第6話 塩を作るよー
「これで何をするの?」
港で皆にそれぞれ桶に海水を入れてもらい、海水の前に私たちはしゃがみ込んでいた。
「いい、今から言うことをよく聞いてね。
海水の中の塩を氷魔法で取り出そうと思うの」
私の言葉に皆顔を見合わせて
「そんな事できるのかい?」
グレンお兄ちゃんが聞いてくる。
「それが出来るか今から実験」
言って私は棒切れで砂に図を書き出した。
理論上できるはずなのだが、如何せんここはゲームの世界である。
リアルの理論がここで通用するかは未知数である。
製作者の気分次第で常識なんて簡単に変えられるし。
「この●が水で△が塩だとするよね?」
と、●と△を描いた図で皆に説明する。
●△●△●△
●△●△●△
「この●と△は凍る温度が違う。
だから●だけが凍る温度を海水にかけて●だけを凍らせてくっつけるの。
そうすると△は凍る温度が違うから自然に外に押し出される」
●●●→△△△
●●●→△△△
と、図を描いた。
「初めて聞くなぁ。そんなのうまくいくもんか?」
リカルドがジト目でこちらを見る。
「うまくいくもんか?じゃなくて何とかするものだと思う!」
ガッツポーズで言う私。
「レティっていつも根性論だよね」
リンちゃんがため息をつき
「氷魔法かけるのー。
がんばるのー。
だからお菓子ー」
と最初からまったくブレないロロちゃん。
「まぁやれるだけ、やってみよう」
グレンお兄ちゃんがため息をつくのだった。
■□■
「……驚いた。これ温度調節さえできれば本当に出来そうだね」
桶に溜めた水に何度か皆で魔法をかけて、凍らせながらやれば、凍れなかった塩分濃度の濃い水を残して水が凍っている。
ただ、いつも最終段階でうまくいかず、塩水ごと凍ってしまうか、凍らないかを繰り返していた。
にしても魔法マジ凄い。マジ便利。
研究すればリアル日本でもできなかったことができそうな気がしなくもない。
「うん!これで何とか塩を取り出せれば外の領地から買う必要なくなるよね!」
私がニコニコ顔でいえば
「塩なら落ち葉より高く売れるね。
グレンお兄ちゃんの学費稼げるかも?」
と、リンちゃん。
「お金稼げればお肉夕飯に食えるかな?」
リカルドも嬉しそうに表情をほころばせた。
「あとは上手に塩を取り出す方法を探すだけだね」
私は桶に魔法をかけるのだった。
■□■
「お嬢様。一体どこをほっつき歩いていたのですか」
家に帰ると。
ドンッ!!!
と巨大な文字を背負っていそうな勢いで、私の家庭教師であり、うちの領地のお抱え魔導士のミレイユが立って待っていた。
……ああ、やばい。集中しすぎててミレイユの授業時間忘れてた。
「ご、ごめんなさい」
私が、小さくなって謝れば
「まったく、お嬢様は令嬢とは思えぬほどのお転婆っぷりで。
一体誰がそのような教育を……ってほぼ私ですよね。
そうです。私の教育方針がいけなかったのでしょうか。
私のこの毒舌がお嬢様の性格に悪い影響を。
いえ。でもしかし、お嬢様に毒舌の気はありませんしやはりお嬢様本来の性格のせいですね。
そうです。そうに違いありません」
自問自答し、やっぱり私が悪いということで結論がでたようだ。
ミレイユって日本の記憶が戻った今考えると結構キャラ付けされてるよね。
ひょっとしてゲームで登場予定だったのだろうか。
などとどうでもいいことを考えてしまい。
「聞いてますかお嬢様」
説教していたミレイユに物凄い顔で睨まれてしまうのだった。