第19話 自主規制
『ふむ。味噌ラーメンとやらはうまいな』
ラーメンを食べ終わった精霊王様が呟いた。
「酷いです。普通は私が思い出すために食べるものだと思うのですけれど」
私が言えば精霊王様は虎のままギクリとした顔になり
『うむ。旨そうだったのでつい』
と、すまなそうに頭を下げた。
精霊王様ってモノを食べないはずじゃなかったのだろうか。
これじゃあweb小説のダメ精霊王様とかわりないじゃないか。
『しかし、大分戻せたようだな。身体が大人になっている』
言われて私が慌てて手を見れば、小さい子供の手ではなく、大人の手になっていた。
顔をペチペチしてみるが、鏡がないので顔が見えない。
けれど身体は大人だ。
「凄いっ戻った!」
『いや、まだだ。魂を維持する見てくれが多少戻った程度で精神はまだ幼い。
それにまだ記憶は戻せてないだろう?』
言われて私は冷や汗をかく。確かに日本のパパのはずなのに、ラーメンを作っているのはカルロさんだ。
日本のパパはこんなイケメンじゃなかったと思う。
『かなり同化が進んでいる。また放っておけばすぐに幼女になってしまうだろう。
誓約を結び加護も与えておこう。これで今憶えている記憶は消える事はない。
もう少し分離はできるが、これ以上無理をすれば魂が消耗してしまう。
一週間後にまた来るがいい』
言われて私は頭をさげて
「あ、ありがとうございます」
と、お礼を言った。
よかった加護をもらえた。
これで記憶をなくす事もなくなる!
でもなんでそこまでしてくれるのかな?
心の中で思えば
『誓約を結びにきたのだろう?
記憶を少し覗かせてもらったがお主の知る未来の情報では、本来誘惑が効かぬはずの誓約者に誘惑が効いていた。
他の精霊の土地ならまだしも、我の土地で誓約者があのような状態にされて、黙っている我ではない』
心を読まれたのか言ってくる。
誓約者って、カルロさんのことだ。
そういえばラディウス様も同じような事を言っていた気がする。
本来なら加護のあるパパが誘惑系の魔法も毒も効くはずがないって。
『よいか。一度与えた加護は決して外すことはできない。
加護がなくなるのは、我が滅したときのみだ』
「え?それってつまり……」
『そうだ。もしお主の覚えている未来が本当ならば――恐らく我は滅んでいる』
「えええっ!?で、でもどうして?」
『わからぬ。魔族と天使がこの地上から去った今。
我ら精霊に害を与えられる者は精霊しかいない。
だが精霊同士で争う事などないのだが……
なのに我は滅んでいる。
我もお主が記憶を取り戻してもらわねば困る。
よいか。また一週間後ここにくるがいい』
そう言って精霊王様が光りだす
「あ、ちょ、ちょっと待ってください!」
『まだ何かあるのか?』
光ったまま精霊王様が聞いてくる。
「あのっ!畑にできる範囲を増やしていいかお願いがっ!」
『ああ、森に手出しは許さぬが平原なら好きにするがいい』
精霊王様の言葉に私は固まる。
随分簡単に許可がもらえるんだね。
こうーー禁止してたくらいだから何か理由があるのかと思ったのに。
『なんだ?』
「あ、いえ、ありがとうございます」
『言っておくが平原の農耕まで我が禁じたことはない。
人間に頼まれて決めたルールだ』
「え?そうなんですか?」
嫌に他の領地より縛りが酷いと思ったら人間が決めてたの?
『100年前に誓約に来た人間が頼んできたのだ。
王とやらに目を付けられないように自給自足しかできない程度の領地を貸してほしいと。
人間が勝手に指定してきたものであり、我が決めたわけではない。
だからエルフの捨てた遺跡とその周辺の土地を与えてやった』
ああ、なるほど。
自給自足のレベルしかできない領土なら追い出された王族が反旗を翻す事もできないものね。
だから狭い領土だけを借りたのか。
ここの領主一族は王族と悪さを企まないように、中立の立場にあった貴族が領主になったらしいし。
中間管理職らしい心配りをしたのかも。
などと私が考えていれば
『森への手出しは世界の均衡に影響するゆえ、手出しは許さぬがそれ以外は好きにしろ。
人間もまた自然の一部だ』
そう言って、今度こそ精霊王様は姿を消すのだった











