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第104話 転魂前 その10 紗良視点

 まったく、心配になってこっそり侵入してみたらこれだもの。

 メリルさんの魔法で貴族の青年に変化した私は心の中でため息をついた。

 注目を浴びるようにわざとらしく声高らかにレティの無罪を訴えたので舞踏会会場の視線は皆私に集まっている。


 レティが心配になってメリルさんに土下座で頼みこんでレティが参加するはずの王宮主催の舞踏会とやらに侵入してみたら、レティが毒殺の容疑をかけられていた。

 なんでもレティがあの倒れている王妃に毒を飲ませたとか。私とセンテンシア領に行く約束をしたレティがそんなことをするわけがない。

 レティが飲み物を渡し、毒を飲んだ王妃が倒れるまでの一部始終見させてもらったが私から見ればとんだ茶番だ。


 鑑定スキルで毒が検出される場所を見れば、レティがやったのでないのは一目瞭然。

 だがこのごたごたに乗じて犯人に現場を偽装されてしまってはその証拠が消えてしまう。

 

 私はちらりと視線をマリエッテに映す。


 100%、犯人はあいつ。実行犯ではないところが憎たらしいがあいつが指示したのだろう。

 とにかくこのままレティが捕まって牢獄に入れられてしまったら助けるのが困難になる。

 レティを恨んでいるマリエッテのことだ、なんやかんや理由をつけてレティをこのまま死刑にしようとするはず。ゲーム中でも殺されてしまったように、マリエッテはそれだけレティに執着している。

 けれど、そんなことさせるわけがない。


 今この場で無実を証明しなければ、この後現場を偽造してレティを犯人に仕立て上げるだろう。

 

 ――だが甘い。私がいる以上、そんなことをさせるわけがない。


 一時期、某推理裁判ゲームにはまった私からすれば、こんな見え透いたトリック、まるっとさくっとお見通しだったりする。

 なんたってこっちには鑑定のスキルがある。しかもプレイヤー特典でこちらの人より高性能な機能つきの【鑑定】が。

 衣服に隠していてもばっちり毒を所持しているのか誰なのかわかるのだ。そうつまり犯人はわかってる。答えがわかっていて勝負に挑むようなもの。もう勝ったも当然なのである。


 あとの問題はどうやって話をもっていくかだけ。

 その手順を間違えてしまえば、言いくるめられてしまう。

 私はレティを守るようかのようにレティの前に立つ。

 


「何を言っているの!? レティシアが飲み物をもっていき王妃様がそれを飲んだ!彼女以外犯人がいるわけがないじゃないですか!」


 マリエッテの取り巻きの令嬢っぽい女性が私に叫ぶ。


「その通りです!私もレティシア様に渡す前に毒がないかきちんと鑑定いたしました!」


 レティにワインを渡したボーイが顔を真っ青にして叫ぶ。まぁボーイからしてみればレティが犯人じゃないとしたら、ワインを渡したボーイが犯人になってしまうのだから必死にもなるだろう。


「確かに鑑定のスキルを使った。毒ははいっていなかった、間違いないですか?」


「はい、彼女に渡す前に鑑定いたしました。毒などはありませんでした。

 毒を入れる事ができたとしたらそのご令嬢だけです!」


 ボーイの言葉にボーイとともにいた鑑定スキルもちの魔術師が答えた。


「見ての通りレティシア嬢しか毒を盛る機会がないではありませんか。彼女は対立する派閥に属していたため、王妃様に恨みがありました。そのためこちら側につくようなふりをして復讐の機会をうかがっていたのです!!」


 気の強そうな赤いドレスを着た令嬢が私にむかって叫んだ。

 第三王妃と一緒にいたことからたぶんこの令嬢は第三王妃派なのだろう。


「では、お聞きします。他に毒が鑑定でスキルが反応する場所は」


 私が鑑定士に聞くと、鑑定士は?という顔をして、会場を見渡した後


「……? 毒を飲まされたご令嬢が倒れた場所ですが?」


 と、首をかしげた。


「他は?」


 さらに突っ込む私。


「は?」


 意味が分からなくて思わず聞き返す鑑定士。

 よし、私の思った通りの展開で助かった。

 私はわざとうーんと困ったポーズをとって、会場を見渡した。

 まさかこんな事件が起こるとは思っていなくてのんびりお菓子を食べていた時見つけた『あの人』がまだこの会場にいるのを確認する。


「そうですね。この鑑定士だけでは立証できません。他に鑑定ができる方は」


 私の言葉に


「私もできる」


 と、私と衛兵たちのやり取りを遠巻きに見つめる貴族の間をすり抜けて一人の眼鏡イケメンが前に進み出てきてくれた。

 クライム・メル・ランス。乙女ゲームのヒーローの一人。

 まるで待ち構えていたかのように、彼が私とレティを遠巻きに見守っている貴族をかき分けて前にでてきてくれたのだ。

  他の人は派閥争いに巻き込まれるが嫌で名乗りでてくれなかったけど、ヒーローの彼なら名乗りでてくれると思っていた。

 眼鏡イケメンで魔道具のスペシャリストで学園の教師。不器用型ヒーロー。

 口数少なくて、常に研究者目線で考えてしまい誤解を与えることが多いが、冷静沈着タイプにみえて割と熱血君で正義感の強い魔術師タイプの攻略対象だ。

 彼の家は王族に連なっていてとても身分が高かったはず。

 ゲーム中でもマリエッテの嫌がらせに、マリエッテの家に臆することなく、ヒロインを守ってくれた。

 ヒロインが別のヒーローを攻略中で好感度が低い状態でも「生徒は放っておけない」とヒロインを助けてくれたことから、同じく学園で彼の生徒のレティを放っておけるわけがないと踏んだのだ。

 身分の低い鑑定士だけだと証言が平気でひっくり返ってしまうため、貴族の彼にでてきてもらったのだ。彼の善意と正義感を利用するのは悪いと思うけれど、レティを助けるために巻き込まれてもらおうと思う。


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