第40話 第一王子のお誘い
「レティやっぱり僕のお嫁にならないかい?」
また今日も王子が一人の時を狙いすましたかのようにやってきて、冗談なんだか本気なんだかわからないお誘いをしてくる。
てか、王子って時々気が抜けると自分のことを僕呼びするのはキャラクターなのだろうか。
カルロさんたちは王子が引き連れてきた騎士達と領土の砂糖畑などの説明をしているのでいまは不在だ。
私も本来ならカルロさんに剣の修行をつけてもらっている時間なのだけれど、皆忙しそうなのでなかなか頼みづらい。
というか何故この王子は一緒にいかないのだろう。
一番見聞しなきゃいけない立場なのに。
「お子さんが嫌がるはずでしょう?」
私が言えば
「政略結婚ということにすれば、大丈夫だよきっと」
と、身も蓋も無いことを言ってくる。
「まったく愛のない結婚のお誘いは初めてです」
と、私。
「うん。下心しかないからね。
だから高待遇だよ?
愛人を作ろうが君はこの領土で好きにやればいい」
うん。もうなにその形だけの結婚宣言。
ロマンも何もないじゃない。
「それ結婚する意味あるのでしょうか?」
「いやだなぁ。精霊王様達に愛される聖女を自国に囲っておきたい下心に決まってるじゃないか」
笑顔でトンデモ無いことを言う。
え、それ隠さないでいうこと!?
もうちょっとそれらしい嘘をついてその気にさせるとか!
こうイケメンらしく甘い言葉で囁くとか!
方法はいろいろあるのに!?
この王子聡いのか、間抜けなのかよくわからない。
「もうちょっとこー。他に言い方があるでしょう!?
何そんなにぶっちゃけちゃってるんですか!?」
「だって君、綺麗事で飾って話すより、本音を話した方が安心するタイプだろう?」
ニコニコという王子に私はうっと言葉につまった。
確かに。
綺麗事で飾られた理由を述べられても私ならきっとその裏を探るだろう。
皆に言われるくらい心配性だし。
やっぱりこの人侮れない。
人を見抜く目は確かにある。
「精霊王様に釘を刺されていなければ、君を聖女として祭り上げていたね。
前にも言ったと思うけれど、精霊王様と話せる人間なんてここ500年聞いたことはない。
記録にあるのは500年前。一人の神官が精霊王と話したということだけれどそれ以外の記録はない。
しかも話せるだけでなく、複数の精霊王様の加護をもらってるなんて前代未聞だよ」
そう言って肩をすくめてため息をつく。
そうなのかな。
確かゲームの主人公ちゃんも加護を複数貰っていた気がするけれど。
珍しい事なんだ。
「本来なら王都に連れて帰ってすぐにでも保護しなければいけない案件なのだけれどね。
そんなことをすれば精霊王様に怒られてしまうから。
それに精霊王様が君を守っているなら大丈夫だろう」
と言って紅茶を一口すすり
「と、いうわけで。
私はいつでも待っているから。
気がむいたらいつでも申し出てくれるかな?」
にっこにこ顔で言うけれど
「そんなことはないので安心してください」
と、私もニッコリと答える。
王子はこれは手厳しいと冗談まじりに微笑んだ。
この王子は本当にどこからどこまでが本気で冗談なのかわからない。
ちょっと警戒しておかないと。
お茶に砂糖をいれながら、そう心に誓うのだった。