたレティ。
操られ大好きなレティを守れなかったカルロさん。
マリエッテの嫉妬で借金まみれにされ、貧乏を余技なくされた領地のみんな。
カルロさんを元に戻そうとして殺されてしまったセクターさんやラディウス様。
何度もダンジョンに閉じ込められ悲惨な死を迎えていたレナルド王子。
呑みこまれ力を摂取されつづけた精霊王様達。
もう彼らを縛るものは何もない。
「これから幸せにならないとですね」
『ああ、そうだな』
――どうかこれからは皆が幸せな人生を歩めますように――











