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第35話 第一王子

「え。王子様も……?」


 王子様の言葉に、つい私が言葉をもらし


「レティ」とカルロさんに睨まれて慌てて私は口を手で隠した。


 うう、つい言葉が。


「ああ、やっぱり君もか! 

 よかった君に話を聞きたかったんだ!」


 と、王子が感動したように手をあげて近づこうとするが、まだ信用してないのかカルロさんが一歩下がる。


「ああ、そうだね警戒されたままだった。

 とりあえず私の話を聞いてほしい」


 そう言って王子は語りだした。

 

 王子の場合は唐突にループしていたことをダンジョン探索中に閉じ込められた所で思い出す。

 その中で何日も過ごすうち水も食料もなくなり餓死していく運命だった。

 最初の頃は生き残ろうと必死にあがいた。

 一番酷いパターンだと生きてる人間が死んだ人を食べるという事もあった。

 だが最後はお前のせいだと生き残った兵士に殺されたり、王子だけでも生き残ってくださいと、自ら死んで肉を差し出そうとしたりと生き残ったメンバーでいろいろパターンはあるものの結局餓死する。


 20回目あたりからは、どうせ苦しんで死ぬしかないのだと、閉じ込められた時点で王子自ら皆を殺すようにしていたとか。苦しまないように。


 繰り返す地獄に、頭がおかしくなりそうになるが、何故か今回だけは違った。


 いつもはダンジョン探索中にループしていた過去の記憶を思い出すのに、今回だけは何故かそれよりもずっとはやくループを思い出したのだ。


 何か今までと違う事は!?


 と王子が必死になって調べた結果。この領土にいきついた。

 塩を氷魔法で作り出すなどという話は今までのループで一度たりとも聞いた事がなかったからだ。

 もうあの地獄を二度と体験したくないと強く願うあまり、私に強引な方法をとってしまったと、謝られた。

 部下の一人を王子に変装させて王都で影武者をさせ、王子はその部下の姿になってここに乗り込んできたのだとか。

 

 私も荒神の事を伏せて何故かループを憶えていて未来をかえたと話せば


「なるほど。つまり、君のおかげで歴史が変わったと言う事だね」


 と、王子。


「私のおかげというのかは微妙ですけれど。

 たぶん、そうなります。

 まだ確実に変わったとは言い切れません」


 私が言えば王子が首を横にふり


「いや、私が記憶を思い出した時点で未来は変わったと思っていい。

 いままで一度もこのような事はなかった」


「じゃあ、王子もダンジョン探索を断れば死なないですむのでしょうか?」


 私の問いに王子は首をふり


「それも考えた――が、それはダメだ。

 最初のダンジョン制覇は国が行わないと、国の威信が保てない。

 死ぬと解っているものに他の王子を参加させることはできない」


 と、王子はため息をついた。


 ……そんな何度もループをしてて酷い目にあっているのに、他の王子の心配をする所をみるとこの王子もかなりいい人なのかもしれない。


「それにしてもおかしいですね。

 ダンジョンで生きている日数は長い時で25日。短い時で10日。

 それ以後はすぐ自害なさったようですが、最初の頃はそれなりの間があるのに救助隊の助けがないとは……」


 と、カルロさん。

 確かに。私の書いた紙では発見は2、3日早ければ助けられたと書いてある。

 なのに、長く生きていても助からないなんて。

 その最長の25日の時の記録なのかもしれないけれど。


「いつも最後まで生き残った人物はいましたか?」


 と、カルロさんが聞けば


「ああ。確かクジャーナル卿……まさか?」


「はい。王子の死亡を確認してから救助を呼んだ可能性があります」


 王子の問いにカルロさんが頷いた。

 でも、何でいちいちそんな事をしたのだろう?

 わざわざ死亡予定の部隊に入るのって結構リスクあるよね?

