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第83話 その後4

「やぁ、元気にしていたかい?」


 そう言ってにこやかな笑顔で現れたのはシェール卿に扮したレナルド王子だった。

 カルロさんと別れたあと部屋で一人悶絶していたら、なぜかシェール卿が私を訪ねてきたのだ。


「相変わらずフットワークが軽いですね。仕事の方は大丈夫なんですか?

 レティの就任式やら、第二王子の件でいろいろ大変って聞きましたけど?」


 私が自室にあるテーブル席に座るように勧めれば、シェール卿ことレナルド王子は微笑んで。


「これも仕事の一貫だけどね。

 君がレティ様の就任式に参加をするのか直接聞きにきたんだよ」


「え?もちろんレティの晴れ姿ですもの!見にいきますよ!

 いくら行事大嫌いな自分でもレティの就任式に行かないとかありえませんから。

 押し付けちゃったところもありますし」


 私がちょっとふてくされていえば、レナルド王子が微笑みながら「体が大人になったから考えも大人になったのかな?」と茶化しながら席に座る。


「まぁ、行くのはいいとして。

それで君はどういった立場で出席するつもりなのか確認していいかい?」


「どういった立場?」


「今の君の立場は異世界人という肩書の他なにもない。

 聖女の地位も、世界を救った功績もすべてレティシャ様に譲ったからね。

 だが、異世界人という肩書だけでレティシャ様の就任式には参加できない。

 今回は帝国や他の国からの出席者も多数いるからね。

 僕の権限もすべてじゃない。

 箔をつけるために、レティシャ様とともに世界を救った救世主的立場にするのか。

 異世界人というのを隠してシェール卿の親族ということにするのか。

 カルロ卿の婚約者という立場で出席するのか、いろいろ詰めないとだろう?」


「言われてみれば確かに」


「だから、君の希望を聞きに来たんだよ。

 神に寵愛されている君を最優先するのは、王族として当然だと思うけれど」


 そう言って王子は私がいれた紅茶を飲んだ。

 本当この人は紅茶の飲み方から優雅だよなと思いながらも私も一口紅茶を飲む。


「ところで……あの御方は不在なのかい?」


 王子が少し警戒するようにあたりを見回して私はクスリと笑って見せた。

 王子が言っているのはハムちゃんこと神様の事だろう。

 誰彼かまわず萌えポーズを披露して、感想を求める神様はなぜかいまだに私の側を離れないので警戒しているのだと思う。


「今お出かけ中ですよ。近所の公園で子供たちにモフられに行くとダッシュしていきました。萌えの普及活動だそうです」


「普及活動?」


「神様の愛らしさで子どもたちをメロメロにして

萌え文化をこの世界に広めたいそうですよ」


「……うん。なんというか変わった御方だよね」


 そう言って王子が苦笑いを浮かべた。

 私もお腹を撫でられたくらいで萌え文化が広まるんですか?と聞いたのだけれど、「千里の道も一歩からもきゅ!!時間は腐るほどあるもきゅ!!」とどこで覚えたわからない言葉をいいつつ、嬉しそうに子供にお腹を撫でられにいってしまった。

 萌え文化を広めたいというよりは、単にお腹をナデナデされてチヤホヤされたいだけだとは思うがあえてそこは突っ込まない。

 ハムちゃんの相手は何気に疲れるんだよね。

 語尾が。主に語尾が。


 それにしてもレティの就任式の出席するカタガキかぁ。

 確かにレティとともに世界を救いました!とかいう肩書の方が参加しやすいんだろうけれど……面倒事も多そう。


「やっぱり、なるべく穏便に目立たない方がいいですねー」


「じゃあ。カルロ卿の婚約者的立場では出席は見送るかい?」


「え?何でですか?」


「聖女の父親の婚約者だよ?目立つに決まってるじゃないか。

 今回の就任式は、帝国含め、かなりの王族が聖女との繋ぎがほしくてカルロ卿に接触してくるだろうからね。かなり気合をいれてくるんじゃないかな。

 特に面白くないのは帝国だ。いままで弱小国と思っていた国が急に帝国をしのぐだけの権威を手に入れてしまったんだ。カルロ卿の後妻を帝国からだしたくてかなりこちらに圧力をかけてきている」


「え!?

 カルロさんと結婚ってことですか!?」


「うん。そうだよ。

 こちらも聖女様が望んでいないと断ってはいるけれどね。

 カルロ卿と直接接触できる機会だ、どの国もカルロ卿に見目麗しい女性をあてがってくるだろう」


 そう言って王子がにっこり笑う。


「ちょ!?嫌です!!それだけは駄目です!!!」


「大丈夫だよ、カルロ卿は君以外に目移りするようなタイプじゃないだろう?」


「そ、そそそそういう問題じゃありません!!」


「ならどういう問題だい?」


「他の人に言い寄られるなんて私が嫌です!!!!嫉妬しちゃうじゃないですか!」


 うん。そうだよ。だって、目の前でカルロさんが美人な貴族と踊ってるとか、相手もその気もあるとか、見た目も普通、貴族の教養なんて皆無の私じゃなくて相手を選ぶんじゃないかって不安になるし。


 や、もちろんカルロさんが相手を選ぶなんて不誠実な人じゃないのは知ってるけれど!


 それとこれとは話は別で。


 私が嫉妬してしまう。


 私が身を乗り出していえば、


「だ、そうだよ。よかったねカルロ卿」


 と、王子が座したまま紅茶を飲んだ。


 ……え?


 不思議に思って私が後ろを見れば


 なぜかミレイユとセクターさんに抱き着かれてドアの前にいるカルロさんがいた。


 え、えーっと、もしかして……聞かれた?


 カルロさんは固まったままわなわなしてる。


 どどどどどどうしよう、嫉妬する嫌な女と思われただろうか。


「え、えーっと違うんです!?カルロさんいまのはあの!?」


 私が慌てて弁明しようとすれば、カルロさんがぱぁぁぁと顔を輝かせて


「嬉しいよ!!紗良ありがとう!!」


 と、セクターさんとミレイユを引きはがして私をそのまま高い高いした。


 あわわわわわあわ。


 どうしよう!?この公開処刑!???嬉しいけれど超恥ずかしいんですけど!???

 嬉しそうにきゃきゃと私を持ち上げるカルロさんのと、椅子に座ったまま優雅にお茶をもったまま王子が「いやぁよかった」とまったく心のこもってない感想を述べる。

 

 こんのくそ王子!!!絶対わざと話を誘導しただろぉぉぉぉぉ!!!!


 嬉しそうに私を持ち上げてきゃっきゃ回るカルロさんの腕の中で私は心の中で王子に絶叫をあげるのだった。


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