第61話 時と時空の精霊王様の神殿
「ここが時と空間の精霊王様の神殿?」
王子に案内されて。
私たちは時と空間の精霊王様の神殿へと来ていた。
本当にファンタジーとかにでてきそうなゴシック建築風の神殿だ。
こう天井が高くてアーチ状になっていていたるところにステンドグラスが散りばめられている。
教会を思わせる神秘的な建物。
とりあえず王都でマリエッテを断罪するから王都に行くよ!と精霊王様に話したところ、それが終わったら連絡取れない時と空間の精霊王に会いに行くぞ!と約束していた。
晩餐会が終わると何故かルヴァイス様が待ち受けており、さぁいくぞ!とそのまま半ば強制イベント的な格好で私達はここに連れてこられた。
メンバーは私、カルロさん、ミレイユ、王子にシェールさんの5人。
極秘で来てるので本当に最小限のメンバーである。
今回は第一王子はシェールさんの格好ではなく本物の姿だ。
赤髪の利発そうな美形男性。
……なのだが、後ろに中身本物のシェールさんがいるせいでどうしても視線がシェールさんの方にいってしまう。
王子に話しかけようとしてシェールさんの方を向いてしまうのだ。
慣れって怖い。
「うん。そうだね。
以前はここにくれば精霊王様の霊力を感じられたのだけれど。
当時は8歳だったけれどあの霊力の感じは今でも忘れられない」
お前誰だよ状態の王子が肯けば
『確かに居ないねー』
『ここ居ないー』
召喚してもいないのに何故か光・緑の精霊王ハルナとサリナが現れる。
『お前たち、勝手に姿を出すんじゃない!』
と、今度は火の精霊王ラシュティムク様。
赤髪の美形さん。
勝手に姿を出すんじゃないといいつつ、自分も姿を見せるとか「なんでやねん!」と突っ込んだほうがいいのだろうか。
押すなよ!押すなよ!の前振りなのか判断がつかなくてつらい。
それに聖女が召喚しなくても精霊王様たちは勝手に私の前に来れるらしい。
あれ、今更だけどひょっとして私ってプライバシー皆無なのかも?
『これだけ霊力が感じられない所をみるとかなり長い時間ここを放置しているようですね』
と、茶髪の美人。土の精霊王ニーナ様もドロンと姿を現した。
『ああ、だがそこにいる人間が20年前に加護を得ている。
それまではここにいたのだ。
まだ何か痕跡はあるかもしれない』
言う氷の精霊王ルヴァイス様。
そう、最後にここで加護をもらったのが8歳の時のレナルド王子。
少なくともそれまでは時と空間の精霊王様はいたことになる。
ワイワイガヤガヤ会議をはじめる精霊王様達を見て
『君は一体何人の精霊王様に認められて聖女になったんだい?
複数人の精霊王様の聖女になるなんて前代未聞なのだけれど』
と第一王子がじと目で聞いてくる。
あれ、そういえば言ってなかったっけ。
聖女は各精霊王様が一人認定できる役職?らしい。
誓約者よりもずっと精霊王様との結びつきが強く、戦闘中に召喚することも可能なのだ。
私はルヴァイス様に聖女認定を頼んだら呼んでもいないのに助けた精霊王様皆から「聖女認定?していいの?じゃあ私もするするー」と近所の買い物に付き合うノリでなぜか聖女認定を勝手にされた。
だから有り難味がないっていうかなんというか。
などと考えていれば
―― ……だして ――
声が聞こえて私は振り返った。
「レティ?」
私の隣にいたカルロさんが振り返ったことに疑問を投げかけてきた。
「えっと。今声が聞こえた気が……」
―― 思いだして ――
カルロさんに答えたあと、今度ははっきりと声が聞こえた。
そう――いつか。
初めて王都についた時に聞こえた声と同じ声。
怖くなってカルロさんに抱きつけば、「レティ?」とカルロさんも私を抱きしめてくれる。
第一王子も危機を察知したのか剣を構えたその途端。
ぶわっ!!!!!!
風圧が私とカルロさんを包んだ。
「レティっ!?」
「お嬢様っ!!!」
慌てる王子とミレイユとシェールさん。
まるで何かに呑み込まれるような感覚に怖くなって精霊王様達に助けを求めようとすれば
『残留思念か』
『あの子に何か残していったようですね』
と、こちらが飲み込まれてるのに呑気に腕を組みながら精霊王様達が観察している。
『後で教えてねー』
『教えてー』
と、ハルナとサリナ。
うん。なんか危険はないというのはわかったのだけれど。
もうちょっと心配してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
何かに呑み込まれるその瞬間。私の叫びが虚しく響くのだった。











