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第52話 ゲームの変化

「彼女が気になるのかい?

 食事もろくに喉を通らなかったようだけれど」


 とぼとぼと食堂から馬車に戻る通路で。

 王子が聞いてきた。


「……はい。理由は後で話します」


 俯いたまま答える私。

 モニカは前世ではレティの親友で。

 レティと同じく貧乏な領地の娘だったけれど普通に貴族だったはずだ。

 それなのに。

 彼女があそこまで没落してしまったのは。

 歴史を変えた私の責任なのかもしれない。

 だって本来の歴史なら彼女は貴族のはずなんだから。

 とにかくモニカの処遇をあとでちゃんと王子に頼んでフォローしないとなどと考えていれば……

 寒気に似た何かを感じる。

 物凄く嫌な感じ。


 私は慌ててミレイユの後ろに隠れた。


「……レン?」


 ミレイユが声をかけたので王子も取り巻きの騎士達も一斉に私に視線を向ける。

 私が身体を固めたまま凝視していれば。

 前から歩いてきたの商人の格好をした……ゲームで見たマリエッテの取り巻き魔導士の一人だった。


 ■□■


「フーハッハッハッハ。

 この者たちは私の魔族の血によって操られている!

 さぁ、どうする殺せるか!?」


 説明口調のセリフで魔導士が告げるシーンが思い出された。

 そうゲームの1シーンだ。

 主人公と第三王子VSマリエッテと第二王子、ワルフという格好で対峙している。

 確か魔王を復活させるのを阻止するために立ち向かうイベントシーン。

 そこで立ち塞がるのがこの魔導士ワルフなのである。

 彼は時間をかけ、騎士達の食べ物に魔族の血を混ぜ、自らの操り人形にしていた。

 騎士達の食事係に紛れ込んで、鑑定にもひっかからない量の魔族の血を毎日毎日騎士達に食べさせていたのだ。


 第二王子とマリエッテが国家を乗っ取るそのために。


 私は唐突にそれを思い出した。けれど何事もなかったかのように振る舞う。

 そうだ。なんで忘れていたんだろう。

 レティが死んだ後、マリエッテは魔王を復活させようとして主人公に阻まれる。

 その部下の中にこの魔導士がいたはずだ。


 レティに気をとられてばかりいて、レティが死んだ後の事をメモしていなかったのが悔やまれて仕方ない。


 確か魔族の血は王族には効かないみたいな説明があったはずだが、そこらへんはどうでもいい。

 問題なのはすでにその魔導士がこの騎士達の食料を管理するところに入り込んでしまっていること。


「シェール様」


 私がひょいひょいと裾を引っ張れば、王子も何か察したようで目線で護衛の騎士に指示をだす。


 途端。


 ダッ!!!!


 ワルフがダッシュで反対方向へと逃げ出した。

 どうやらこちらに感づいたらしい。


 ああもう!?


 私が露骨に態度に出しすぎたせいだ!!


 だがワルフが逃げ出すよりはやく、城内の景色が白黒へと変化した。


 そう――王族だけが使える空間魔法。王子が魔法を瞬時に発動させた。

 途端景色が変わり、私たちとワルフ以外の人物が消える。


 敵側だったときは恐ろしい技だと思ったけれど味方になると頼もしい。


 ワルフもそれを察したようで、慌てて魔法を使おうとするが発動しない。

 でも――


「気を付けて!!!

 この魔導士は魔族の杯を受けています!!!

 空間魔法の中でも魔法は使えます!!!」


 私の言葉に王子と取り巻きが身構えた。


 そう、ワルフが魔法を使えないように見せかけたのはフェイク。

 あいつがゲームの中で第三王子の空間魔法の中でも魔法が使えたのは私は知っている。


 というか今思い出したのだけれど!


 チッとワルフが舌打ちしたその瞬間。

 ワルフが自爆のための呪文を唱え始める。


 だけどもちろんそんなことをさせるわけがない。


『氷結!!!!』


 王子と手をつないだ私の魔法が、ワルフが何かする前に凍らせるのだった。

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