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第80話 その後1


「カルロさんっ!!」

「お父様っ!!!」


紗良とレティの悲鳴に近い叫びが、後ろから響いた。

時と空間の精霊王の間へと続くその先で、無理やり二人を転移の魔法陣へと押し込んだのだ。


――世界の真相を知りたければ時と空間の精霊王に会え――


世界の真相を知るための旅で、消えかかった精霊はそう告げて、紗良たちに未来を託した。

そのため時と空間の精霊王の間へ向かっていたのだが、どこから情報が漏れたのか、第二王子が自分たちを指名手配犯とし、兵士を差し向けてきたのだ。


時と空間の精霊王への元に向かうカルロの後ろには第二王子が差し向けた兵士達が差し迫っている。

国の兵士たちの大半は魔族化されており、普通の兵士よりも強い。

追い付かれてしまえばたとえ紗良といえども苦戦を強いられるだろう。

誰かが足止めしなければ、魔法陣が発動を終えるまえに魔法陣にまで敵が攻め入ってきてしまう。

魔法陣が作動の最中に転移の魔法陣が壊されてしまえば、時と空間の精霊王に会う事は二度と叶わなくなってしまうのだ。


「先に行きなさいっ!!私は後から追うっ!!」


「でもっ!!!」


 娘のレティが転移の魔法陣から出ようとして、カルロは以前紗良にもらったワープの腕輪をレティたちに見えるように見せた。

 この腕輪を使えば場所は選べないがランダムにワープができる。


 その姿に紗良がカルロの意図を読み取り頷いて、レティを止めた。


「信じてますから!!絶対無理をしないでくださいね!!!

 危ないと感じたらすぐ逃げてください!!」


 紗良の言葉にカルロは微笑んでかえすと、氷の魔剣を構える。

 氷の精霊王が荒神に飲み込まれてしまった今、カルロに魔法は使えない。

 精霊王が消えた事を悟らせないためか仮初に慰め程度の力は使えるが、所詮はまがい物だ。魔族には通じない。

 だが、この魔剣があれば魔族化した兵士たちとも十分やりあえるだろう。


 後ろでワープの魔法陣が作動した音が聞こえた。

 あとは作動中攻撃されぬよう、この魔法陣に兵士たちが入らぬようにするだけだ。


 魔剣でワープの魔法陣へと続く道に氷の壁を作り上げカルロは思う。


結局自分は何一つ守れなかった。

――操られて、大事な娘を不幸な目に会わせ、友も見殺しにした。

セクターもラディウスもミレイユも。

殺されるのがわかっていたのに自分は何もせずただ、ファンデーヌのいう事を聞いていたのだ。

自分が無力だったせいで、レティは第二王子と婚約させられ断罪さてしまう。

民衆の面前で断頭台にかけられるという、貴族としては最大の屈辱を味わいながら。

このまま手をこまねいていれば歴史が何度も繰り返され、ループのたびに娘のレティが死の恐怖を味わう事になる。


断ち切らないと。この負の連鎖を。


何故このような連鎖がおきるのか――その答えがこの場所にある。

だからこそ守らないといけない。


――それがせめてもの自分の償いなのだから。


今度こそ、守らないと。


もう誰も殺させない。必ずーー


必――


――さん。


―――――さん。



「カルロさんっ!」


 唐突に名を呼ばれて、カルロは目を覚ました。


「――えっ……」


「大丈夫ですか?」


「……え。ああ。紗良」


 見渡せば、そこはいつもの王都にあるセンテンシア領の別荘の自室の書斎で、目の前には心配そうな表情をした紗良が立っている。

 自分はペンをもったままで、目の前には山積みの仕事があった。

 書類に目を通していた途中で自分は寝てしまったらしい。


「ああ、ごめん。寝てしまっていたみたいだ」


「だいぶうなされてましたよ。ちょっと仕事を詰め込みすぎじゃないですか?」


 紗良に言われてカルロは苦笑いを浮かべて


「もう少しで、レティの聖女就任式だからね。

 それまでにミレイユにこの書類を全部終わらせろと怒られてね」


 と、ペンを片手に、肩をすくめてみせた。

 ダンジョンの探索が終わり、後はレティの聖女の就任式。

 それまでに仕事は終わらせなければいけない。


「――この量をですか」


 どでんっと置かれた書類をみて紗良が声をあげ、


「相変わらず鬼ですね。ミレイユは」


「うん。けれど、領主でなければ、無効になってしまう書類も多いから仕方ないかな。

 必要なのはサインとともに込める魔力だから」


「なんだか、魔法って便利に見えて意外と束縛されて不便ですね。

 うちの世界なら代筆できるのに」


「うーん。代筆も出来れば便利ではあるけれど、目を通さずに了承するわけにもいかないからね。

 ここ最近、いろいろあったから出さないといけない書類もおおくて」


「ダンジョン探索に行ったりしてましたものね」


 うんうんと、紗良が頷くが、もちろん紗良がいなくなった喪失感で仕事が手につかなかったなどと本人に言えるわけもなく、カルロは「うん、そうだね」と笑ってごまかした。


 この場にミレイユがいたらおそらく物凄い小言を言われるのだろうなと思いながら。




【コミカライズ明後日の11月22日にマンガPark様にてスタートします!!】

ついにコミカライズが始まりますー!!!これも応援してくださった皆々様のおかげです!!

本当に、本当にありがとうございました!!

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