第0話 プロローグ
「レティシャ・エル・センテンシア。
国家反逆罪および、第二王子暗殺未遂の罪で貴様を処罰する」
舞踏会のその席で。
第二王子ゲオルグ王子が私につげる。
一気にざわめく会場。
――ああ。いつも通りだ――
私は片田舎の領地の娘だった。
それでもそれなりに幸せにやっていた。
けれど父に後妻が来てから……私の人生は一変した。
12歳の時に魔力の高さに目をつけられ無理矢理父と引き離され、第二王子のお妃候補にされてしまう。
そして18歳になると必ず裁かれるのだ。
どうせ反論しても結果はかわらない。
もうすでに52回も繰り返した断罪シーン。
最初の頃は何とかしようと反論をしたけれど、いつも結果は変わらなかった。
私はここでやってもいない罪で裁かれて殺されるのだ。
第二王子の隣には――第二王子に寵愛された女性がいる。
王国一の経済力と軍事力を誇り、我が国で一番権力を持つと言われる領地の娘。
第一妃候補と言われたマリエッテ・シャル・クランベルダ。
彼女は気品に溢れ、どんな人にも優しい。
表面だけは。
私は彼女の本性を知っている。
とても狡猾で、他人を言葉巧みに操っては陰湿ないじめをくりかえす。
そしてそれを見かねたふりをして助けに入り信頼を得ている女性。
けれど、私が彼女の本性を語った所で誰も相手にしてくれない。
「何か申し開きはないのか?」
第二王子が冷たい視線を投げかけてくる。
いつもの事だ。流石に52回も繰り返されれば、飽きてくる。
どうせ死ぬのだ。
「……何もありません。
どうぞ、邪魔者を殺してお二人でお幸せに」
――言った瞬間。
私は兵士達に捕まるのだった。
■□■
そこで、私は目を覚ます。
目をあければフリフリの可愛いレースのついた天蓋つきベッドに、可愛い調度品の揃った部屋。
そう、センテンシア領の私の部屋だ。
「……夢かぁ」
夢は私レティの断罪シーン。
これから待ち受ける未来。
元々この世界、スマホの育成RPG系のゲームだった。
私は主人公に嫌がらせする悪役令嬢の一人。
レティシャ・エル・センテンシア。
第二王子の婚約者で、主人公に数々の無理難題をふっかけるという悪役令嬢だ。
しかし最終的には主人公の健気さに、心うたれ、改心するのだが――それを気に食わないと感じた別の悪役令嬢マリエッテにはめられて死ぬというわけのわからない役どころだ。
当時、悪役令嬢何人もいるか!?と突っ込みながらゲームをプレイしたのを憶えている。
びっしょりになった手を見つめ、私はため息をついた。
6歳の私の手は本当に小さくて、20代だった頃の身体と全然違う。
……なんでこんなことになったのかなぁ。
私は何故かゲームキャラと身体が入れ替わっていた。
普通にスマホゲーをやりつつ寝落ちしたはずなのになぜか起きたらゲームの悪役令嬢になってしまっていたのだ。
後に自分の部屋で見つけた『私宛』のレティからの手紙。
いつも18歳で死んでは生まれ変わるループを繰り返して人生に疲れました。
だからループから脱するために魂入れ替えの禁呪に手をだしました☆
魔力と私のループの記憶と魔術の知識を残していくので、ごめんね!頑張って!
という内容の手紙が置いてあったのだ。
実際はもっと丁寧な謝罪の文とともに書いてあったのだが、内容だけ語ればこうなのである。
つまるところ、自分が死ぬのが嫌だから私の身体とレティの身体の魂を入れ替えたよ!
ごめんねテヘペロ☆
ということなのだろう。
憧れの魔法だよ!!幼少期から魔法の修行して俺tueeeeできるよ!!
日本人の考えたゲームの世界だから食文化も植物も名前もあまりかわらないよ!!
これから知識チートだね!!
やったね!!!
……って、よくないっ!!
まさか、マジでゲームの世界に転生(?)するなんて!
しかもどのルート通ってもイベントで強制的に死ぬ悪役令嬢だよ!
18歳には死ぬ運命がまってるよ!!!
あああああああああああ、どうしよぉぉぉぉぉぉ!!!!
私は心の中で絶叫するのだった。