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第55話 入院

「お父様っ!!」

 

 あれから、王子に送ってもらいカルロさんが入院しているという病室に入れば


「ああ、レティ。心配してたよ大丈夫だったかい?」


 と、病室で普通にいつもの格好をしたカルロさんが本を読んでいた。

 なぜか私の方が心配されてしまう。


「襲われたのはお父様じゃないですか」


 私が口を尖らせて言えば


「加護があるから大丈夫だよ。

 心配させてすまなかった」


 そう言って微笑まれる。

 

 ああ、もう異性として意識しだしてからはこの笑顔ですらかっこよすぎてどうしようかと戸惑う。

 本当に王子はなんてことをしてくれたのだろう。


 意識しなければ父親と娘でいられたのに。


 どうせ叶うことのない恋。

 それも私の気持ちですら本当に恋なのか、それともレティの父を慕う気持ちを恋と勘違いしているだけなのかもわからないこの気持ち。

 自分の気持ちすら偽りじゃないかと疑わないといけないこの想いをはたして恋と呼べるのだろうか? 

 こんなに身体がレティのものであることが恨めしく思ったのははじめてかもしれない。


「……レティ?」


 カルロさんに心配そうに尋ねられ、私はハッと顔をあげた


「あ、ごめんなさい。何でもありません」


 私が言えば、王子がふむと頷いて


「お邪魔だったかな?」


 と、変なツッコミを入れてくる。


「じゃ、邪魔なんかじゃありません!!」


 私が慌てて言えば、王子はにこりと微笑んで、じゃあそういう事にしておこうかな?親子の会話をごゆっくり、と含みのあることを言って一礼して部屋を出て行ってしまう。


 あ、あんの野郎!!!


 私がワナワナしていると


「うん。久しぶりに二人きりになれたね」


 と、カルロさんが微笑んだ。

 ミレイユとセクターさんは病室まで入れない。

 少し離れた部屋で待機している。

 第一王子派の管理している警備の厳重な病院だから一定以上地位の高い貴族ではないと入れないからだ。


「そ、そうかな?」


「うん。最近忙しかったのもあるけれど、たまにはこういうのもいいかもしれない」


 ニコニコ顔で言うカルロさんに、私はため息をついて


「刺されたのに呑気すぎると思う」


 私が言えば、


「加護があるから、刺されたふりをしただけだよ。

 今密偵が犯人の後を追っているはずだから、そのうち裏がとれるだろう」


「じゃあ、ワザと刺されたの?

 お父様達は襲われる事を知っていたの?」


 あの王子そんな事一言も言ってなかったのに。


「もしかしたらその可能性がある程度だけどね」


 と、肩をすくめるカルロさん。

 そっかそれならよかった。


「犯人わかるといいね」


 私が言えば、


「どうせ黒幕には辿りつけないだろう。

 彼らもそこまで馬鹿じゃない。

 それでも、何もしないよりはマシだから」


「……私のせいだね」


「レティ。君のせいじゃないだろう。

 君が塩を精製する方法を見つけてくれなかったら私たちは全員死んでいたんだ。

 これくらいどうということはないよ。

 君は自分を責める癖を改めた方がいい」


 と、カルロさんが、私の肩に手をおいた。

 大きい温かい手。


「うん。そうだね。

 でも一つわかった事があるの」


「わかった事?」


 カルロさんが不思議そうに聞いてくる。


 目立たなければ、何もしなければ自分はセンテンシア領を守れると思っていた。

 でも、マリエッテがループの記憶を引き継いでいるというのなら、身を縮めて隠していても何も意味がない。

 あちらは最初からこちらを潰す気でいるのだ。

 だったら、こちらも全力で潰すまで。


「身を隠しても無意味だってこと。

 地位や身分がないと自分の身は自分で守れない。

 私が手に入れないといけないのは権力と経済力」


「……何も君が無理をしなくても。

 それこそ君には」


「精霊王様も第一王子も……お父様もいる。

 でもそれじゃあダメなの。

 これは私の戦い」


 カルロさんの言葉を遮って私は告げた。


 周りに過保護に守られて、何とかなるかもしれないけれど。

 それではきっと自分で自分が許せない。

 マリエッテは私の手で、裁かないといけない気がするのだ。

 何かの手段で第一王子だって王位継承者から引きずり下ろされないとも限らない。

 あちらの手駒にまだ、精霊王様を荒神化させた魔術師がいるのだから。

 

 レティの体がそれを望んでいるのか、私が望んでいるのかはよくわからない。


 けれど――自分に売られた喧嘩は自分で始末をつける。


 私が決意をもっていえば


 カルロさんは一瞬驚いた顔をしたあと


「なんだか少し話さないうちに随分大人になった……というのは失礼だね。

 本来の君に戻りつつあるとみるべきなのかな?


 君がそう望むならそうするといい。

 君がどんな道を選ぼうとついていこう。

 それが君との約束だから」


 と微笑んだ。


「やりすぎてお父様にひかれちゃうかも?」


 と、私が言えばカルロさんは微笑んで


「どうかな?記憶が戻る前の君はお転婆さんだったからね。

 やんちゃでやりたい事に全力で。それでいて真っ直ぐで。

 無謀な事も平気でやっていた。

 記憶を戻して萎縮していた頃の君よりむしろ今のほうが君らしいと思うよ」


「うっ。どうせ、お転婆ですよ」


 私がちょっといじければ、


「そこがまた可愛いよ」


 と、微笑んだ。


 ………。


 うん。本当カルロさんは無駄にイケメンだから困る。

 

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