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第29話 ラップ

「またお料理ですか?」


 厨房で、見習いコックさんと一緒にフリーズドライにする物をいろいろ試していればミレイユに突っ込まれる。

 あれから季節はそこそこ巡り、もう冬になった。

 今年の秋は精霊達が手伝わせろー!仕事よこせーと大挙しておしよせてきたので、保存食を作ってもらったので大分楽だった。

 干物とか作り放題だったのだ。

 ついでにセクターさんに取り寄せてもらった調味料もこっそり栽培してたりする。

 胡椒とかミントとか。

 苗からじゃなくても現物さえあれば精霊さんたちにかかればチョロイもので、あっという間に増産してしまう。

 精霊さんマジチート。マジ天使。

 おかげで研究にこちらの世界では高価な調味料も使いたい放題だ。

 まぁ流石に領地の人には出せないので領地の人に配るのは干物だったり燻製だったりだけれど。

 フリーズドライ製法や精霊さんの事は秘密中の秘密らしいから領地の人にもまだ教える事はできない。

 もし他所に噂が流れたら王都から問い合わせが殺到してしまう。

 でもいつかフリーズドライでつくったパスタとかリゾットを領地の人にも配れるようになりたいな。

 そのためにも味の研究はしておきたい。


「うんうん。もちろん!

 どうやったら美味しくて種類をいっぱいつくれるか考えないと」


 この領地は冬の間はやる事なく暇だからね。

 まぁとにかく積雪がすごい。

 おうちに篭ってる事が多いのだから、せめて食事位の楽しみは欲しいよね。

 もし軍隊や冒険者に売るにしても、味にも出来ればこだわりたいな。

 まぁ優先は満腹感と栄養素だけれど。

 精霊の森にもチアシードに似た、水に入れると膨れるというコチという食物があったので精霊王様に苗をもらって緑の精霊さんに量産してもらいそれも混ぜてみた。

 これで少量でもお腹が満腹になるうえに、わりと栄養素満点だ。

 ほとんど無味無臭なのでしっかりした味付けのものに入れるなら違和感なく食べられるだろう。

 あとは味だよね。食事が美味しいとそれだけ楽しみができるもん。


 私は一定の味が毎回できるようにちゃんと分量などもこまめにメモしながら料理を作成していた。

 

 食材をどのくらいの大きさでどう刻めば美味しい食感になるかとか試しててなかなか楽しい。

 

 ちなみに精霊王様に好評だったラーメンなのだが……醤油とか味噌とかが手に入らない。

 大豆が手にはいらないのだ。

 またセクターさんたちが王都に買い付けに行ったときに絶対大豆も買ってきてもらうんだ。



 ラーメン食べたいな。

 記憶ででてきたラーメンは精霊王様が食べちゃうんだもん。ずるいなぁ。


 などと考えながら、出来たサーモンとクリームチーズのペンネをフリーズドライにし、炭でつくった乾燥剤を入れた瓶にポイっと入れる。


 保存期間も何日もつか実際試してみないとね。


 ……それにしても。


 私はフリーズドライ食品を入れたビンをマジマジ見つめた。


「どうかなさいました?」


「うーん。この食品の保存方法どうしようかと思って。

 冒険者や騎士達に売るにしてもこんな瓶じゃ重くて邪魔だよね。

 ビニール袋があればいいのに」


「ビニール袋?」


「こう透明のやつ?

 なんて言えばいいのかなぁ。

 それに包んでおけば長持ちするの」


 私がウンウン考えながら言えば


「まるでマウダースパイダーのラップみたいですね」


 ミレイユがふんふんと頷きながら言う。


「ラップ?」


「はい。捕獲した獲物を透明の布のようなもので巻きます。

 それで窒息死させて冷所で保存するのです」


「ってそれ欲しい!!!」


 私が言えば


「ああ、それならありますよ」


 と、いそいそとミレイユがとりに向かってくれた。

 それにしてもビニールって単語はないのにラップっていう単語はあるんだ。

 こういう変な所で現代知識があったりなかったりはやっぱりこのゲームを作った人の影響なのかな。



 ■□■



 思ってたんと違う。



 第一感想がそれだった。

 ミレイユのもってきてくれたラップは……白濁した透明とは言い難い30cmくらい厚みのある何かだった。

 私の身長がいま110cmくらいだから余裕で膝くらいまである。かなり分厚く感じる。



「お嬢様これであってますか?」


「う、うーん。あってるようなあってないような」


 確かに空気は通しそうにないけれど、こんな分厚いもの持ち歩けない。

 もうブロックと言っていい大きさだし。

 しっかりとした重さがある。


「これって皆何かに使ってるの?」


 私が聞けば


「いえ、時々巣を発見しては獲物をわからない程度もらってくるだけなので。

 このラップ自体が欲しいわけではなく捕獲された獲物の方をもらっています」


「ああ、成程ー。

 にしても分厚すぎるなぁこれ。

 火で溶かして薄く伸ばして固めてみようか。

 これって火には溶けるの?」


「はい。溶けます。

 もしまったく火を通さない素材ならそれなりに使い道はあったのですけれどね」


 ミレイユがため息まじりに言う。

 使い道というと防具とかにでもするのかな?

 それにしても確かに使いどころを迷う素材だなぁ。

 ビニールハウスにするにしても白濁色が強すぎて日光通さないっぽい。


「とりあえず溶かしてみよう!」


 私は早速、鍋にいれて溶かしてみるのだった。

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