第5話 6歳児の信用
「……ったく。お前はいつも俺たちの邪魔するよな」
ラディウス様がいなくなったとたん。金髪でヤンチャ盛りのリカルドが私に悪態をつく。
まぁ記憶が戻る前からこうだったので特に気にしない
「落ち葉そんなに拾いに行きたかったの?」
と、私が普通に尋ねれば
「あのねー。グレンお兄ちゃんのガクヒを集める予定だったのー」
と、ツインテールが可愛いロロちゃんが答える。
「リカルド。ロロ。その話はお嬢様にしたらダメだと言っただろう?
それに学費とかいらないから。
ちゃんとみんなのオヤツ代にでもしよう」
グレンお兄ちゃんが二人をメッと叱るが、聞いてしまったのだから仕方ない
「グレンお兄ちゃん学校行きたかったの?」
私が聞く。
この国で学校というと王都にある魔法学校サウスファディスしかない。
私は死亡フラグがたつので絶対行きたくない場所だ。
あそこは魔力と学力さえ高ければ平民でも特別推薦枠で入れる枠がたしかあったと聞いたことがある。
でもすごい勉強できないとダメだったはず。
代われるものなら代わってあげたい。
「う。うん。まぁ。
でもこの話は神官長様やカルロ様には言わないでくれるかな?
話せばきっと無理をしてでも入れてくれようとするだろうから」
微笑むグレンお兄ちゃん。
確かに。
ラディウス様あたり無理をしてでも王都にだしてくれそうな気もしなくもない。
「うん。わかった」
私はコクりと頷いた。
にしても……グレンお兄ちゃんどこかで見たことがある。
確かゲームの中で出てきた気がする。
どんな役割だったろう?
私がウンウンと考えていると
「それにしても。こんな桶を持って何する予定なの?」
今度はリンちゃんが聞いてくる。
「うん。塩を作ろうと思うの」
「塩?釜炊きでもするのかい?」
と、グレンお兄ちゃんが聞いてくる。
「ううん。ちょっと実験。
お兄ちゃんたちも手伝ってくれる?
ちゃんとお給与も出すよ!」
私がニッコリと言えば
「それはダメだよ。
レティからは何かもらっちゃだめって神官長様に言われてるもん」
速攻リンちゃんが反論した。
確かに。
お金持ちの私から何かもらってしまっては友人関係ではなくなってしまう。
単なる主従関係になってしまうのを神官長様は懸念してるのかもしれないけれど。
「だよー。でもお菓子はいいっていってたー」
今度はニコニコとロロちゃん。
この子は素直でよろしい。
後で一緒にお菓子を食べようと思う。
「違うよ。今回は遊びじゃないよ。ちゃんとしたお仕事だもん。
じゃあ成功したらパパ達に請求しよう!
私も貰う。
これならいい?」
私が聞けばグレンお兄ちゃんが子供の戯言だと思ったのか
「はいはい。じゃあそうしようかな」
と、ちょっとふざけて頭を撫で撫でしてくれるのだった。
■□■
「でもさー。何でうちの精霊王様ってよりによって氷属性なのかな。
火の属性なら就職だって引く手あまたなのに。
氷属性なんて何も役にたたないじゃん」
「え!?何で冷凍食品とか、暑い日氷で涼むとか役にたつよ!?」
リカルドの一言に私が慌てて反論すれば
「冷凍食品?何だそれ?
それにこの領地は暑いことなんてないだろ。
どこに役立つ要素があるんだよ」
……。冷凍食品。
そうか。ないのか。
もし作ったとしても保管する冷凍庫がないのだから作ったところで役立つかは微妙だ。
それに言われてみればこの領地、夏も涼しかった。
「じゃ、じゃあかき氷とか!」
「何それ?なんだか今日のレティ変なのー。
いつもならリカルドと一緒に氷魔法より炎魔法のほうがいいって言ってたのに」
リンちゃんが鋭いツッコミをいれてくる。
……う!?
確かに言われてみればそうだった。
現代日本知識がないころは氷魔法なんて糞役にたたねーと思っていた気もしなくもない。
「私は心を入れ替えたの!
現状を嘆いても、状況は変わらないんだから!
持っているモノを最大限に生かせるように努力するべきだと思うの!」
私がガッツポーズで言えば。
「レティお嬢様の場合、張り切る時はろくな事にならないからな……」
「いつも最終的には怒られる」
「ロロお菓子もらえないのは嫌ー」
「いたずらはダメだからね」
と、口々に言われてしまう。
………やべぇ。記憶を戻す前の私の信用のなさ半端ない!
6歳児なんてそんなものだと思う。
そうだよきっと。
きっとそうに違いない。
私はちょっと心の中で凹むのだった。