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第33話 車を作ろう!


「これが以前おっしゃっていた車……ですか?」


 中庭でラディウス様が不思議そうに聞いてきた。

 目の前にはででーんと私の努力の結晶が鎮座している。

 私が作った車……ていうよりはヤクル●レディが乗ってる三輪バイクみたいなやつだけど。

 そう!魔道具の作り方を教わってもう4年。

 

 一度作ってみたかった車!

 それの記念すべき第一号。試作品の三輪バイクだ。

 ハンドルが自転車みたいで操縦者が魔力を注ぐと、三輪バイクが走るというものだ。

 後ろに荷台をつくっているので後輪駆動になっている。

 ちなみに流石に大工はできないので図面を描いて領地の大工さんに頼んで三輪バイクを作ってもらった。

 素材は木製だよ!

 うちの領土は燃料がないのであまり鍛冶が発展してなかったので、複雑な構造を頼める鍛冶屋さんがいないので木製にしてみた。

 まぁこれをそのままペダルをつけて人力で動く三輪車にしてもいいのだけれど……それはそれ!

 夢は自動車なのだ!

 ややオタク気味の私としては実用性ではなくロマンを求めようと思う。

 とりあえず今回は魔力で動かすことを心がけてみた。

 魔力を通すと、タイヤが廻るようになっている。


 ちなみにタイヤはこちらの世界のラップを利用してつくった。

 試行錯誤する事2年。

 わりと渾身の出来だと私はえっへんと胸をはった。


 タイヤを廻すくらいの魔道具はまぁ……小学生レベルでも作れるものなのだけれど。

 なにせ最初にチャレンジするのが石臼を廻す歯車みたいなのを廻す魔道具なのだ。

 廻すだけというのは簡単な部類。


 三輪バイクの構造=たんなるパクリ。

 タイヤを廻す魔道具=小学生レベル


 で、何を頑張るのかと言われれば、私だってタイヤを作るのを頑張ったんだよ!

 あとは素材。ハンドル部分から魔力を通しやすくして、極力小さな魔力でも馬力がでるようにしてとか、こだわりをいっぱい詰め込んだ。

 ここは私の努力だと思う。うん。たぶん。

 タイヤの方はマウダースパイダーは糸を出す時に魔力を注いで獲物によって糸の強度を変えていると聞いて、固める前の段階で魔力を流して見た結果。


 弾力性などを調整出来ることを発見した。


 これを試行錯誤してタイヤのような弾力性と強度をゲットした。


「これは凄いですね」


「でしょ!みてて!」


 私が三輪バイクにのって魔力を流せばそのまま三輪バイクはキコキコと走り出す。

 魔力調整に配置した器具もちゃんと作動している。

 整備された城壁内の道だけどわりと快適に走っていた。


 うふふふ。わりと快調!

 これなら魔道具に詳しい人ならもっと凄いモノを作れるはずだね。

 将来的にはボタン一つで速度調節ができるようにしないとな。

 でないと気分が高ぶって魔力注ぎすぎて、暴走とかあるし。

 あと魔力がない人でも車を動かせるように魔石でも動くようにしたい。

 ああ、夢は膨らむ一方だ。やりたい事がたくさんある。

 ラディウス様もわりと魔道具オタだから結構凄いものを作ってしまいそう。

 と、思ってラディウス様の方に振り向けば、ラディウス様の目が光り輝いている。


 ……やばい。

 創作意欲にものすごい火をつけてしまったのかもしれない。

 これはまた部屋に篭って研究を始めてしまいそうな勢いかも。

 最近あまりラディウス様がかまってくれないと嘆いていたリンちゃんとロロちゃんに、ごめんねと心の中で呟くのだった。



 ■□■


「レティ。そんな所で何をしているんだい?」


 一通りの授業を終え、夕食までの間暇だったので屋敷の庭の木の上で遠くを眺めていればカルロさんに話しかけられた。


「うん。外を見てたの。

 精霊王様が広くしてくれたおかげでうちの領地もだいぶ広くなったなーって」


 そう、館は位置的に大分高い位置にあり、城壁外も一望できる。

 本来あった城塞のさらに外をぐるりと高い塀が囲ってあるのだ。

 そこは一面畑になっていて、うちも収穫が大分増えた。

 精霊王様が、他領土に気づかれないようにとこっそり森の中にも畑をつくってくれて牧草がつくれる余裕ができたから。

 餌が作れるようになり酪農も盛んになったため前よりもお肉も食べられるようになったし。


「ああ、そうだね。

 これもレティのおかげだ」


 と言ってカルロさんがひょいっと私の隣に座る。


「違うよ。精霊王様のおかげ。私は何もしてないよ」


「君が命がけで精霊王様達を助けたからだろう?

 もう少し誇っていいと思うよ」


 そう言って微笑むカルロさん。


「うーん。精霊王様を助けたかったというよりも……。

 あの時はパパを助けたい一心だったから。

 精霊王様の事はあまり考えてなかったというか。

 ちょっと感謝されるのは違う気もするんだ」


 私が言えばカルロさんは感動したようで「レティっ」と昔のくせで抱き上げようと手を広げ……そこで停止する。

 どうやら10歳の少女には流石にこれはいけないと考えているようで、ぷるぷるしたまま止まると、うなだれた。

 私は別にいいのだけれど、この世界で10歳は子供から大人扱いになる節目でもあるそう。

 日本でも10歳って言えばもう小学校高学年だ。

 そろそろ親離れしてくる時期だものね。

 でもいままでしてたのが10歳になったからって急になくなるのも寂しい。


「別に人目がないならいい気もするのに」


 とつい、後半は声に出して言ってしまえば

 


「あ、いや、君はその……娘だけれど、でも違うというか……。

 実の娘のように大事で、その心に偽りはないんだ!

 でも、やっぱりその距離をおかないといけない所はそろそろ置くべきだと思うんだ。

 精霊王様も年齢が上がるにつれ本来の君に戻ると言っていたからね」


 何と説明していいのかわからないようで珍しくカルロさんが慌てふためく。


 ああ、何となくその気持ちわかる気がする。

 私にとってもカルロさんはパパだけどパパじゃないっていうか。

 やっぱり心の中に本当の日本のパパが存在してしまっている。

 もちろんカルロさんも物凄く大事だけれど。


 こう大事なのはパパとしてだけじゃなく、カルロさんとしてなのだ。

 なんだか自分でも何を言ってるのかよくわからないけれど。


「うん。そうだね。

 大丈夫。言いたい事はよくわかるから」


 私がにっこり微笑めばカルロさんも微笑んでくれるのだった。

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