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第98話 転魂前 その4 紗良視点

 


「なるほど。異世界からね」


 メリルさんがティーカップを私に差し出してそう言った。


「驚かないんですね」


 紅茶を受け取りながら聞く私。

私はあの後、メリルさんの家に案内された。

いかにも山中にある魔女の住んでいそうな小屋で、私はメリルさんにお茶を頂いている。

 メリルさんはとぽとぽとお茶を注ぎながらためいきをついた。


「そりゃセスナの月食の日だからね。

 500年に一度おこる月食でね。この月食の日は異界より召喚されると言われている。

 私はそれを確認しにきたんだ。

 むしろ化け物じゃなかっただけありがたいと思わないとね」


 そう言ってお茶を差し出してくれた。

 このメリルおばあさん、普通の老婆の姿をしているけれど、実はすごい美人な若い(?)エルフ。

 エルフの大魔導士で、この月食の時に召喚される異界人を見張る役目がある。

 この世界に害がある者が召喚されたら倒し、害がない者なら保護する。

 それがメリルさんの役目だ。

 だからヒロインを拾ったわけで。

 ……って本来ヒロインが召喚されるはずのセスナの月食で私がきちゃったってこと?


「あの月食ってもう一回あったりします?」


「人の話聞いていたかい?500年に一度っていっただろう?」


 はい。そうでした、すみませんごめんなさい。

 ……ってことは本来ならセスナの月食でこの世界に来るはずのゲーム本来のヒロインちゃんっていったいどうなったの?

 私が来ちゃったらヒロインちゃんが来れないのでは?

 そもそもヒロインは、メリルおばあさんが町で働けるようにと学校にだしてくれたはず。

 けれど、24歳の私が魔術学校に入れるはずもなく、私じゃゲームははじまらない。


 ってことは一体どうなるんだろう?


 確かこのゲーム、RPGとシュミレーション要素も含んでいて、ヒロインちゃんがこの世界を救う役目があったはず。この国の悪役令嬢が魔族の血とその力を使って国ののっとりを目論んでいた。

 その野望をヒロインちゃんが止めなかったら魔族がこの国をのっとってしまう。

 魔族の奴隷とされる未来がまっている。


 ……この国やばい。早く他国に逃げないと。


 夢なら覚めればそれでいい。

 夢じゃなかった時問題だ。

 私一人じゃどうしようもできない。エルフの魔導士のメリルさんでも黒幕にはかなわなかったはず。  

 理想はメリルさんを連れて、2のゲームの舞台である帝国に避難する。これに限る!

 2のゲームの舞台はたしか超強いヒーローがいたはずだ。


「で、あんたはこれからどうするんだい?」


「できれば他国に行きたいなーなんて」


「他国に?なんでまた?」


「せ、せっかく異世界に来たんだからいろいろ見て回りたいです!」


「……ふむ。なるほどね。

 でも残念ながらあんたにゃ無理だ」


「え!?なんでですか?」


「旅費をどうするんだい?関所を超えるにもそれなりの金がいる。

 関所を超える市民権を得るにもね。あんたの場合裏取引で市民権を買わなきゃだからね、かなり金が必要になるよ」


「関所にお金必要なんですか!?」


「当たり前だろ。市民権を買う必要がある」


「じゃ、じゃぁ世界を巡ろう企画は」


「残念ながら厳しいね。見ての通りわたしゃ自給自足の生活で手一杯だ。

 あんたに貸してやれる金もない」


 困る。それは困る。

 それじゃあここから逃げられない。


「まぁ、そんなにがっかりするんじゃないよ。あんたがこの世界に呼ばれたのは被害者な部分もあるからね。私も協力してやるさ。しばらくここでお金を稼げばいい。私の薬を売ればなんとか稼げるかもしれない。もちろん働からずもの食うべからずだからね。きっちり働いてもらうよ?」


 そう言って微笑むメリルさん。


「はい!よろしくお願いします!!」


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