 一年後くらいに探せばいいだけの話じゃないだろうか。

 

 私が?マークを浮かべていたのに気づいたのかカルロさんが耳もとで


「死体が発見されなければ、いつまでも王位継承権第一位が第一王子のままだからだよ。

 この国は王位継承権の決まりが独特でね。

 既に王子には子供がいる。レナルド王子の死亡が確認されない場合、王位継承権は第一王子の子供が第一位になる。

 そしてダンジョンはあまり時間がたつと、死体も消えてしまう。

 つまり死体を発見されないと困る人物が第一王子をわざと罠にはめた可能性がある」


 と、呟いた。

 なるほど!

 ……ってことは……犯人は王族の中の誰かってことに。

 というか、もう犯人は第二王子しかいないって事だよね。

 王子本人が絡んでいなくても、王子に関係するその側近で間違いない。

 第三王子はあまり後ろ盾のない王子でゲームのヒーローだし。


 私が言うまでもなく、王子もその事実に気づいたらしく、かなり怖い顔になっている。


「……なるほど。

 わかった。ここに来て本当によかったよ。

 大分問題点が見えてきた。

 感謝する。この礼は必ずしよう」


 と言って王子が立ち上がろうとするが


「お待ちください」


 と、カルロさんが止める。


「……?」


「もし、この推理があっているのならそれはそれで問題があります。

 外部の者と連絡が取れる方法を所持していたことです。

 ダンジョンでは通信系の魔道具は使えないはず。

 それなのにダンジョン内で連絡が取れていたということは……」


 カルロさんの言葉に王子がふむという顔をして


「なるほど、かなり高位の精霊と契約した何者かが手を貸しているということか」


「はい。うかつに手を出せば、呪い等別の手段を講じてくるかもしれません」


「それは困ったな」


 王子が考え込めば


『なるほど。どうして。

 なかなか面白い話をしている――』


 と、声が聞こえ――風とともに突然現れたのは精霊王様だった。


 ■□■


「せ、精霊王様!?」


 突然現れた精霊王様に私が驚きの声をあげれば


「精霊王様!?まさか……っ!?」


 王子が膝をついて祈るようなポーズをとる。


「なかなか面白い話をしていたのでな。

 参加しにきた」


 と、銀髪の人間の姿でこともなげに言う。

 いつもと違い、心の中に話しかけてくるわけではなく、ちゃんと口で言葉を発していた。

 王子様がいるからだろうか?


「面白い話?」


 私が小首をかしげて聞けば


『我らを荒神化した魔導士の行方がいまだにわからんのだ。

 だが、我らも自らの領土外にでられてしまえば手出しできん

 一番いる可能性が高いのはお前らが王都と呼んでいる場所だ。

 あそこの精霊王は、ほぼ寝ているため連絡がとれん』


 と、心の中に直接話しかけてきた。

 恐らく第一王子様に聞かれないためだろう。


『えええ!?もう捕まったのかと思ってました』


『まだだ。

 が、流石にもう荒神化などふざけたマネはさせんがな。

 詳しくは言えないがすでに対処はしている。

 だが、それとは別に我らとしてもそ奴を捕まえたい。

 恐らく、隠れているのは人間が王都と呼んでいる場所だ。

 王都に少しでも干渉できる手駒がほしい。

 と、いうわけで交渉に入る。

 レティ、お前は席をはずせ』


『え!?』


『大人の会話だ。

 お前は口を滑らせる事が多い。

 交渉事には邪魔だ』


 と、目を細めて言われてしまう。


 ううう。反論できない。

 確かに言われてみればそうかもしれない。


『だが誓約者お主は残れ、我では人間界のルールがよくわからぬ。

 この領地になるべく有利に交渉をすすめろ』


 と精霊王様がカルロさんに言えば、無言で頷いた。

 ちょっと仲間はずれ感がするなーと思うけれど


『大丈夫だよ。レティ、決まった事はきちんと話すから』


 カルロさんに肩を抱かれ、私は頷くのだった。

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