第7話 ゲームではまさかの悪役?
「あーー。疲れた」
あれからミレイユにこっぴどく説教された。
うん。まぁ日頃の行いが悪すぎて仕方がないのだろうけれど。
やっと解放されて部屋に戻るころには日はとっぷりと暮れまくっていたのだ。
にしても、塩をとるため凍る魔法をかけまくったのだがやっぱり最終段階でうまくいかない。
塩も一緒に凍るか、どっろどろの塩水状態になるかなのだ。
最終段階だけ別の方法を考えるべきだろうか。
天日干しとか。
最後だけ天日干しなら結構うまくいきそうだよね。
また明日実験してみたかったけど、ミレイユに外出を3日禁じられてしまった。
大人しくするしかないだろう。
でも6歳といえばまだ幼稚園か小学校1年生あたり。
そんなに勉強を急ぐ歳でもないと思うけどなぁ。
などと考えながら、私はそのまま眠気に勝てず寝てしまうのだった。
■□■
「こんな事をしてどうなるか貴方たちは分かっているの!?」
主人公の女の子が森の中で叫んでいた。
そのスチルでは主人公の友達が誘拐されているスチルがある。
そして主人公の目の前には二人組の男の姿があった。
「お前たちに何がわかる!!貴族という地位だけで、のうのうと学園に入学したお前らに!!」
「兄貴、こいつら誘拐してけばいいんだろ。とっとと連れてこうぜ」
と、主人公達を誘拐したのは……大きくなったグレンとリカルドだった。
そう、ゲーム上の敵の名前にデカデカと二人の名前が書いてあるので間違いない。
ちょ!?待って!!なんであの二人が悪役なの!?
と、めいっぱい手を伸ばしたところで、私は目を覚ますのだった。
どうやら、寝ている間にゲームの内容を思い出したらしい。
……なんてことだろう。
まさかのチョイ役、モブの悪役があの二人だったなんて!?
どこかで見たことがあると思ったんだよ!
そうだよ悪役ででてたんだ!
確か、自分は才能も勉強も誰よりできたのに魔法の属性が氷というだけで魔法学園に入れなかったとか恨み節ばかり述べていたような気がする。
騙されて主人公達を誘拐しようとして、主人公のせいで失敗し悪役に口封じに殺されるのだ。
ということは、ゲーム上ではグレンお兄ちゃんはやっぱり魔法学園には入れなかったんだ。
そのせいで拗ねて悪役への道へとまっしぐらしてしまった。
うん。やばい何とかしないと。
今の二人は全然擦れてなくていい子だもの。
あんな小悪党になって口止めで悪役に殺されるとか可哀相すぎる。
私は慌ててベッドから飛び起きるのだった。
■□■
「レティお嬢様見て見て!」
ベッドから飛び起きて。
そのまま孤児院に向かおうとすれば、嬉しそうに寄ってきたのはリンちゃんだった。
「あ、リンちゃん。どうしたの?」
私が言えば
「グレンお兄ちゃんが魔法で綺麗に塩をとる方法見つけたの!!
これが私たちが作った塩!!!」
そう言って桶いっぱいの塩を取り出した。
「ええええ!!本当!?すごいグレンお兄ちゃん凄い!!!」
私が桶をのぞきこんでみれば、確かに桶いっぱいの塩がある。
「凄い凄い!!グレンお兄ちゃんどうやったの!?」
私がグレンお兄ちゃんの方を見れば
「レティに教わった図を思い出してね。
水だけが集まって凍るように魔法にアレンジを加えたんだ。
だから塩だけが綺麗に追い出せる。
レティも教えてあげるからおいで」
そう言って嬉しそうに微笑む。
「凄いのー。一杯お塩作ればお菓子買える!」
キャキャと無邪気に喜ぶロロちゃん。
「お肉買ってもらおうぜお肉!」
とリカルド。
「そうだね。これだけ塩があれば何か買えそうだね」
二人に微笑むグレンお兄ちゃん。
うん。本当に今のグレンお兄ちゃんはいい子だ。
たった数年でなぜあんなこじらせ男子になってしまったのだろう。
こうやってすぐ魔法をアレンジできちゃうあたり、悪役になったとき言っていた魔法の才能があったというのも本当だったのだろう。
だから夢破れた時、絶望も大きかったのかもしれない。
自分の未来もだけれど。
グレンお兄ちゃんとリカルドも道を踏み外さないように、何とかしなくっちゃ。
出来上がった塩を見つめ、私は誓うのだった。