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第84話 その後5

「それでは、旦那様の婚約者ということで出席することになったのでしょうか?」


 ミレイユに聞かれて、私はそのまま頷いた。

 あれから、カルロさんはすぐにミレイユとセクターさんに拉致されて連れていかれ、私は残った王子と相談をして、聖女レティに協力した異世界人という立ち位置でカルロさんの婚約者として出席することにした。


「聖女レティに協力した」部分はいらないんじゃと主張したけれど、その部分を付け足さないと、そんなどこの馬の骨かわからないのと結婚するなら、正妻として貴族のうちの子を!!と申し込みがきてしまうらしい。


 そういえば、この世界一夫多妻もOKな世界観だったのを忘れていた。


 悪目立ちするのは嫌だけれど……目の前でカルロさんに美人がわらわら言い寄るくらいなら、私が頑張るしかない。


 レナルド王子にも「帝国の貴族には意見をしにくいから、なるべく自分で頑張ってくれると嬉しいな」と言われてしまったし。


 精霊王様達の威光をかりればいいのかもしれないけれど、主役はあくまでもレティだ。


 あまり心労をかけたくない。精霊王様達は人間の貴族の決まりなんて知らないから、力でねじ伏せる方向にむかっちゃうだろうし。


 とくに精霊王様達に頼むとハルナとサリナがやばい。

 あの二人がどんな問題をおこすかわからないので内緒にしようと思う。

 それになんたって、私はレティの義母になるのだ。

 子供に守られるのでは、親としての威厳が!!!

 

 ……と、私がレティのお母さんと考えると、ちょっと感慨深いものがあるなぁ。

 いまは10歳姿だけど18歳の姿も知っているだけに立派なお母さんになれるだろうか。


 とにかく、この世界で生きていくと決めた以上、いままでみたいに、他所の世界だから関係ないってわけにもいかない。

 私はカルロさんとこの世界で生きていくってきめたんだから。

 嫌だけど必要最低限の事くらいはしないと。


「この世界で生きていくって決めたからね。

 前みたいに子どもじゃないんだから、逃げるだけはやめないと」


 私が腕を組んでいえば


「大人になりましたね。お嬢様は」


 と、ミレイユに言われてしまう。


「うーん、ミレイユ、もう私達年齢あまり変わらないはずなんだけど」


「年齢がいくつであろうとお嬢様お嬢様ですよ。

 それに私の方が年上ですから」


 ミレイユが言いながらクイっと眼鏡をあげる。

 どうやらミレイユの中ではお嬢様呼びは譲れないポイントらしい。

 なんだかそれが嬉しくて、「うんそうだね。ありがとうね」と、微笑めばミレイユが顔を赤くして「べ、別にお礼を言われるようなことじゃないんだからね!」みたいな事を言い出す。ツンデレはやっぱり健在で、戻ってきたんだなぁとニマニマしていれば、「お嬢様、その顔はどうかとおもいますよ」と、突っ込まれてしまった。


 くぅ。レティの時は注意されなかったのになぁ。レティの美人補正がないのを意識しないと。


 私はパンパンと頬を叩く。

 

 レティの就任式の後に開かれる舞踏会。

 そこがレティの身体でなく、私の身体ではじめてのデビューになる。

 貴族の舞踏会は女の戦場だ。

 レティのためにも絶対無事に勤め上げてみせる!!!!





 ………って、思ったんだけどな。


 心に誓って二時間後、ミレイユとダンスの練習を終えて、私はぐったりとソファに横たわった。


「驚くほどダンスセンスがありませんね……」


 ミレイユが頭をかかえて、私を見た。

 

 ミレイユとダンスの練習をした結果。私は下手だということが判明した。

 レティの時は身体が覚えていてくれて、勝手に踊ってくれたのに。

 今回は身体が勝手に覚えていてくれるという事はないようだ。


「ど、どどどどどうしよう!?もう時間がないのだけれど!?」


 私がミレイユに言えば、旦那様にリードしてもらうしかありませんね。

 とりあえずこれから毎日特訓です。

 と、キラリンと眼鏡を輝かせた。


 うええええ。毎日練習はいいにしても間に合うかなぁ?

 私が一人ブルーになっていれば


「なんだ、紗良。ダンスの練習しているのか?」


 通りかかって部屋を覗いてきたセクターさんに話しかけられる。


「うん。驚くほど下手でうまく踊れないから練習しなきゃ」


「セクターせっかくですからお嬢様の相手をしてあげてくれませんか?」


 と、ミレイユが言う。

 するとセクターさんがしばし考えた後


「お前、その姿で一度くらいカルロと踊ったことがあるのか?」


 と、真顔で聞かれた。


「え?うーん。まだないけど何で?」


「おまえなぁ、またいつぞやみたいに、私が一番になりたかったのに!と、延々と愚痴られる身になってみろ。あいつは紗良の事となると、駄々っ子になるから相手をしたくない」


 心底呆れた表情で言うセクターさん。

 そういえば、私が精霊王様のところから帰って目を覚ました時、セクターさんが先に私を抱き上げちゃって、かなりグチグチ言われたとぼやいてた気がする。


「そうですね、あれはお嬢様の事となると、分別もなくなりますから」


 ミレイユがうんうん頷きながら言っている。

 うん、相変わらず周りから酷い評価だなカルロさん。


「だったら僕が相手になろうか?」


 そう言ってにっこりと現れたのは中身王子のシェールさんだった。

 なぜかセンテンシア領の館のダンスホールにニコニコ顔で唐突に現れた。

 帰ったんじゃ?と思えば、王子の後ろではすみませんと言いたそうな顔なラディウス様が立っている。


 大方、入り口付近で出くわして、館の中に案内させられてしまったのだろう。

 それとも車についての相談でもしてたのかな?

 王子の頼みとあればラディウス様が断れるわけがない。

 に、してもまだいたのかこの王子。

 どれだけ暇なんだろう。


 でも練習相手がいるのは嬉しいかも?


 私がどうしようかなと迷っていると


「紗良の相手は自分がするので大丈夫です!!!!」


 と、物凄い勢いできたカルロさんに抱き着かれた。


 ……うん。カルロさんは王子に警戒しすぎだと思う。

 この人、人を利用することしか考えてないのに。



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