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第89話 その後10

「うーーあーーー緊張するぅぅぅぅぅぅぅ」


 ドレスに着替えて、お化粧をすませたあと、私は胃を押さえながら言った。

 あれから何日かすぎて、今日はレティの聖女就任式となった。

 精霊王様達は「そんなもん必要あるの?」と言ったけれど、一応人間の世界の内外にレティが聖女だと知らしめる必要があるためのセレモニーだと説明したら、好きにしろと言ってくれた。

 聖女の式典の主役はレティで、聖女の父の婚約者という立ち位置なため、最初少し出て行くだけでそれ以後ほぼ出番はないのだけど……。


 その後開かれる国の舞踏会で、カルロさんと一緒に出席しなければならない。

 ちなみにレティは不在だ。

 

 私は国に来た外賓をお出迎えする立場なのだ。

 カルロさんの隣で笑っていてくればあとはシェール卿が追い払ってくれるって話だけれど……。


「胃が痛くなってきた……」


 私が胃を押さえながらいえば


「神の加護があるのですから痛みなんてあるわけないでしょう」


 と、ミレイユが身も蓋もない事を言う。

 

「それはそうかもしれないけれど!そこは気分的な問題!」


「お嬢様は肝が据わっているのか、いないのか判断つきません。

 マリエッテ嬢を打ち負かすとき参加した舞踏会はイキイキとしていましたが」


「あの時はざまぁするためだよ!?

 どや顔して相手を煽るためだもの!?そりゃ張り切るでしょ!?」


 そう、あの時はマリエッテをざまぁしていかに精神的に優位に立つかの方にばかり神経が行っていて、緊張などしなかった。

 けれど今回そういったご褒美がないのだ。

 緊張ばかりしてしまう。

 私が口でそれを説明すれば


「……いい性格をしていらしゃいますよね」


 と、ジト目でにらまれた。


「褒め言葉としてうけとっておく!」


「褒めてません!


 ……まぁ、それだけの元気があれば大丈夫ですね。

 お嬢様、今回も戦場であることをお忘れなく、婚約者がいると発表したのは本当に最近です。そうとは知らず旦那様を目当てにきていた令嬢は数多くいるでしょう。

 今更方針を変えられず、第二妃の立場を狙ってくる女性は数多くいます」


 言うミレイユの顔は真剣で、私も真剣に頷いた。

 そうだ。今回だって戦場だ。

 カルロさんに言い寄る女性はみんな排除する!!


「よっし!なんだかやる気でてきた!ありがとうミレイユ!」


「頑張ってください。お嬢様。お嬢様なら貴族社会になれきった令嬢如き簡単に威嚇できると信じています。私が保証しましょう」


 と、まったく嬉しくない保証をしてくれる。

 でもそうだよね。これでもマリエッテともやりあったのだ。

 そこらの令嬢如き私の相手ではない!……うん。たぶん。


 私は頬をぽんぽん叩いて立ち上がる。

 この世界で生きていくと決めたからには、ちゃんと貴族社会とも向きあわなきゃ。


 逃げてちゃだめ。好きな人と一緒に居たいなら、好きな人の隣に立っていないと。

 この世界の貴族の世界は、蹴落とし蹴落とされ、気が弱い方が負ける。

 その勝負に勝ち抜いてみせる絶対に!



 ■□■



「用意できたかい?紗良?」


 部屋から出れば――そこにはきっちりと正装したカルロさんだった。

 聖女の儀式でレティの側にいるだけあって、衣装も豪華というかいろいろ勲章をじゃらじゃらつけている。

 いつもカッコイイけれど、今日は真面目モードなのか、いつもより笑みがイケメンよりでかっこよくて、私は思わず赤くなる。

 あー、そうなんだよね。私といると過保護だから忘れがちになるけど……イケメンなんだよカルロさん。

 真面目なカルロさんを久しぶりに見て、緊張するけれど、今はそれよりも、ちゃんと今日の仕事をこなさないと。


 ガチガチになってしまった私の手をカルロさんが握ってくれて


「大丈夫。紗良は私の隣にいるだけでいいから」


 と、微笑んでくれた。

 

 そうだ。カルロさんは子どもだったときもいつも守ってくれて。

 いつも私の前を歩いていてくれた。

 でももう違う。

 私は大人。今度は後ろに隠れて守られるのではなくて――対等にちゃんと歩けるようなパートナーにならないと。

 私はカルロさんに向かって微笑めば、カルロさんも微笑んだ。


 日本に帰るか――この世界に残るか――ハムちゃんに聞かれたときにこちらと答えた時点で、ここにいるのは以前とは違い、私の意志なのだ。

 戦わないと。逃げないで。


 大丈夫。だってカルロさんがいるんだから……ね、カルロさん。

 嬉しくてカルロさんを見上げれば、光を放っていそうな笑顔で笑ってくれる。

 カルロさんの微笑んでくれる笑顔がかっこよすぎて、私は思わず視線を逸らすのだった。


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