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第54話 倍返し

「さて、あの男の尋問はあとでするとして

 モニカ・フォル・デルモリア。

 彼女がどうかしたのかい?」


 ゴトゴトと揺れる馬車の中で。王子が聞いてきた。

 あれからワルフは騎士達に秘密裏に連れて行かれた。

 王子の空間魔法でそのまま移動したので誰にも連れ出したのはバレていないだろう。

 あの男をどうするのか尋ねたけれど王子はにっこり笑って答えてくれなかった。

 たぶん怖い事をするのだろうと、私もそれ以上聞かない事にした。

 そして馬車に乗ってしばらくして王子は尋ねてきたのだ。

 

「やっぱり彼女はモニカなんですね。

 なんで貴族の令嬢が食事の配膳をしてるのですか?」


 私が聞けば


「彼女の家は爵位を返上してきた。

 4年前からの塩不足による不況の影響を受けて、財政を維持できず、爵位を返上するので援助できる領地に任せたいと」


「そんな!!今までそんなことは!」


「ああ、なかったね。

 だから私も歴史の改変に関係すると思い君の領地とデルモリア領を調べさせてもらった。

 君の領地もデルモリア領もどちらもクランベルダ領からの嫌がらせを受けていた」


「!?

 マリエッテの!?

 塩の嫌がらせにエシャロフ家だけではなくクランベルダ家も関係してたのでしょうか!?」


 カルロさんが欲しいエシャロフ家が嫌がらせしたのだとずっと思っていた。


「ああ、調べさせたが主導していたのはエシャロフ家ではなくクランベルダ家だ。

 かなり露骨な嫌がらせだね。

 君の領地は塩を自力で作り出して乗り越えたけれど。

 君の領地が自力でなんとかして手を出せないのを悟ったのか、嫌がらせがデルモリアの方に集中したんだ」


「……そんな」


「モニカは現在の君とは接点はないようだけれど、もしかして前世では知り合いだったのかい?」


「……レティの親友でした」


「ふむ。なるほど」


「……王子。

 レティはマリエッテに殺されます。

 それも社交界の場でマリエッテより目立ったからとかいうくだらない理由で生涯恨まれて、最後には処刑されてしまうのです。

 関係ない領地のみんなや、ただ仲がよかったというだけの理由でモニカも反逆者の罪を着せられて。


 でも、それはループ前のことだから。

 今のマリエッテは知るはずもない、やってもいない事で裁かれるのは違うと思って、復讐したい気持ちを抑えてきました。

 けれど、ワルフといいモニカの件といい」


 

 一言一言、言葉を絞りだす。


 ――そう、マリエッテは心底憎い。

 でも、まだ彼女は10歳で。

 前世ならともかく今世ではやってもいない事で復讐するのは違うと思っていた。

 けれどワルフの件、モニカの件を考えれば――


「マリエッテ・シャル・クランベルダもループの記憶を保持していると見るべきというわけか」


 そう。

 だって、今世の私は社交界どころか他領地にさえ行った事すらない。

 マリエッテとまったく接点がないのである。

 だからマリエッテに嫌がらせされる事なんてないはずなのだ。

 カルロさんたちだって塩の取引に動いたばかりでクランベルダ家とは接点なんてなかったと聞いている。

 嫌がらせされる理由なんてないはずだ。


 ワルフも歴史が変わって他の人の下で働いている可能性もあるけれど、モニカの件を考えればマリエッテの下で働いていると考えたほうがはやい。


「そう考える方が妥当だろうね。

 彼女も歴史がかわりはじめてるのは自覚しているだろう。

 だからこそ私を殺すためにあの男を派遣してきたのかもしれない」


 そう言う王子の声が冷たくて私はゾクリとした。

 まじ人を殺しそうな目をしている。

 ……この人味方で本当によかった。



 などと考えていれば。

 早馬が私達の馬車を止め、兵士の一人が王子に報告する。

 カルロさんが刺されて医者に運ばれたと。


 報告を受けたとたん、血の気が引くのがわかった。


 カルロさんが?

 なんで?加護があるはずなのにどうして?

 もしものことがあったらどうしよう。


 余程顔にでてしまったのか、騎士の人が「カルロ様は無傷ですが加護があるのがバレるのがまずいので一応医者へ」と補足してくれた。


 ああ、よかった。


 心臓が止まるかと思った。


「でも、なんでカルロさんが?」


 私が王子に聞けば


「恐らく実行犯は塩の利権にからむ商人か領主だろう。

 どこからかセンテンシア領が海水から塩を無限につくれる技術を開発したと噂が流れている。

 塩の利権団体がピリピリしていた所にきて、私との謁見だからね。

 噂が本当で塩を売り出すと勘違いした連中が脅しに来たのかもしれない。

 塩利権に絡んだ連中は第二王子派が多いからね。

 まぁ、噂を流して塩の利権に絡む領地などを焚きつけたのは誰だか大体は予想はつくだろう?」


 と、王子が肩をすくめた。


「マリエッテですか?」


「ご明答」


 答える王子。


 ふつふつと怒りがこみ上げてくる。


 あんの女。

 ワルフの件といい、モニカの件といい、カルロさんの件といい、歴史が変わっても嫌がらせしてくるつもりらしい。

 カルロさんに手をだしてくるとか許さんっ!!!

 処刑されるとき。白髪混じりでやせ細ってヨタヨタと歩くカルロさんの姿が浮かび、ぶちりと私の中で何かが切れるのがわかった。

 カルロさんもモニカも領地のみんなも第一王子も全員を不幸にしたのがマリエッテだとわかった今。

 何一つ遠慮する要素なんてない。


 ああ、いいだろう。

 そっちがその気ならその勝負受けてやろうじゃないか。


「レ、レティ?」


 黙ってしまったせいだろうか。

 王子が心配そうに声をかけてきた。


「王子。本来の私は売られた喧嘩は全力で買うタイプです」


「……え?」


「あちらが喧嘩を売って来たというのなら全力で買います。

 倍返しでっ!!!!」


 私の言葉に王子が、う、うん……?とたじろぎながら答えるのだった

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