第31話 思いつき
「まったくお前は次から次へと。
とんでもない事を思いつくな」
ジッパー付きビニール袋の開発をセクターさんに頼めばセクターさんがうめいた。
「お前が考えたものを売れれば、この領地も潤うんだがな。
売れないのがもどかしいくらいだ」
と、ため息をつく。
「いつか売れるといいね」
私が言えば、
「お前、もし売れたとしたら毎日フリーズドライ食品つくりで、一日潰れるぞ。
魔法はお前とカルロしか使えないからな」
と、セクターさんにジト目で言われる。
「う。それは嫌かも」
毎日それしかできないのはちょっと、というかかなり嫌だなぁ。
やりたい事いっぱいあるし。
魔石があるなら電気の代用で車とか作れるかもしれない☆という夢を実現したい。
タイヤだってラップを固めればなんとか行けそうな気がするし。
知識がすごくあるわけじゃないけれど。
こう馬車レベルの車ならなんとか作れそうな気がする。
異世界転移してしまったからにはやってみたいことが山ほどあるのだ。
気球もいけそうな気がするけれど。
これは作ると、他の人にマネされて盗賊とかが空から襲撃とかありそうで、なんかヤダ。
「でも、このフリーズドライ食品があれば第一王子も死なないですむのかな?」
そう、これから四年後に発見される新ダンジョン。
そのダンジョンに第一遠征隊として挑み、第一王子は命を落とし第二王子が実権を握ってしまう。
命を落とした理由は遠征隊毎ダンジョンのエリアの罠にひっかかり、全員部屋から出られなくなったから。
捜索隊が見つけた時にはすでに全員餓死し、あと2、3日はやければ助かったかもしれないと書いてあった。
もしかしたらフリーズドライ食品があればその2、3日を乗り切れるかもしれない。
「……そうだな。
しかしなぁ。
確かに王位を第一王子が継いだほうが国は繁栄するだろうとは思う。
嫌がらせなどを考慮すれば王位を継ぐのは第二王子より第一王子のほうがいいだろう。
だがな。オレらがリスクを犯してまでやる事かどうかって言われるとな」
と、セクターさんが考えこむ。
「リスク?」
「お前のフリーズドライのおかげで第一王子が助かった場合。
邪魔になった第二王子はどうなる?」
「……あ」
セクターさんの言葉に私が思わず声をあげた
「そうだ。邪魔な第二王子をこっちに押し付けてくる可能性も0じゃない。
第二王子の事はオレらはお前の記憶で腹黒野郎と知っているが、第一王子は信用していると聞いている。
利権にそこそこ絡めるが陸の孤島で、精霊王様の森を通る手前、兵士の大群を通らせる事はできない。
よってこの地で兵を集めて出兵というのは無理だ。
反乱は起こしにくいし、そこそこ潤っていて追い出したと批難されにくい領地は、邪魔な王族を追い出すにはぴったりじゃないか?」
「ヤダっ!!!絶対ヤダっ!!!」
レティの記憶なのか、醜悪な笑いを浮かべる第二王子の顔が浮かんでしまい私はめいいっぱい頭を振った。
「それを防ぐには……とっととカルロとお前が結婚してしまえばいい話なんだがな。
カルロは誰か適当に見繕うとしても、レティは流石に年齢が。
婚約はできるがまだ成人していないから結婚はできん。
仮に誰かと婚約していたとしても、王族が名乗りをあげてくれば、婚約解消して王族に嫁ぐしかない」
「絶対それだけは嫌だっ!!」
ぷるぷると頭をふる私にセクターさんは頷いて
「そういう事だ。
フリーズドライにせよ砂糖にせよ、売るにしてもお前が成人して婿を貰うまで待つのがベストだ。
大体今までだって貧乏なりにちゃんとこの領地はやってこれたんだ。
無理して稼ぎに走る必要もないだろう?
塩もなんとかなったし、嫌がらせをしてくる予定の貴族もいまはいない。
まぁちゃんと稼げるように基盤作りは今からしていくつもりだがな。
第一王子の件ももう少し考えてから行動しよう。
もしかしたら、歴史が変わっているから助かる可能性もあるしな」
そう言ってわしゃわしゃ頭を撫でてくれるセクターさん。
なんだかんだでやっぱり皆私を第一に考えてくれてるのがわかって嬉しくなる。
「うん。ありがとうセクターさん」
私が言えばセクターさんが優しく微笑む。
記憶が混濁したり、大人になったり子供になったり自分でも戸惑う事ばかりだけれど。
今の私は幸せなんだと心から思う。
これからも、どうかこの幸せな時間が続きますようにと。











