第27話 お礼の押し売り
「本当にお嬢様は無欲ですね。
精霊王様達がこぞって加護をお嬢様にと申し出てるのに貰いに行く気がないなんて。
人がいいを通り越して単なる馬鹿です」
ミレイユが相変わらずの毒舌っぷりでため息をついた。
あれから結局カルロさんとはいろいろ本音で話し合い、カルロさんの娘としてやっていくことになった。
正直生活に困らないだけのお金をもらっても、一人で生きていけとか嫌だもの。
何をすればいいかわからない。
それにみんなと離れたくないもの。
精霊王様と契約をしたので私はこの土地から離れなくてよくなったし。
それにやりたい事は山ほどある。
なんたって魔法のある世界なのだ。
魔法があればあんなことやこんな事できるんじゃない!?
というのを実現したい夢だってある。
精霊王様との契約のおかげで氷魔法がさらにいろいろ使えるようになった。
そう!!カルロさんがイフリートっぽいのを凍らせて水分を抜いてカッチコッチにしてた魔法も使えるようになったのだ。
敵の中にある水分を凍らせて、魔法解除とともに氷を除去。
つまり凍ってた体内の水分が全部もってかれてミイラのようになってしまう、秘伝魔法。
これってあれだよね!
フリーズドライ製法と同じじゃない!?
フリーズドライ製法も、一度急速冷凍して、食品の中の氷を真空状態で固体のまま熱して昇華させる。
こうして水分だけ抜いてつくるのがフリーズドライとテレビで見たことがある。
理屈としては同じなのだ。イフリートもからっからのミイラみたいになってたし。
きっとできるはず。
まずはこれを試してできるようにして、うちの領土の冬の食料事情を改善したい。
「だって、試したい事あるし、外行くの面倒だもん」
私がルンルンでシチューを作っていると
「また何か発明をなさるのですか?」
と、ミレイユが鍋を覗き込んでくる。
「うん。フリーズドライ製法でシチューできないかなって。
これが成功すればお湯を注ぐだけでそこそこ美味しいシチューが食べられるよ。
しかも保存状態がよければ1年くらいもつし。
水分抜いてカラカラになるから軽くて持ち運びにも便利だからね。
冬の保存食を沢山つくっておけるかも」
ただ、フリーズドライ確か糖質の多いじゃが芋とかは向いてないって夕方のニュースでやっていた。
フリーズドライ製法の工場特集のTVでみたような気がする。
どんな素材がむいているのかいろいろ研究しないと。
一応今回はじゃが芋も入れてみてどんな食感になるか試すけど。
まぁ日本と違って味より満腹になれて栄養をとれるかを優先で。
満腹になれないと意味ないし。
「あの。お嬢様。
そのフリーズドライとやらはあの腹黒商人にもちゃんと報告してます?」
「うん?
そういえばしてないかも」
「してないかもじゃありません!!!
そんなもの作れば、軍部や冒険者から注文殺到ですよ!?
内密に進めないといけないに決まってるじゃないですか!?
あれですか、ボケなんですか天然を装ったボケなんですか!?」
「ああああ!?そうだった!!」
「また勝手に作ってからだと怒られますから、ちゃんと呼んできます」
やれやれとため息をついてミレイユが出ていこうとするので
「うん!ありがとう!流石ミレイユだね」
と、私が言えば、一瞬顔を赤くして……何故か大きくため息をつかれる。
ミレイユはツンデレキャラだと思う。
■□■
「……これはまた、お前恐ろしいもの作ったな」
シチューを精霊王様と誓約して覚えた魔法でフリーズドライにしてみせ、お湯をかけて戻してみればセクターさんが物凄いため息をつきながら呻いた。
「これもまだ誰にも言うな。
こんな事出来るとしれたら、まじでお前、王族の嫁にされるかもしれないぞ」
「え?だってもう私この領土から出れないよ?精霊王様と誓約しちゃったし」
「お前が婿を取らされるに決まってるだろう。
下手すりゃカルロの方にも縁談がくるかもしれない」
と、セクターさんが眉間を押さえた。
「え!?パパがっ!?」
「当たり前だろう!?この魔法が使えるのは氷魔法が使え尚且つ魔力の高い血筋だけだ。
我が国では氷魔法が使えるのは氷の精霊王様を祀るセンテンシア領のみ。
こんな軽量で保存が効いてお湯を注いだだけで出来る食料とか、軍や冒険者が放っておくわけがない。
お前を嫁にもらってこの領地に子供共々住まわせてその子を氷魔法属性にしたいと願う貴族だってでてくるだろう」
「言わないっ!!絶対言わない!!」
私はブンブンと首を縦にふる。
カルロさんがお婿に行くとか絶対嫌だ。
セクターさんは大きくため息をついて
「とりあえずフリーズドライ作りも、もう少し時間を置いてからだ」
と言った途端。
『なら精霊が手伝った事にすれば?』
と、突然窓の方から声が聞こえる
「え!?」
私たちが視線を向ければそこにはわらわらと小さい小人の精霊達が窓の外からこちらを覗いている。
「はぁ!?」
「ちょっ!??」
固まるカルロさんとミレイユ。
あーそういえば、ゲームでも精霊さんが手伝ってくれていた気がする。
「手伝ってくれるの?」
私が聞けば
『そうだよ。精霊王様を助けてくれた人だもの』
『私たちが呑み込まれたの助けてくれたでしょう?』
『うんうん。私たちは義理堅いの。受けた恩義は必ずかえす。
恩を売りつけられたまま、放置される方が嫌なの。
ちゃんとお返しはさせて』
『だよだよ!他の地域の精霊王様も、まだ何かあの子はお願いしてこない?
ってこっちに何度も来るから大変なんだ。
相手をする身にもなってよ!
はやく加護でもなんでも貰ってあげなきゃ可哀相』
と、口々に精霊達が手伝わせろの大合唱をはじめる。
はやくお礼をもらえと怒られる。
まさかお礼の押し売りをされるとは思わなかった。
「え、えっと……どうしようセクターさん」
私が引きつった笑顔で振り向けば
「精霊なんて俺の管轄外だ。ラディウスを呼べ」
と、頭をかかえるのだった。











