第24話 荒神との戦い
『荒神は未熟とはいえ名の通り神だ!!攻撃は一切効かぬ!!
しかも奴め、我の力を吸い取り無効化している』
精霊王様が作った氷の道を併走しながら叫んだ。
え?
いやそれ詰んでないかな!?
カルロさんにしがみつきながら私が心の中で突っ込む。
パパが魔法で氷を橋のように出しつつ、私たちはそれをスケートのように滑っている。
荒神もさすがに空まで飛べないらしい。
てか氷魔法凄いっ!?何故これで不遇魔法なのか意味不明なんですけど!?
感動する私をよそに荒神は支柱となる氷を壊しながら追いかけてくるので逃げないとやばい。
時々気がむいたようによくアニメや漫画ででてくるイフリートっぽいトカゲの格好をした魔物がでてくるが、カルロさんが一瞬でカチンコチンにしたあと、氷がはじけ、干からびたイフリートが落ちていく。
たぶんだけど、氷魔法で凍らせたあと、氷結を解くと同時に凍らせたその水分だけ消しさってミイラ状態にする魔法なんじゃないかと思う。
ほらよくアニメとかで見るし。
カルロさんマジ強い。
セクターさんが時々、誓約さえなければお前は名誉騎士になれただろうにな、と言っていた意味がわかった。
『誓約者よ。
召喚の泉まで行けるか!?』
問う精霊王様にカルロさんが頷いた。
「一体何をっ!?」
詠唱中で答えられないカルロさんにかわりラディウス様が聞けば
『あれには攻撃は一切きかぬ!!
泉の力をかりて強制的に異次元へと転移させる!!
それしか手はない!!!』
「わかりました!セクター、レティを頼む」
そう言ってカルロさんが私をセクターさんにぽいっと投げた。
ええええ。
宙に浮いた私をこともなげに受け取るセクターさん。
怖い怖い。マジ怖い。投げるかな普通!?
荒神は、精霊の森の木々を枯らしながら私たちの後をついてくる。
コースを森の中にある召喚の泉方面へと変えるが、その時それはおきた。
ぐわっ!!!
荒神が口を開けた途端。
精霊王様だけ身体が浮いたのだ。
「精霊王様っ!!!!」
『ぐっ!!』
「精霊王様っ!!!」
カルロさんが精霊王様の足をつかんだその瞬間。
ぐがががががががががが。
物凄い轟音とともに、荒神が吸い込みはじめた。
精霊達を。
私達はなんともないのに精霊王様や木々の間にいた精霊の光だけが呑み込まれていくのだ。
もちろん――カルロさんも一緒に。
カルロさんが氷の柱をだしてそれにしがみつき、精霊王様が引き込まれないように必死に支えている。
「カルロさんっ!!!!!!」
私が叫べば轟音で聞こえないがカルロさんの口が動いた気がした。
――ごめん――と。
何で謝っているのだろう。
何もわからなかった私を保護してくれて。
子供じゃないのに子供としてちゃんと育ててくれて。
記憶が戻ってからも私を最優先に考えてくれて。
つらくて、悲しくて、押しつぶされそうな時に私を支えてくれた。
ウジウジとハイテンションを繰り返してすごく面倒な私をいつも心配してくれた。
なのに何で謝るの?
まさか一緒に吸い込まれて死ぬ気なの?
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
考えろ。思い出せ。
主人公はどうやってこの荒神を倒したか。
そして、私は思い出した。
――そうだっ!!!
「ミレイユっ!!!私をパパのところにっ!!!!」
大声で叫べば、ミレイユが
「そんな事できるわけないじゃないですか!??」
と悲鳴をあげる。
言い争ってる時間はない。
はやくしないとカルロさんと精霊王様が飲み込まれちゃう。
だったら――。
私は呪文を唱えた。
「お、おいっ!!何をする気だ!!」
セクターさんの腕をふりはらって私は魔法を展開させた。
カルロさんと同じ方法で氷を足元につくりその勢いで跳躍する。
「レティっ!!!!!!」
カルロさんの横を通りすぎたその瞬間。カルロさんが悲鳴をあげた。
それを無視して私は突っ込んだ。
そう、主人公が荒神を倒した方法。
それは主人公の持っていた祖母の形見のペンダント。
それを荒神に呑み込ませたのである。
異世界の異物を呑み込んだ事により、精神体でしかない荒神は形が保てなくなり消滅した。
そして中に取り込まれていた何人かの精霊王達は呑み込まれて一緒に消えてしまったけれど呑み込まれてまだまもない精霊王様達は助かり、形見のペンダントも無傷だった。
だから日本のものを飲み込ませれば、倒せるはず!
けれど、私は何一つ日本の物などもっていない。
でも、たった一つだけ。
一つだけ日本のものがある。
そう――私が私である証拠。
日本で生まれた私の魂。
一か八かのカケだけど。
でもっカルロさんを助けるためだものっやってみるしかないっ!!!!!
私はそのまま荒神の口に飛び込むのだった。











