第82話 その後3
「セクターさえあの時部屋にこなければ」
カルロの書斎で、もう何度目になるかわからないつぶやきをカルロがこぼした。
その隣にもう紗良の姿はなく、仕事を見張るミレイユの姿がある。
セクターの話によれば、書類を確認してほしくてノックをして部屋に入ったら、紗良とカルロが奇妙なポーズで固まっていたと、証言していた。
大方、生真面目なカルロの事だから紗良に抱きついていいか確認をしていて、そこにセクターがたまたま居合わせてしまい、紗良が部屋から退散してしまったといったところだろう。
書類にペンを走らせながら、ふてくされているカルロにミレイユはため息をついた。
紗良が日本に帰ってしまってから、まったく仕事が手につかなくなってしまった事を思えば仕事が出来るだけまだましなのだろう。
けれど、延々と恨み言を聞かされる身にもなってほしい。
お互い好きあってるはずなのに、いまだに紗良とカルロの距離は開いたままで。
―日本という世界は一体どんな世界だったのでしょうねー
ぶつぶつと負のオーラを纏いながら仕事をしているカルロを見ながらミレイユは思う。
相手が好きと好意を寄せてくれているのに全力で逃げたり、力をくれると言うのに過剰な力だからと断ったり、新たな文明を築く知識があるのにその知識を封印したり。
紗良の行動はミレイユにはわからぬ事で、これが価値観の違いなのかと、何度も首をかしげた。この二人の恋は実ったとしてもその後も価値観のすれ違いから生まれる距離を埋めるのは大変な事だろう。
長年一緒にいただけあって恋が実りかけているのは喜ばしい事だと思うし、素直に祝福したいとは思う。
が。
ほほえましいと同時に、毎回カルロの愚痴に付き合わされるのは、うっとおしくもある。
「旦那様、はやく仕事を終わらせてください。明日にはレティ様と打ち合わせがあるはずですよ」
そう言えば、カルロははっとして
「ああ、そうだったね。早く終わらせないと」
と、真剣に書類にとりかかりはじめた。
最近は本来の娘であるレティの話をすれば冷静な彼に戻るので幾分楽ではあるのだが、この人はオンとオフの落差が激しくて困る。
常に自分が見張っていないと仕事が出来ないのだ。
セクターはカルロの地雷を踏むばかりで、足を引っ張るし、ラディウスは厳しさが足りない。一度見張りを頼んだがなぜか二人そろってブルーになって人生を語らっていた。
見張るどころか邪魔をする始末である。
まったく私の周りはそろいもそろって、手のかかる人ばかり集まるのはどういうことでしょうか。
お嬢様もお嬢様で別の意味で手がかかりますし。
今頃、旦那様はイケメンすぎて困ると悶絶してるのでしょうね。
と、部屋に一人おいてきた紗良に思いをはせる。
のたうちまわっているだろう紗良にも声をかけにいきたいが、カルロにたまった仕事だけは処理をしてもらわないと――魔法で契約に縛られているため、領主がこなさねばいけない仕事は多い。
本来なら親族か配偶者など魔力の似通ったものに権限を与えて代筆を頼めるのだが、カルロは頼れるような親族がいない。
カルロの親族は氷属性を嫌い、魔力が下がってでもと他国に行ってしまったのである。
まったく手のかかる――などと思いながらミレイユがカルロを見張っていれば
扉がノックされ、セクターが入ってきた。
「おい、紗良の所にシュール卿が来てたけど、あれ中身は王子じゃ……」
部屋に入ってくるなりカルロに、余計な事を開口一番言い始めた。
がたっと大きな音をたて慌てて席をたつ、カルロを見てミレイユは思う。
―――大人げない――と。
★悪役令嬢ですが死亡フラグ回避のために聖女になって権力を行使しようと思います★
本日マンガpark様にて連載開始です!!!!
素敵バナーをドンと張らせていただきます!
★11月24日まで毎日更新、11月28日まで冒頭1チャプターを読んだら5ボーナスゲットキャンペーンを開催しております★
マンガpark様のアドレス: https://manga-park.com/
是非是非よろしくお願いします!!
イラストが超美麗で話もとてもわかりやすくなっております!
レティ可愛いし、カルロさんが超かっこいいです!
とっても素敵なので是非たくさんの方に読んでいただけますように(*>人<*)
★★★
新作の方も宜しければ見ていただけると嬉しいです!!
聖女じゃないと見捨てておいて今更助けてとか無理なので、どうぞ放っておいてください! ~婚約破棄からはじまる異世界もふもふスローライフ~
アドレス:https://ncode.syosetu.com/n8147gp/
何卒よろしくお願いいたします!











