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第102話 転魂前 その8 その他視点(2)

 

「レティシアが第三王妃と接触をしたうえに、休学すると?」


 マリエッテの寝室で部下の報告にマリエッテは眉をひそめた。

 第三王妃につけていた密偵からレティと第三王妃が密会をしたと連絡があったのだ。

 確かに最近レティはマリエッテと距離をおいている事がおおかった。

 前から動きが怪しいと思っていたけれど――


(まさか、私の目論見が知られた? それで逆らう気なの?)


 手懐けて絶望させてむごたらしく殺すはずなのに手の内から逃げるなんて許さない。

 神童とちやほやされて、ゲオルグ王子の心まであの女は奪っていった。


 貧乏領地の娘風情が。

 このマリエッテを超えて行った、それだけでもう罪なのだ。


 飼い殺しにしたはずがどこからか、センテンシア領を借金苦に陥れたのがマリエッテの仕業だと漏れたらしい。


(レティシア、私を裏切るつもりね)


 いいわ。第三王妃派を始末するまでは、神童といわれるレティシアに崇拝されているマリエッテ様という地位を利用するつもりだったけれど、邪魔をするというのなら始末するまで。


「ちょうどいい機会だわ。

 邪魔な王妃を排除し、レティも貶めることができるね」


「といいますと?」


「いい案があるわ。至急準備をしてちょうだい」


 そう言ってマリエッテは笑みを浮かべた。




 ◆◆◆


(……なんとかなるかもしれない)


 第三王妃との対談を終え、レティは一人自室でため息をついた。


 いまだに震えている手を見つめレティはぎゅっと握りしめる。

 怖かったのは敵対していたはずの第三王妃に取り入ったことじゃない。

 マリエッテに逆らう選択をしたことにいまだ恐怖を覚えている自分にレティはいらだちを強める。


(大丈夫、戦える。あの時のようにはならないはずだから……)


 そう何度も何度も言い聞かせた。

 マリエッテに逆らってクミに味方したことで断罪された記憶が蘇り、やはりやめたほうがいいのではないか、今からでも間に合うのではないのかと、逃げ出そうとしてしまう自分を奮い立たせる。


 もし――殺されたとしてももう間違った道は選びたくない。


 以前助けてくれた異世界の少女クミ。

 そして再び手を差し伸べてくれた異世界の女性紗良。


 いまここで逃げてしまったらどちらにも顔向けできない。


 前世では異世界の少女の手を素直にすぐ握り返すことができなかったために、結局は彼女を悲しませてしまったけれど、今度は逃げずにその手を取ろう。差し伸べてくれた紗良の手を。


(必ず、第二王子と婚約を解消し、市民権を得て紗良達と旅に出てみせる。どんな手をつかってでも)


 レティはそう誓うと窓から夜空を見上げるのだった。


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