第81話 その後2
「それにしても、レティの聖女の就任式かぁ。
なんだか仕事を押し付けちゃって申し訳ないような気もするなぁ」
そう言って私は窓の外を眺めた。
あれから、私たちは王都にある、センテンシア領の別荘で待機していた。ダンジョン攻略のパレードも慌ただしくも終わり、その後すぐにレティの聖女就任式があるからだ。
せっかく各国から偉い人が集まっているのだからダンジョン攻略パレードとレティの聖女の就任式を一緒にやっちゃおうぜ★って事らしい。
もちろん父親のカルロさんもレティの晴れ舞台に参加するわけで、こうやってまだ王都にいる格好だ。
カルロさんはレティの就任式までにたまった仕事を仕上げないといけないらしく、いままだ書斎に閉じ込められたままだったりする。
「大丈夫だよ。レティは神殿で働く事を楽しみにしているみたいだよ」
「レティがですか?」
「うん。元々、あの子は小さい時から仕事にやりがいを感じる子だったから。
領地の事も熱心に学んでいたからね」
あー、そういえばレティはそういうの好きだったよね。
朧気ながら思い出せる記憶のレティはよく「領民のために」「国のために」と言っていた気がする。
「レティはいい子ですからね。
私と違って人の役立つ仕事は大好きでしたし」
と、私はうんうん頷いてみせた。
そうしたら、カルロさんが仕事の手を止めて、私の隣に来て微笑んだ。
「紗良は相変わらずだね」
「相変わらず?」
不思議に思って隣に立ったカルロさんの顔を見上げた。
「自分が褒められるより人が褒められた方が嬉しそうだ」
そう言って微笑むカルロさん。
ちょ、待って欲しい。そういうことを言われると物凄く照れる。
自分ではそんなつもりはまったくなかったけれど、面と向かってお人よしと言われてしまうと恥ずかしい。
カルロさんはそういう恥ずかしい事を面と向かっていうから困る。
「え、いや、別にそんな事」
と、慌てて頬を赤らめるて視線を逸らすと、カルロさんがいつものように手を広げて……そのまま止まった。
「……カルロさん?」
「い、いや、ごめん、つい可愛くて抱きしめようとしてしまって……君はこういうの苦手だったよね」
と、そのポーズのまま情けない声をあげる。
その顔がまるでお預けをくらった子犬のようで……情けなくもあるけれど、その姿がとてもかわいいと感じてしまうのも惚れた弱みなのかもしれない。
ああ、もうイケメン無罪ってこういう事を言うのだと思う。
イケメンは間抜けな恰好でもイケメンで得だと思う。
「えーっと、その苦手ではあるんですけど……」
「でも、嫌いではないです」と、後半は恥ずかしくなって小声で言えば
「……え?」
聞き取れなかったのかカルロさんが聞き返してくる。
うう、恥ずかしい事を二度も言わせないで欲しい。
「………あの、恥ずかしいですけど、き、嫌いじゃありません」
「え、えっと、それじゃあ……抱きついてもいいかな?」
「え、いや!?そんな、面と向かって聞かれてもっ…!?」
「駄目かい?」
しゅんとしまったカルロさん。
本当にこの人はずるい。
普段は冷静で寡黙キャラなのに、自分の前でだけは、情けないキャラになるのが、可愛くもあるし、いとおしくもある。けれど、抱きついていいかと言われると、男性耐性のない自分にはつらい。
「えーっと、その、誰もいないときだけですよ?」
「じゃあ!」
背景にぱぁぁぁと花を咲かせているんじゃないかという喜びように、私は顔を赤くする。
もう、本当にかわいいなぁ。
「じゃあ、いくよ?」
「え、あ、はい!」
緊張してぴーんっと背筋を伸ばしたその瞬間。
「……何やってるんだ。お前ら」
いつの間にか、扉の所にいたセクターさんに突っ込まれるのだった。
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コミカライズ明日マンガpark様で発表です!!よろしくお願いします!!!!











