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第48話  図太く、強く、たくましく!

「何があったんだいレティ?」


 迎えに来てくれたカルロさんに抱きついたまま、私は離れない。

 あの後自分でもどうなったのかよくわからない。

 ずっと部屋の片隅でワンワン泣いていて、気づいたらカルロさんが迎えに来てくれていた。


 そのまま用意されてた部屋に戻って落ち着いた所で、カルロさんが聞いてくる。


 

「何か嫌な事を言われたのかい?」


 カルロさんの問いに私はぶんぶんと首を横に振った。


 別に彼は悪いことは言ってない。

 もっともな事を言っただけだ。


 それを勝手に悪い方に受け取って一人で勝手に傷ついて、一人で勝手に怒って、最終的には泣いてるしかできない自分に腹がたって仕方ない。

 その気持ちをカルロさんに思いつく限りの言葉で伝える。


 自分でもなんでこんなに怒ってるのか。何が悲しいのか。よくわからない。

 性格が悪い自分を指摘されて逆切れしている自分が嫌だ。


 たどたどしく自分でも何を言っているのかわからない説明をカルロさんはうんうん頷いて聞いてくれた。

 

 泣きじゃくりながら説明を終えれば、カルロさんは頭を撫でてくれて


「レティは生真面目すぎる。

 もう少し肩の力を抜いていいんだよ?

 嫌なものは嫌でいい。

 悪いことじゃない」


「……え?」


「責任をおいたくないなら、放りだしたって構わない。

 それでいいじゃないか。

 君は一領主の、貴族の娘でしかない。

 そこまで責任を持つ必要があるのかい?」


「……でもっ」


 私が反論しようとすればしーっと綺麗な指を唇に押し当てて、



「いいかい。

 嫌なことは上になるべく押し付ける。

 それとなく気づかれないようにやるのがポイントだ。

 自分はいかに真面目にやってるかをアピールするのも忘れないようにね?

 責任が上にいくようにもっていくのが腕の見せ所だよ」


 と、おどけて見せてくれるのがおかしくて


「ちょっと意外。

 お父様は責任を全部自分で背負っちゃいそうなイメージなのに」


 私が笑って言えば


「うん。そう見えるように頑張ってるから。

 頑張っているように見せるのがポイントだ。

 何も君が人類のために奉仕する義務なんてないんだよ?

 自分のやりたい事をやって、何も悪いことなんてない。

 そのために周りに大人がいるんだろう?」


「でも……」と反論しかければぎゅっと抱きしめられる。


「もう少し肩の力を抜いて。

 いいかい君の論理でいけば、何でも解決できるはずの神々が何もしていないのだって悪になってしまう」


 言われてみれば確かにそうかもしれない。

 カルロさんの言葉にそうなのかな?と私が小首をかしげれば


「君は真面目すぎるんだよ。

 同意なしに召喚されたんだから好きにやるくらいの気持ちでいじゃないか。

 君一人で独断で進めているならともかく、ちゃんと周りに相談して決めた事なら、責任は最終判断をくだしたのは上の判断だ、くらいの気持ちでいい。


 君の人生は君のものだ。

 この世界の為に奉仕するためにここにいるわけじゃない。

 たとえ何があっても、私は君の味方だから」


 そう言うカルロさんの言葉が心地いいけれど。


「お父様、それまるっきりダメ親の教育方針だと思う。

 甘やかしすぎ」


 私がいえばカルロさんが微笑んで


「うん。ダメ親だからね。

 私は完璧な親になるつもりなんてないよ。

 君が幸せならそれでいい」


 親としてどうかと思うセリフをさらりと言う。




 そうだ。カルロさんが私を好きでいてくれるならそれでいいじゃないか。

 何故人類全体にいい子ちゃんでいようなどと気負っていたのだろう。

 何か物事を進めようとすれば、どこかしらで被害はでるかもしれない。

 でも助かる人だってでてくるはずだ。


 模範になるようないい子でいようとするから息苦しくて。

 模範になるようないい子じゃないのに無理をするから破綻する。


 カルロさんの言うとおり、精霊王様も王子も、損得を計算した上で決断を下すだろう。

 精霊王様や王子が下した決断を自分の責任にしてしまうのは、ある意味傲慢だ。


 カルロさんが私を好きでいてくれるならそれでいいじゃない。

 やりたい事をやって、何が悪い。



 私はそのままぎゅっとカルロさんにしがみつけば、カルロさんも抱きしめてくれる。


 私にはこのぬくもりがあれば十分なはずなんだ。


 自由に、自分らしく。


 レティじゃなく、私を取り戻すために。


 図太く、強く、たくましく!


 私は心に誓うのだった。

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