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第14話 よくある調味料チート

「レティお嬢様!今日はこれ持っていくかい?」


「お嬢様のおかげで塩の出費がなくなったよありがとう!」


 セクターさんと城下街を歩いていれば、道行く人々に声をかけられる。

 塩の魔法を作ったのを内緒にしておくようにグレンお兄ちゃんに頼んだはずなのに、発案者は私だとすっかり広まってしまっていた。

 作ったのは本当にお兄ちゃんなのに。

 貧乏領地では外貨を稼ぐのは難しく、外貨が必要な塩を買う必要がなくなったのは大きいらしい。

 みんなから、お礼を言われてちょっと恥ずかしい。

 グレンお兄ちゃんが魔法の使い方をみんなに広めているおかげで、漁にも出られない女性や老人、子供などが塩作りを担当し、小規模ながらセクターさんの商店で売りに出されることになったのだ。

 外貨を稼げるチャンスと皆張り切っているとセクターさんが言っていた。


「すっかりモテモテだな」

 私を肩車しながらニヤニヤとセクターさんが言うので


「むぅ。

 セクターさんの意地悪」


 と私は口を尖らせた。


「にしても、塩の魔法が開発された時期もよかったな。

 もしこれが岩塩のとれる砦がモンスターに制圧される前なら、塩利権が絡んで他の領地から横槍が入ったかもしれない」


「今はそんなに塩不足なの?」


「ああ、他国だが塩が大量に採れる領地があってな。

 安価で手に入るから皆そこで買っていたんだが、そこが大量発生した魔物に占拠されたせいで、皆塩の確保に躍起だ。

 今ならわりといい値で売れる。

 下手をすれば今年だけなら魚を加工するよりも塩を生産した方が儲かるかもしれない」


「じゃあ、塩を一杯作れるようにすれば儲かるのかな?」


 もうちょっと何か工夫すればもっと大量生産できるかもしれないよね。


「いや、それは危ないな。

 恐らく来年か再来年には岩塩の採れる砦も取り戻されると商人達は皆見ている。

 大規模な討伐隊が結成されたからな。

 そこが取り戻されて現場が復旧されれば、うちのような小さな領地では塩利権に絡むのは難しい。

 塩は権利団体が多過ぎる。

 あまり手出ししない方がいいだろう。

 今回だってあくまでも塩不足だから見逃されてるだけだ。

 あまり大規模に生産を始めれば目を付けられ潰される。

 儲けられるのはせいぜい2年〜4年だ」


「難しいんだね」


 私が言えばセクターさんがため息をついて


「ああ、そうだな。

 元々この領地は政権争いに破れた王族が、命ごいをして流されたのが発祥だ。

 あまり力を持たないようにこんな不便な地域に城塞があるわけだしな」


「精霊の森は規則が厳しくてあまり収穫も見込めないしね」


「ああ、そうだな。

 だが悪いことばかりじゃないぞ。

 精霊の森を悪意を持った人間が通り抜けようものなら精霊王様のお怒りを受ける。

 他の領地は野盗だのなんだのに悩まされているがこの領地に限っていえば平和だ。野盗の心配がまったくない。

 野盗の方が祟りが怖くて手出しできないのさ」


「なるほどー」


「にしても、街中を歩きたいとか何かやりたい事でもあるのか?」


 セクターさんが私を肩車したまま言う。


「何か商売になりそうなものがないかなーと思って。

 現地の人には当たり前でも、私の元いた世界だとお宝ってものがあるかもしれない!」


 ぐっと構えて私が言えば


「それはまた心強いな。

 何か儲かりそうなものがあったら教えてくれよ」


 と、セクターさんが笑って言う。


「もぅ。笑い事じゃないよ!

 貧乏なままだとパパが大変な事になっちゃうんだから。

 セクターさんも考えてっ」


 私がセクターさんの頭をわしゃわしゃすれば、おいおいとセクターさんが苦笑いを浮かべる。


「相変わらず親子馬鹿だな。お前らは」


「親子……なのかな?」


 ちょっと自信がなくて私が口ごもれば


「おい、お前そのセリフ、カルロの前で言うんじゃないぞ。

 あいつが聞けば、ショックで2、3日使い物にならなくなる。

 5歳の時の反抗期なんて、お前に嫌いと言われて1週間使い物にならなかったんだからな」


 と、セクターさん。

 5歳の時っていうともう私だよね。

 じゃあちょっとはうぬぼれてもいいのかな。


「それにな。

 こうー本来のレティには悪いと思うが、たいしてしゃべれない1、2歳の幼児より意思疎通できるようになった4歳からのレティとどっちが本物かとか言われてもな。

 俺にとってはレティはお前だよ。

 それを忘れるな」


「……うん。ありがと」


 言って、私がセクターさんにぎゅっと抱きつけば


「あ、レティお嬢様だー」


 と、ロロちゃんが私を指さした。


「あ、ロロちゃんとリンちゃん」


 見ればロロちゃんとリンちゃんが嬉しそうに出店で何かを買っていた。


「何してるの?」


 私が聞けば


「あのねーあのねー。お塩一杯作ってお小遣い貰ったの!

 だから甘汁買ったの!」


 言って木の茶碗にもった白濁の液体を見せてくれる。


「甘汁美味しいよねー」


 嬉しそうなリンちゃん。


「甘汁?」


 私が不思議に思って聞けば


「ああ、テンサイを煮出した汁さ。

 ここじゃ砂糖は手に入らないから代用している。

 蜂蜜や木の樹液も精霊の森からの採取は精霊王様の許可なくできない。だから甘味はもっぱらテンサイの煮汁だ」


 と、セクターさん。

 え、ちょっと待って欲しい。


「え?甜菜あるのに何で砂糖つくらないの?」


 私の言葉にセクターさんが固まった。


「砂糖と言えばサトウキビとかいうやつなんだろ?」


「それもあるけど甜菜からも作れるよね?砂糖」


「え?」


「え?」


 しばし固まる、私とセクターさん。


「またお嬢様何か難しい話してるねー」


「ねー」


 と、可愛く甘汁を飲む二人。


 しばらくして


「ちょっと待てその話詳しく聞かせろっ!!!」


 と、セクターさんの叫び声が響くのだった。

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