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第45話 王都につきました

「ようこそレティ。待ってたよ!」


 あれからしばらくして王都へと出発し、長い長い馬車の旅をおえて。

 私を王都で出迎えてくれたのはシェールさんに姿をかえた、第一王子レナルドだった。


 私たちは数名のお供の騎士とカルロさん、セクターさん、ミレイユと王都へと来ていた。

 ラディウス様はお留守番。


 そして王都につくなり、第一王子(偽物)と謁見をしないといけないとかでカルロさんは王宮に、私はカルロさん達と別れミレイユと行動することになったのだが。

 なぜか王子側から護衛として送られてきたのが変装した王子本人だったというオチなのだ。


 ……この王子暇なのだろうか。


 思ったことが顔にでてしまったのか、


「酷いなレティ。

 私は君が来るのを待ちわびてたのに」


 と、言うシェールさんこと王子。


「シェールさんは何か企んでるイメージがあります」


 私がジト目で言えば


「ははっ。

 何か企んでるに決まってるじゃないか」


 爽やかな美形顔でいう。

 隠す気は微塵もないらしい。


 カルロさんたちは本物がここにいるのに偽物にわざわざ会いにいくとか、まったく意味のわからない状況なのだけれど、一応一度正式に面会しているという実績を作っておきたいらしい。

 後ろでミレイユが苦笑いしているが、上級貴族ではないのでこちらが話をふるまで喋る事すら許されない。

 ちなみに私は弱小とはいえ、シェールさんと表向きの立場は対等なのだそうだ。

 経済力は全然違うので実質的にはシェールさんの方が全然格上だけれどね。

 喋り方もこれでいいと言われている。

 そのほうが王子も気楽だと。


「どこも否定になってないのですけれど」


 私がジト目で言えば


「うん?否定する気はまったくないよ?

 君にはいろいろ頼みたい事があるんだ」


「えええ!?私は魔道具の本とか見に行きたいのに」


「なんだ。そんな事なら、こちらから送るよ。

 ああ、どうせなら、優秀な教師も君の所に行かせよう。

 そのほうが車もはかどるだろうしね」


 と、ニッコニコで言う。

 ……う。いらないと言いたい所だけれど、授業はちょっと受けてみたい。

 不思議なもので日本にいたときは勉強なんて好きじゃなかったのに、魔道具みたいに実用的なものが作れると途端勉強も楽しくなってくる。

 日本で見かけたものを再現してみたいという欲求というか何というか。

 好条件をつけられて断れるほどの意思もなく


「シェールさんが私に頼みたい事ってなんですか?」


 私がおそるおそる聞いてみれば


「うん。料理のレシピを教えて欲しい」


 と、にっこにこで言う。

 そういえば王子はうちの領地で食べた和食を気に入ってくれていた。

 日本人が作ったゲームだけあって洋風のメニューのレシピは普通に発展しているのだけれど、和食風のメニューは一切なかったので物珍しかったらしい。

 6歳から10歳になる間に私は日本食再現をだいぶ実現できていた。

 ラーメンとか生姜焼きとかをご馳走したところ物凄く気に入ってくれたのだ。

 まぁ、物珍しかったというのもあると思う。


 でもこれは、タレを作って全国販売とかしたら売れるフラグなのだろうか?


 それにしても


「それならセンテンシアにいるときにいくらでも教えたのに」


 特にレシピを秘伝にはしていない。

 この世界特許とかないし、秘伝にしたところで意味がない。

 観光地にしてお客をバンバン領土に呼ぶとかは治安が悪くなるからやりたくないし。

 だから料理長に聞けばきっとペラペラ教えてくれたはずなのにな。


「うん。コックに聞いて教えてもらったレシピで再現はしてるんだけれどね。

 どうも君の領地で食べた食事とは違うんだよね。

 何でだろう?」


「レシピは同じなんですよね?」


 私の問いに王子は頷いて


「ああ、教わった通り作らせた」


「なんででしょう?素材の違いでしょうか。

 思い出補正とか?」


 私が答えれば


「それがわからないから一度君に見て欲しいんだ」


「なるほど」


 もしかして調味料とか品質の違いかな?

 日本ではそれでよく父が、どこの塩がこのラーメンにはよく合うとか薀蓄を言っていたのを思い出す。

 

「私は料理の事はさっぱりだからね。

 その点も料理長に教えてやってほしい。

 それと、例のものの作り方も。

 確か何かコツがあると言っていたよね?

 遠征にもっていく量をセンテンシア領の住人だけで作るのは無理だろう。

 私の方からも人を送るよ。

 ああ、もちろんちゃんと報酬は払うよ

 そういう約束だからね」


 ああ、例のというと、フリーズドライか。

 確かにセンテンシアの人材だけじゃ間に合わないかもしれない。

 一応賞味期限を考えて三ヶ月前くらいから制作予定だし。

 何日もつかは何年もかけないと正確に検証できないから。


「それは構いませんけれど……」


 せっかく王都に来たのに教えるだけで終わるとか嫌だなぁ。


「大丈夫。

 ちゃんと王都も案内するよ。

 さぁ、行きましょうかお嬢様?」


 と言って王子が笑って私の手をとった。

 この王子、子持ちらしいけどこんなに気軽に女性の手をとってもいいのかな?

 シェールさん扱いだからいいのかもしれない?

 そういえば王族はガチで血筋が途絶えると神器が使えなくなってやばいから妻は何人いてもいいらしいからOKなのかも。


 などと考えながら見つめれば、王子がにっこり微笑んで手を差し出してくる。

 貴族的には確かそのままエスコートされるのは普通だったはず。


 私は王子の手を取った瞬間。


――思い出して――


 声が聞こえた。


「え!?」


 私が思わずキョロキョロすれば周りには王子とその護衛しかいない。

 先程の声は女性だったような気がする。

 空耳だろうか?


「?

 どうかしたのかい?」


 王子に聞かれ私は首を横にふった。


 多分気のせいだったと思うから。


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