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第15話 大金持ちへの道は険しい

「おかえりレティ。外は楽しかったかい?」


 屋敷に帰れば笑顔で出迎えてくれるパパと、


「旦那様。お嬢様に構いたい気持ちはわかりますが仕事がまだ残ってます!

 イチャイチャするのは仕事が終わってからにしてください!」


 と、強引にパパをずるずると連れていくミレイユ。

 本当は今日の外出にもついて来たがっていたのだけれど、他領地に交渉に行っていたため仕事が山のようにたまっていると外出は却下されていた。

 パパとも行きたかったのに。


「そんなことはどうでもいい!レティ、砂糖の作り方だ!

 調理場を借りるぞ!」


 と、甜菜と私を抱えて言うセクターさん。


「砂糖?ロジャール王国が売り出しているあの?」


 パパがミレイユに首根っこをつかまれた状態で聞いてくる。


「そうだ。レティが作り方を知っているらしい」


「でもあれはサトウキビがないとダメだったのでは?」


 ミレイユの問いに


「うーん。正確にはサトウキビの砂糖とは違うけど、甜菜糖っていう砂糖が作れたはずだよ」


 と、私。

 私からしたら何故甘汁まで作っていたのに砂糖まで行きつかなかったのかそっちの方が謎だなぁ。

 甘汁だってアクを取りながら煮詰めたはずだから、それから更に煮詰めれば砂糖まで行けたはずなのに。

 燃料が高価だからそこまでする人がいなかったのかな?

 それとも主人公が甜菜から砂糖を作った!とかいうイベントのためにサトウキビからしか作られなかったのかも?

 私も全ルートクリアしたわけじゃないので、もしかしたらそういうイベントがあったのかもしれない。


「とにかく作るぞ!」


 セクターさんが私を担いで言えば


「おー!」


 と私も手を上げて調理場まで急ぐのだった。


 作り方は簡単だ。手間がものすごくかかるだけで。


 まず甜菜を細かくさいころ状にして、温かいお湯に入れて1時間くらい放置する。

 そのあと甜菜は取り除いてアクを取り除いて煮詰めていく。

 確かに燃料が高いうちの領地でこんなのを試す人はいないのかもしれないね?


 あとは水飴みたいになったらかき混ぜて弱火でまたかき混ぜる。

 白っぽくなったら火から下ろしてまたマゼマゼ。


 最後は綺麗な布に落としてぎゅっと固めて出来上がり!


 よくおばーちゃんの家で作った気がする。

 おばーちゃんは趣味でいろんな野菜を作ってた。

 おばーちゃんの顔は全く思い出せないけれど。


「砂糖出来ましたね」


「ああ、出来たね」


「これは凄い!流石レティだ!」


 そう言ってパパがきゃっきゃと身体を持ち上げてくれる。

 日本で普通に誰でも出来る知識で私がすごいわけじゃないのだけれど。

 それでも褒められるのはちょっと嬉しい。


「これでうちの領地もお金持ちになれる?」


 私が嬉しくてつい聞けば、その場の大人達が顔を見合わせる。


 ……あれ?砂糖って安いのかな?


「いや、砂糖は少なくとも3年……いや、それ以上かかるな。すぐには売りに出せない」


 と、セクターさん。


「甜菜作らなきゃだから?」


「そうだな。それもあるが、たぶん砂糖が作れると知られれば、王都から人が大量にこちらに送り込まれてくる。

 国家機密としてな。

 それくらい砂糖は現時点では貴重品なんだ。

 砂糖が作れる国は、その製法も原料も厳重に管理している」

 

 セクターさんが言えば


「人が来るだけならまだしも、下手をすれば自給している作物を作るのをやめて畑をすべて甜菜にしろと言われかねません」


 今度はミレイユがため息を吐きながら言う。


「そうなってしまっては領地も様変わりするだろうね。

 大量に王都から人が来ても、うちは受け入れるだけの土地はない。

 領地外に開拓出来そうな土地もあるけれど、精霊王様の許可が必要だから手出し出来ない。

 元からいた住人がわずかばかりの金を与えられて、引越しを強要されるだろう。

 この国では気候的に甘味の強い甜菜をつくれるのはうちの領地くらいだから」


「えええええ!!それは嫌っ!!なら作らないっ!!」


「その方がいいな。砂糖なんて作れると知れたら、レティにお見合い殺到だぞ。

 下手をすれば王族。しかも第二王子から妃にと要請があるかもしれない。

 金は稼げたのはいいが、また第二王子のお妃候補になったりしたら本末転倒だろう」


「え!?まだ6歳だよ!?」


 私が抗議の声をあげれば


「お嬢様はお転婆で手が付けられないうえに、貧乏領地の娘だから話がないだけで、一般の御令嬢ならすでに婚約者がいるのが普通です」


 と、ミレイユが酷い事をさらりと言う。

 ううう、酷い。どうせお転婆だもん。

 てか6歳で婚約者普通ってこの世界結婚はやすぎない?


「まぁ、故意にその噂を広めたのもあるけどな」


 セクターさんが酷い事を言う。


「ううう、酷いっ!」


 私がぷぅっと頬をふくらませれば


「死んだ事にして平民になる予定だったからな。

 婚約はまずいだろう」


 セクターさんがぽりぽり頭をかいた。


 そ、そうかもしれないけど。


 なんだか現実は思っていたより大変で。

 いい商品を見つけてもすぐ売りに出せるわけでもないみたい。

 砂糖を売って大金持ちウハウハ作戦はあっけなく夢で終わる。

 私がしょんぼりしていると


「で、でもレティ!食事に砂糖使いたい放題になるよ?

 やっぱりレティは凄いよ!!」


 そう言ってパパが持ち上げて慰めてくれる。


 うん。

 そうだよ。

 儲ける気になればパパ達は儲けられるはず。

 でも私を優先してくれているから、砂糖作りに消極的なんだと思う。

 他所から人がいっぱいくれば転生者だとバレる確率も上がるし。

 それだけ大事にされてるって感謝しなきゃ。

 私は無理矢理納得して自分を慰めるのだった。

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