表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/113

第90話 その後11

「それでは皆様お楽しみください」


 国王陛下の挨拶が終わり、舞踏会がはじまった……けれど。

 本当に私とカルロさんは座っているだけでよくて何もしなくてすんだ。

 王城で煌びやかに開かれたパーティーで、私たちは用意された一角でただ座っていればいいだけなのだ。

 挨拶に来る人すらいなかったのである。

 というのも、王子達がきっちりガードしてくれていた。


 これなら私出る必要なかったんじゃないの?

 と、王子に別室で聞いたら「本来守らなければいけないのは君だよ?精霊王様に愛されているのも、神の寵愛をうけているのもね。君に何かあったらそれこそ困る。カルロ卿だけならここまでしなかっただろうね」と、笑われた。


 くっそー。初めから守るつもりだったのなら言ってくれればいいのに。

 ダンスの練習は一体なんだったんだろう。

 わかってて黙っていたな、レナルド王子め。

 私がぐぬぬと王子をにらみながら席に座って口元を扇子でかくしていれば、カルロさんがくすりと笑った。


「すぐ終わるよ。ただ、帝国の皇帝にだけは挨拶にいかなければいけないから。

 せっかくだから次の曲で踊ってみるかい?」


 と、カルロさんが言うので私はぶんぶん顔を横にふった。

 確かに誰一人近づいてはこないが、こちらに来たそうにチラチラしている貴族はたくさんいる。

 注目を浴びている状態で踊るとかやめてほしい。

 レティの身体と違ってこちらはど素人なのだから。


 それに、イケメン状態のカルロさんと踊って私の心臓が持つとは思えないし。


 なんとか虚勢をはって澄まし顔でカルロさんの隣にいるだけでいっぱいっぱいだ。


 私とカルロさんが愛想笑いを浮かべながら舞踏会を眺めていれば、正装したレナルド王子がやってくる。

 相変わらずシェールさん姿の方が印象つよくて、「誰お前」状態なのだけれど、見た目はカッコイイ。

 レナルド王子が「悪いけれど帝国だけは僕の力では抑えられなくてね。挨拶だけ行ってくれるかい?」と言われてしまい、カルロさんと帝国の皇族の所に挨拶に向かう。

 確かこのゲーム2まで出ていて、次の舞台は帝国だった気がする。

 主人公も確か交代していたはず。

 2は事前情報だけで発売前だったから内容は知らないけれど。

 まぁ、もうゲームと未来は大きくかわってしまっているのだから、変に心配しなくていいのだろうけれど……。

 それでも変なフラグがたってしまうのではないかと心配ではある。


 そう思って、レナルド王子に案内された先で――私とカルロさんは固まった。


 そこにいたのは帝国皇帝と、次ゲームのヒーロー予定の王子と……そして……カルロさんの奥さんでありレティの母親そっくりの女性が立っていたからだ。



 ■□■


「お会いできて光栄です」


 そういって帝国の人の一人が仰々しく挨拶をしてきたけれど――。

 私はそれどころじゃなかった。


 第二夫人の座を狙ってくるかもしれない。


 そう言われていたけれど、まさかこんな形で仕掛けてくるなんて。

 目の前に立つレティの母親にそっくりな女性は本当に綺麗で、私なんて叶うはずもない。

 

 どうしよう。

 死んだ恋人にそっくりというのは一体どういう気持ちなんだろう?

 やっぱり心惹かれちゃったりするのだろうか。


 私がおそるおそるカルロさんを見れば……なぜかにっこり微笑まれた。

 満面のいつもの過保護バージョンの笑みで。


 え?何で?

 このタイミングで過保護バージョンになってるの!?

 皇族そっちのけでニコニコしだしたカルロさんにレナルド王子がまずいと思ったのか


 私が固まっていれば、「ではそろそろ行きましょう。聖女レティシャ様がお二人をお待ちです」


 話を切り上げてくれるのだった。


 ■□■


「紗良が嫉妬してくれるなんて嬉しいな!!!」


 三人になった途端、だらしない満面の笑みを浮かべて紗良を持ち上げてきゃっきゃとはしゃぐカルロと


「ちょ!?カルロさん!?こっちはそれどころじゃなかったのに!?」


 と、顔を真っ赤にしてアワアワとしている紗良を見てレナルドは苦笑いを浮かべた。

 カルロ卿は本当に紗良の事となると、顔にでやすい。

 あれだけ目の前でいちゃつかれれば、帝国も諦めただろう。


 それにしても、帝国が何か仕掛けてくるかと期待したが……


 まさか前妻に似た女性をつれてくるなどという、残念な手段でくるとは……帝国の王子は切れ者と聞いていただけにがっかりではある。


 帝国の事だ。レティシャの裏にいる紗良までたどり着いていそうな気もしたが……杞憂だったのか……それとも。


「カルロさん!恥ずかしいですっ!!!」


 と、悲鳴を上げてる紗良と、ニコニコ顔で紗良を持ち上げて踊っているカルロを見て思う。

 あの女性はこれから何か仕掛けてくるための布石だったのだろうとは思う。カルロの死んだ妻にそっくりな女をあてがってどうにか出来ると思っているほど帝国も愚かではない。だが……おそらく計画通りには進みはしないだろう。あの二人の馬鹿がつくほどの溺愛ぶりではつけいる隙がない。


 貴族は基本政略結婚で、ここまで絆の強い夫婦はあまりいないのもあるが……。

 それを抜きにしてもこの二人の、いちゃつきぶりは酷いだろう。


 ま、大丈夫だと思うけれど念のため用心したほうが無難かな。

 少しくらい波風がたてば面白かったのだが、それすら無理のようだ。


 目の前で遠慮なくいちゃつくカルロ達に心の中でレナルドはため息をついた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■□■宣伝■□■
★書籍化&漫画化作品★
◆クリックで関連ページへ飛べます◆

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵

表紙絵
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